悪性腫瘍を見逃すな!現代を生きる犬に増加している『癌』の種類や原因は?

犬は7~8歳になる頃から、悪性腫瘍ができる確立が急に高くなる。ガンの種類や原因はさまざまで、どの犬の飼い主も人ごとではない。早期発見のコツや治療法を知っておこう。
 

 

悪性腫瘍とは?

犬のガンとは

体の各組織が新陳代謝をして新しい細胞を交換する中で、新しい組織が異常な増殖をしてできたものを腫瘍という

周囲の正常な組織を侵すことのない良性腫瘍に対し、悪性腫瘍は周囲に侵入する他、血液やリンパ管を通して体内の他の組織やリンパ節に転移することも。体のあちこちで増大することで、犬の命をおびやかす。ガンという言葉は、ほぼ悪性腫瘍と同意として使われている。

ここでは悪性腫瘍=ガンと表記する。

 

現代を生きる犬はガンにかかりやすい宿命

このことにはさまざまな理由があるが、そのひとつは平均寿命の伸び。犬は7~8歳からガンにかかりやすくなる傾向にある。したがって、長生きする犬が増えれば、ガンの犬も増えるというわけだ。

2つ目の理由が、犬種的な体質の偏りができてしまったこと。これはひとつの犬種が流行することによってむやみに繁殖され、体の弱い犬が増えたことが原因だ。実際、ガンになった犬の家系をさかのぼっていくと、同じ先祖にたどりついてしまうことも多い。

そして3つ目の理由が、生活環境の変化だ。これは主に食事、土壌汚染などがあげられる。食事については、市販のフードやオヤツが普及したが、中には発がん性物質の入った、質の悪い製品もある。

また土壌汚染については、犬は散歩の際にはだしで歩いたり、地面のニオイをかいだりすることから、発ガン性物質が、肉球、あるいは鼻や口から侵入する可能性があるのだ。

 

犬がかかりやすいガン

悪性リンパ腫
リンパ節やリンパ器官の中で、白血球の一種であるリンパ球がガン化する。犬のガンの二割程度が このガンである。治療は抗がん剤の投与が一般的。

 
乳腺腫瘍
高齢のメス犬がかかりやすい。犬のガンの50%が乳腺腫瘍といわれている。避妊手術を受けていない犬は、受けた犬の7倍かかりやすいというデータも。

 
皮膚のガン
肛門周りや耳の中、鼻腔、直腸などにでき、急激に大きくなる腺ガン、胸、お腹、足、わきの下の脂肪組織が増殖する脂肪腫、耳たぶや鼻の先端、爪の根元、口の中などにできる扁平上皮ガンなどがある。

 

柴犬のガンは比較的少ないが……

柴犬のガン発病率

柴犬は他の犬種と比べて、ガンになる率が低い。この理由には、大きく分けて2つのことが考えられる。

ひとつは、日本原産の犬なので、この国の風土で生きることに関して、ストレスが少ないということ。例えば、日本人はもともと菜食だったが、外国文化の影響で牛肉を食べるようになってから、大腸ガンが急増した事実があるように、環境に対して受けるストレス(刺激)が多いこともガンの原因になる。なので、もともと祖先が生きてきた環境ではストレスを受けにくく、ガンにもなりにくいといえる。

2つ目は、過度に流行った歴史がないため、繁殖が乱れていないということ。ただし、繁殖家が、特定の病気を出さないように繁殖してきた犬たちも、素人が遺伝病も調べずに繁殖してしまえば、病気にかかってしまう可能性はもちろん増えてくる。

このように、柴犬がガンになりにくい理由はあるものの、決してならないわけではないので注意しよう。

柴犬も現代に生きる犬。当然、長寿になってきているし、汚染された土壌に遭遇する危険性もあり、ガンになる可能性はある。したがって、どんな元気な犬の飼い主も油断せずにガンに関する知識をたくわえておこう。

 

柴犬がかかりやすいガンもある

柴犬がかかりやすいガン

柴犬がかかりやすいガンというのは特に傾向がない(ただし犬の雑種は、メラノーマ=悪性黒腫にかかりやすい)。

が、遺伝によってかかりやすいガンはあるので、犬の親兄妹の病歴がわかればその部分を重点的にボディチェックするとか、獣医師に伝えて診てもらうといいだろう。

また前立腺ガンや睾丸ガン、子宮ガン、乳ガンなど、性別によってかかりやすいガンもある。特に避妊・去勢手術をしていない犬の場合は、こうしたガンにかかるリスクが大きくなるので、犬が手術に耐えられるほどの体力のある若いうちなら手術を行うことで予防するのも一つの方法だ。

 

ガンの原因は様々

ご存じの通り、ガンは発見が遅ければ死に至る病気。だが、早めに発見さえすれば、進行をなるべく遅らせるように治療しながらうまくつきあっていくことや、病状が軽ければ手術などで完治させることも可能だ。

しかし、確実なガンの予防法というのはないのが現状だ。

ガンは外部から何か病原菌のようなものが侵入してできるものではなく、自分の体の中の細胞が変化して増殖する病気である。

たとえば紫外線を過度に浴びた刺激で皮膚ガンになるとか、質の悪い食べ物を食べ続けて胃に刺激が与えられたために胃ガンになるとか、かじっていたものが歯茎を刺激して歯肉腫になるなど、何らかの刺激によって引き起こされるものだが、原因はさまざまあるので、健康に気をつけていてもなる時にはなってしまう。

だから、ガンで愛犬を苦しませないためには、飼い主が早期発見につとめることが重要なポイントとなる。

 

ガンの最初の症状は分かりにくい

ガンの初期症状

「早期発見が第一」とはいうものの、ガンは初期段階では痛みやかゆみなどの症状が出ないないため、飼い主が日頃から気をつけていないと発見するのは難しい

ガンは他の場所に転移したり大きくなってから初めて、各所を圧迫したり、痛みを引き起こす物質が出て来たりする影響から、症状が現れる。が、こうした症状はよほど進行してからでないと目立って来ないのだ。

このため、飼い主は日常的に犬の体や行動の様子をチェックして、変化が見られたら早めに動物病院で診察を受けることが重要だ。この時、ささいな変化だと「とりあえず様子をみておこう」ということにもなりがちだが、油断してはいけない。

特に、体表に現れたおできは、ただのニキビのように見えてもガンの可能性があるので、できればすぐ動物病院で診てもらうことが重要である。たとえ1~2センチのおできでも、すでに転移しているガンであるケースも少なくない。また発見したおでき自体が、すでに転移したものであるという場合も。後で「あの時に診察を受けていれば……」と後悔しないためにも、できるだけ早めの診断を受けるに越したことはないのだ。

すぐに動物病院に行けないなら、必ず1ヶ月以内に、おできが増えたり大きくなっていないかをチェックし、そのような変化が見られたら、早めに診察を受けるようにしよう。

 

愛犬が元気になうちからやるべきこと

お手入れやスキンシップなどをしながら、体をさわる習慣をつけておこう。毎日さわることで、犬の体調の変化に気づきやすくなる。各パーツでチェックしたいのは、以下の通り。


耳掃除やスキンシップの時に、毛をかきわけて中をのぞいてみよう。おできのようなものがあったら、皮膚のガンのおそれもある。早めに動物病院で診てもらおう。


頭を撫でる時など、目の様子もよく診ておこう。いつもと比べて輝きが失われていないか、眼球に何か浮いていないか、がチェックのポイント。変化があれば診察してもらおう。

肛門
ブラッシングの時などに、毛をかきわけて変化がないかをチェック。未去勢のオスなら、うんちが細いとか出にくい、おしっこが長時間出にくいといった症状は前立腺のガンの可能性もある。


鼻血が出ていないかをチェック。鼻血はぶつけたりしても出るが、けがによって起こる出血に比べて、腫瘍によって起こる出血はごく少量であることが多い。外的トラブルがなくても出血しているなら診察を。


歯茎のしこりは歯肉腫の症状かも。いつもと違うニオイはないか、あごのリンパは腫れていないかなどもチェック。口の中は触られるのを嫌がる犬も多いので、普段からオヤツを手であげるなどして慣らしておきたい。

生殖器
オスは睾丸の左右差がないか、睾丸が小さく胸が大きくなっていないか。メスは発情の長さが通常と比べてどうか、陰部がふくらんだままでないかなどを確認。

お腹
しこりや左右差、おできなどの変化を、毛をかきわけながらチェック。お腹は触られるのを嫌がる犬も多いので、オヤツをあげながらマッサージするなどして慣らしておこう。

足 
膝の裏、後ろ足の付け根、わきの下のリンパ腫に腫れがないか確認を。あごの下のリンパに腫れがないか確認を。あごの下も含め、熱もなく、感染症でもないのに2ヶ所以上が脹れていたらガンの可能性が。歩き方の変化もチェック。

 

日常的なボディチェックを習慣化しておく

柴犬のボディチェック

ガンで愛犬に辛い思いをさせないためには、とにかく早期発見につとめること。そのためにできることは、毎日体をチェックし、どんな小さな変化も見逃さないことだ。

柴犬は触られることが苦手な犬が多いが、あらかじめオヤツをあげたりしながら、触られることに慣らしておくといいだろう。ブラッシング中でも皮膚の変化を見つけることができる。柴犬は毛が密なので、かきわけながらチェックしよう。

たとえ小さなおできひとつであっても、発見したら、できればすぐに動物病院で診察してもらうのが理想的。もしそれが無理な場合は1週間後、1ヶ月後と、増えたり大きくなっていないかを確認し、もしそのような変化がみられたらすぐ動物病院へ。なおこの時注意したいのが、小さなおできがあっても、決してつぶしたりしぼったりしないこと。もしそれがガンだったら、いじった刺激で、リンパや血液を通じて転移してしまうこともある。そもそも皮膚のガンは、最初はにきびやおできに似ているものなので、強い力でいじらないこと。

その他、質の悪い食事や運動不足による肥満など、体が余計な刺激を受けることもガンにつながる恐れがあるので、そうした刺激を避けるために生活の質を高くするようにこころがけよう。また家ではチェックしきれない体の変化をキャッチするため、定期的に健康診断を受けさせておこう。

 

ガンの発見・治療までの流れ

1.異変に気付く
2.診察・検査
3.治療計画
4.治療開始

おできやしこりが見つかったら、動物病院では組織を取り出し、場合によっては近くのリンパも採って調べ、腫瘍かどうか、良性か悪性かを確認。不明な場合は病理検査センターに送ることも。さらにMRIやCTをとり、転移の有無や、広がっている範囲を調べることも。結果が出たら、治療法を考える。手術のみ行う場合や、手術+抗がん剤、手術+放射線治療+抗がん剤、抗がん剤のみなど、ガンの種類や進行状況によって異なる。なお、検査でも100%調べきれないこともある。

 

愛犬がガンの告知をされたら?

ガンが発病したら

おできやしこりがみられたら、動物病院や、場合によっては病理検査センターで検査をする。結果ガンの存在が認められたら、治療法の計画を立てていくことになる。

治療法には、手術、放射線治療、抗がん剤などがある。進行具合や病状によって、これらの方法を単独で実施したり、あるいは組み合わせて治療していく。さらに、病状が進んで何も治療ができない場合は、痛み止めなどの対症療法を行うこともある。

診察や治療方法に納得がいかないなら、他の動物病院で診察を受けるのもいいだろう(セカンドオピニオン)。

安心して治療を任せられる獣医師の目安としては、まず、できたおできを丁寧に扱ってくれること。知識のない獣医師だと、手荒にいじってつぶしてしまうこともあるが、先に書いた通りこれは転移の原因にもなる。通常は、おできの形や色をチェックしたり、なるべく触れないように周りの組織から触ったり、他の部位にも発生していないか確認するなどの配慮があるはず。また、治療法についてとことん相談にのってくれることも必須だ。治療内容はもちろん、犬の余命、治療費などについても確認しておこう。

なお、検査もしないですぐに手術を決める獣医師は要注意。もしもいい加減な手術でガンが取り切れなければ、手術しなかった場合よりも病状が深刻化してしまう恐れもある。

このような判断材料を目安に、病院を変える場合、今かかっている獣医師に遠慮しがちだが、そのせいで愛犬の寿命が縮んでは、後悔することに。「いろんな人の意見を聞きたい」という姿勢で獣医師に申し出れば、失礼にはらないし、他の動物病院を紹介してくれる場合もある。

またネットや友人の口コミから、いい医師を探してもいい。「認定医」の肩書きのある獣医師はかなり勉強しており最新治療にも詳しいため、そういう獣医師のいる動物病院は目安になる。もちろん、認定医でなくてもいい獣医師はいるので、納得がいくまで探そう。

 

万が一のことが起きても後悔しない日を送ろう

治療が決まったら、獣医師のアドバイスをもとに日常生活を送りつつ、犬の様子をよく見て、気になることがあれば獣医師に相談しよう。

抗がん剤を使っている犬は、薬が排泄物に出てくる。抗がん剤は体内に入るとガンの原因にもなるので、特に粉薬の場合は、投薬時や掃除の時には、必ず手袋とマスクを着用し、エアコンや扇風機はつけないこと。口を舐めさせることも避けよう。

なお、どう考えてもこの先短命である場合、ガンの治療中は、看病する飼い主も辛い。治療が長引けば、不安な毎日が続き、また治療費もかさんでくる。犬がいつ亡くなるか心配で不眠になると自分が入院してしまい、共倒れになるケースもある。なかなか明るい気分に切り替えるのは難しいが、ひとりで抱え込まず、できるだけ人と会話するようにして、リフレッシュしよう

また、ガンの犬は突然に亡くなることもある。このような場合は、看病できなかったといって自分を責める飼い主も少なくない。万が一のことを想定しつつ、後悔することのないよう、犬と過ごす時間をなるべく多く持とう
 
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Shi‐Ba vol.54『どんな犬も、ガンになる可能性はある 悪性腫瘍を見逃すな!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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