ケンカするのに何故近づきたがる? 柴犬だって全ての基本は「挨拶」にアリ!

相手の犬に興味がないかと思いきや、しつこく肛門のにおいを嗅いだり。かと思えば、以前は耳がちぎれんばかりに大歓迎していたご近所さんを見ても完全スルー……。日本犬のあいさつって、なんだか謎だらけ!?
 

 

犬同士のあいさつの基本形

柴犬の挨拶

あいさつは相手が危険でないとわかった後にする。離れた所での安全確認が終わった後、いわゆる「尻のにおいを嗅いだり」するわけだ。成犬のオスメス共に、あいさつの仕方は変わらず、分泌腺近くのにおいを嗅ぐのが基本。

ちなみに、この分泌腺周辺のにおい嗅ぎは、若い犬ほど盛ん。成犬が老犬に対して行う場合は、少しにおいを嗅ぐだけで通り過ぎることも多い。そこには繁殖の目的とか、自分の地位を脅かす存在かどうかの確認作業も含まれている。

避妊去勢の有無で言うと、未去勢、未避妊の犬の方が相手のことをしつこく嗅ぐことが多いようだ

子犬期は、成犬の下に入り込むようにして口を舐めたりする。これは服従に近いあいさつ。

そして成犬になると、性別に関わらず、肛門や睾丸など排泄器官近くのにおいを嗅ぐのが一般的なスタイル

また、顔なじみで、何度も一緒に遊んだことがある犬同士が、再会してすぐに相撲のように組み合って遊ぶことがある。これはすごく親しい関係と言える。

しかし、ドッグランなどに行って、いきなり初対面のテンションの高い犬に同じことをされると、ケンカになることもあるから注意。

犬がお互いの鼻を近づけてくんくんしても問題がない場合もかなり親しい間柄と言える。だが、本来、成犬同士が正面を向き合うのは、かなりストレスがかかる行為でもある。しつこすぎたりすると、噛んだり噛まれたりすることもあるから、犬同士のあいさつ時は、飼い主が目を離さずにいることが大切。
 

日本犬のあいさつ事情

柴犬の挨拶

尻のにおいを嗅ぐ者と嗅がれる者、両者の間に流れるのは他者をも圧倒させるほどの張りつめた空気……。って、これ大げさでもなんでもなく、日本犬同士のあいさつによく見られる光景だ。お尻のにおいを嗅ぎ合ったりする際の日本犬同士のあいさつには張りつめた空気が漂う。相手に近づこう、と決めた時点で、お互いに胸を張り、耳とシッポもピンと立てて、緊張しながら嗅ぎ合っていることが多い。

さらに、においを嗅ぎ合っているから、無事あいさつができているのかと思いきや、ケンカが始まったりするのも謎に満ちた行動なのだが、これは嗅ぐ方がしつこすぎて、嗅がれていた犬がイラッとして怒ったことが考えられる。気質的にしつこいことが嫌いな日本犬にはよくあるケース。

また、嗅ぎ合っている最中に飼い主がリードを引き上げたりしたことが引き金となり、ケンカに発展することもあるそう。飼い主は緊迫した状況を見守りつつ、犬たち自身に幕引きを任せる方が賢明のようだ。火に油を注ぐ行為だけは避けたいものである。

さて、今度は人に対しての日本犬のあいさつの特徴について。初めて会う日本犬には、手をグーにしてにおいを嗅がせろ、とも聞くが、手をひらひらさせて、万が一、噛まれた時に人間側のダメージが大きいのでこのように言われてきた。しかし、中には握りこぶしを怖がる犬もいる。

手のにおいを嗅いでもらう場合は、生卵を持つような柔らかい感じの手の握り方がいい。犬がにおいを嗅いでいる時は、手を動かしたり犬を驚かせないようにくれぐれも注意しよう。
 

日本犬のあいさつ Q&A

■犬 対 人
柴犬の挨拶

Q.手を舐めてくれてたのにいきなり噛まれてしまった

人間側が少し怖がりながら、においを嗅がせていたり、舐めさせたりしている時によく起こる。犬が相手を舐めた後に、理由もなくガブッと噛んでくることはほとんどない。人間が犬に受け入れてもらえたと勘違いして動いたことにより、犬が驚いて噛むというケースがこれに当たる。

 
Q.驚かせないように後ろから近づいたら、うなられた
ゴハンを食べたり、オモチャで遊んだり、何かに夢中になっている犬の背後に近づくのはやめよう。後ろから近づくなら声をかけながら。また、背後に逃げ場がない所や、リードにつながれている場面で無理に近づくと、犬は追いつめられたと思ってストレスを感じる。飼い主がいない所での無理な接触も控えよう。

 
Q.顔見知りなのに完全無視された
日本犬でなくても、スルーされることが多い。前に会った時とは気分が違っていたり、他人と深く交流を持ちたくないタイプの犬の場合は無視されることがある。逆に、日本犬でも会うたびに必ず耳をぺったんこにしてあいさつに来る子もいる。その辺はその子の個性。

 
■犬 対 犬

Q.静かににおいを嗅がれていると思ったら、いきなりガルル
相手のにおいの嗅ぎ方がしつこすぎたり、嗅ぐ時間が長過ぎることが原因。早い話、『嗅ぎ方にそそうがあった』ということだろう。これは日本犬によく見られる行動かもしれない。子犬が全く知らない成犬に、しつこくあいさつをしたり、いきなり正面からあいさつをした時などにも、怒られることがある。

 
Q.寄ってくると怒ってしまう
犬種によってはためらうことなく、初対面でも正面からぐいぐいあいさつしてきたり、いきなり相手のお尻に鼻をズボッと入れてしまうようなキャラクターの犬がいる。愛犬の苦手そうなタイプだな、ガルルッとなりそうだな、と思ったら『すみません、うちの子、犬が苦手なんです』とさりげなく相手の飼い主に伝えるのもひとつの方法。

 
Q.外では仲良くしてたのに、室内ではケンカ勃発
しょっちゅう外で会って仲良く遊んでいるのに、どちらかの家に行ったら、その家の犬がガルッと威嚇したりするのは、縄張り意識から出る行為。その家の子が使っているハウスやオモチャ、いつも座っているお気に入りの場所などに近づきそうな時にはケンカが起きやすいもの。家はその子のテリトリーということを忘れずに。

 
Q.子犬の頃はあいさつが上手だったのに
パピー教室に通っていた頃は上手だったのに……というケースはよくある。大切なのはそれ以降の、成犬としてのマナーやルールを継続して学んでいくこと。パピー期は社会化を、成犬期は大人としてのマナーを学ぶ。シニア犬にとってはしつけは刺激にもなる。毎月が無理なら、半年に1回のコースでレッスンするなどの工夫をしてみては。

 
Q.相手が見えているのに不自然な行動をとる
明らかに相手の犬が視界に入っているのに、地面のにおいを嗅いだり土を掘ってみたり。人間には全く関連性のない行動のように見えるが、じつはこれ『私は緊張していますよ、あなたに対して敵意はありませんよ』というシグナルのひとつでもある。この他にも、低い姿勢で歩くなどの行動が見られることも。

 
Q.じっと見つめている……
相手がじっと固まってこっちを見ている、あるいは、愛犬が体を固くして相手をじっと見ている……。このような時は、緊張感を伴いながら相手を気にしている証拠。たとえうなっていなくても、トラブルを避けるために、犬同士のあいさつをさせるのは控えた方がいいかもしれない。

 

あいさつさせる?させない?

犬のあいさつ

他犬種がなかよくあいさつしている姿を見るとうらやましい気もするけれど、犬の性格や飼い主の考え方によっても、させるかさせないかはまちまち。結論から言えば、犬同士のあいさつは絶対に必要なものではない。

犬の群れで暮らしているのであれば、あいさつが上手にできないと生きていく上で厳しいかもしれない。しかし、現代の人間社会で暮らす分には、犬同士にあいさつをさせるよりは、同じ空間にいてもトラブルが起きない方が重要課題と言える。犬によっては、他の犬や人を嫌いという子もいるので、他者とのあいさつや遊びを無理にさせることはない。

愛犬があいさつ上手であるかどうかは、親犬から受け継いだ気質や、飼い主の元に来るまでの環境(日本犬にしか会ったことがない場合は、他犬種のパワフルなあいさつや行動に免疫がない)、子犬期の社会化、その後にたまたまあいさつした犬に立て続けに怒られた経験があるなど、さまざまな要因が関係してくる。

また、飼い主や犬の性格によっても、あいさつさせたいかどうかは変わってくるだろう。愛犬がちょっと怖がりだったり、神経質だなと思う場合はあいさつをあきらめるのもひとつの選択肢。また、あいさつ上手にさせたいのであれば、子犬期から継続して、あいさつの上手な犬に会わせ、あいさつへのマイナスなイメージを抱かせないことが必要なのだ。いずれにせよ、愛犬の個性と性格を十分考慮してあげたいものだ。

 

あいさつが苦手?得意?

チェックが多いようならあいさつが苦手。無理は禁物だ。

□散歩があまり好きではない
□他の犬に出会うと、うなることが多い
□自宅に来客がほとんどない
□人に触られるのが苦手だ
□前に犬同士のトラブルにあい、それ以来犬が苦手
□ドッグランやカフェに連れて行ったことがあるが、嫌がって入ろうとしなかった
□うちの子は「社交的な方ではない」と飼い主も思う
□他の犬に対してしつこすぎて、嫌われたり怒られることがよくある
□怖がりでよその人や犬に会うと尾が足の間に入ってしまうことがある

噛まれたり、噛ませてしまったりケンカになるなど、マイナス面を繰り返し学習させることは避けよう。何度もあいさつにトライして、失敗している場合は、あきらめる勇気も必要。

また、まだ子犬でこれからあいさつを学習させたい場合は、あいさつ上手な犬と会わせることが大切。あいさつ上手な犬とは、どこに連れて行っても怖がることも激しく興奮することもなく、誰が見ても飼いやすそう、相手をいきなりひっくり返すなどの行為がなく、あいさつや遊び方があまり激しくない、他の犬から「遊ぼう」と言われても「いいよ」と自然に受け入れられる、など。

 

あいさつの見極め方

step1 心構え

あいさつ時には油断は禁物である
前は平気だったのに、今日はガウガウ……。なんてことは起こりうること。例えば、真夏の暑い時期などは犬たちもイライラしがち。その日の気分、体調、周りの状況などにも左右させるので、あいさつをする時は目を離さないこと。

 
step2 相手を見極め、やめる時はやめる

■犬 対 人
犬に触りたがる小さい子供は多いもの。でも、愛犬が子供嫌いの場合は、親御さんに「うちの犬、小さいお子さんが苦手で」と伝えた方がいいだろう。近くに保護者の姿が見当たらない場合は、犬と共にその場を立ち去るのもひとつの解決法。

※危険なケース
小学校低学年以下の幼い子供が、保護者なしで1人で犬の散歩をしている場合、また携帯に集中してメールを打ちながら犬と散歩している場合も、近づかない方が無難。いずれもとっさの場合に相手の飼い主が犬をコントロールすることができないため。

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■犬 対 犬
日本犬同士、あいさつせざるをえない状況になったら、1.リードは絶対に放さず2.リードをゆるめて(長くはしないこと!)3.人間は息を止めずに静かに呼吸し、4.犬に任せよう。犬を無理に引き離そうとリードを引っ張り上げたりすると、それが呼び水となり、ケンカが勃発する可能性もある。不安は当然あるが、引き際も犬に任せた方が大事に至らないことが多いそう。

※危険なケース
ノーリードの犬が近づいてきた時は、絶対にリードを放さないこと。リードを放すと万が一ケンカになった際、危険を制御することができない。飼い主の足の間に犬の頭を入れて、尻のにおいを嗅がせるという方法もあるが、これは自分の犬が噛まないことを前提にしたやり方。相手の犬に噛まれぬよう抱き上げても、飼い主共々大けがをすることも考えられる。この場合もリードをゆるめて犬同士に任せる、相手の飼い主が到着するのを待つのが得策だ。

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Shi‐Ba vol.55『しょっちゅうケンカになるのに、なんでそんなに近づきたがる? 犬だって、すべてのはじまりはアイサツにあり!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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