日本犬ならではのしつけ方法。してはいけない叱り方・上手に付き合う心得

飼い主さんがするべきなのにしないこと、するべきではないのにしてしまうこと、良かれと思って誤った対処をした結果、日本犬は悪影響が強く出ることがある。飼い主さんと日本犬がより良い暮らしを送れるように考えたい。

 

犬にしてはいけない・意味がないこと

犬のしつけ

動物行動学が発展する前、さまざまなしつけや習慣が考案された。現在になっても、正しいもの、誤っているもの、日本犬に向いていないものなど玉石混合の状態なので見直そう。

■上下関係などの横暴で一方的な関係
人が上位で犬が下位、といった上下関係などの誤った関係づくりは避けたい。犬は人の言うことを聞いて当然という考え方は、横暴なワンマン社長が牛耳るブラック企業の経営に近い。日本犬は繊細なコミュニケーションが得意な犬種なので、上下を争う関係よりも楽しい双方向のやりとりに時間を使おう。

■無意味な習慣や犬が好まない触れあい
いつもオスワリばかり強要していると、犬は「とにかくオスワリすればいいんだ!」と思い込み、他の行動を引き出しにくくなる。また、急に手を伸ばして頭を撫でられることを好まないので避けたい。

■食事の誤った習慣で攻撃的になることも
犬がゴハンを食べている時、食器に手を入れたり食器を取り上げたりしない。飼い主さんは食べ物を奪う存在と教えているようなもので、犬によってはゴハンを守って攻撃的になる。逆に犬がひとりでゴハンを食べる習慣も、独占欲が強くなるのでNG。ゴハンはごほうびとして飼い主さんの手から与える方法が理想だ。

■誤ったしつけによる無理な姿勢の強要
「服従心が身につく」といわれるホールドスチール(犬を背後から抱える)や、ロールオーバー(犬をひっくり返す)などの姿勢の強要はNG。叱るためにマズルをつかむこともいけない。これらは動物行動学が発達していない昔の誤った考えによるもので、現在は意味がないといわれている。服従心が身につく姿勢はないので、犬と充実した暮らしを送りながら良い関係を築こう。

■叱っているつもりでも犬にとっては暴力
お尻をペンペン叩く体罰的な叱り方は犬に通じない。人は言葉を理解しているから通じることもあるが、犬は教えられた号令などの単語以外はわからないので、体罰、説教、大声で叱る、といった叱り方は暴力でしかない。誤った叱り方を続けると、犬は暴力を振るわれる前に身を守ろうと、先制攻撃をするようになるかもしれない。

 

誤った叱り方は百害あって一利なし

トレーナーやインストラクターによって、しつけ方はさまざま。しかし、中には絶対にやってはいけないことがある。

犬を過剰に触ってうなられたらマズルをつかむ、ひっくり返す、リードでショックを与える、といった指導を受けた結果、犬がひどく噛みつくようになってしまうことがある。中には一度叩いただけで過敏に手を避けるようになったケースも。

誤った指導を受けて悪影響が出た例は、枚挙にいとまがない。飼い主さんがしてはいけないこれらのしつけや習慣は、とりわけ日本犬に強く悪影響が出るという。

 

日本犬と上手に付き合う心得

犬のしつけ

自立心が高い、飽きっぽい、過剰な触れ合いを好まない……。日本犬ならではの特徴に合わせて上手に付き合い、対等な相手としてより良い関係を築くための心得を紹介しよう。

■生活の中で判断力を生かす
犬は人のように抽象的な思考回路はないが、各場面での判断力は人以上のものがある。せっかくの能力を眠らせておくのはもったいない。散歩の時に行き先を相談するなど、生活の中で判断力を生かそう。

■少しだけ考える“間”を与える
飼い主さんの指示に従うと良いことがある、と教えられていても、指示を受けてから実行するまで一拍二拍の間があることが多い。それを「何も考えずにすぐ行動しろ」と要求すると、それまでやっていたことでも聞こえないふりをすることが。待っていれば実行してくれるなら、犬のペースを認めよう。

■無意味な繰り返しはほどほどにしよう
オスワリとフセなどの単純な繰り返しは、ごほうびを与えても数回から10回程度でテンションが落ちてやらなくなる。無意味なことを続けると他の指示への反応も鈍くなる。

■個体に合った距離感(人にも犬にも)
出会った全ての犬に挨拶させようとしたり、誰彼構わず触ってもらおうとしたりすると、かえって犬嫌い・人嫌いになってしまうことがある。日本犬は他者とほどよい距離感を持ちたがる傾向があるので、犬に合った距離を尊重してあげたい。個体差があるので愛犬のタイプを見極めよう。

■犬を自由にさせる場面を明確にする
犬を自由にして「それはダメ」「あれはダメ」と禁止するのは避ける。自由にする時は何をしてもよいと解放し、禁止することがあるなら最初から管理。ルールを明確にすることが、自分で判断したい日本犬に合っている。

 

犬のしつけは号令を教えるだけではない

犬のしつけ

犬のしつけや接し方は指導する専門家によって異なる。しかし、犬の個性に合わせてするべきことをし、してはいけないことを行わなければ、問題に発展することは極めて少ない。

日本犬は成長するにつれて、野生動物の大人のように自立心や判断力を備える。また、無駄なことをしなくなることも特徴。日常生活に特に問題がなくても、若いのに寝てばかりいる、遊びに誘ってもすぐに飽きる、と愛犬に物足りなさを感じている飼い主さんは多い。

注目されたり、かまってもらえたりすることを無条件に喜ぶタイプは少ないので、上手に付き合うためには飼い主さんの工夫が必要になる。

犬のしつけといえば、号令を教えることに目がいきがちだが、犬が持つ能力を活かし、暮らしの中で役立つ習慣を教えることも大切。

犬とどのような関係を築くのか、それは飼い主さんの自由。

ただし、力で押さえつけるのではなく、日本犬が得意な判断力を活かしたり、彼らのペースを尊重したりすることを意識しよう。

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Shi‐Ba vol.85『日本犬ならではのしつけ法、はじめました。飼い主がすべきこと してはいけないこと』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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