探索したい!狩りたい!安心したい!柴犬の3大行動欲求を探る!

「行動欲求」という言葉をご存知だろうか?あまり聞きなれない言葉だと思うが、これを利用するとしつけに役立つのである。今回は知っておくと得する「行動欲求」を詳しくみていこう。
 

 

犬の行動欲求

柴犬の行動欲求

行動欲求とは、満たされていなくても直接命に関わるものではないが、精神的にも肉体的にも健康に生きるために満たされておくべき欲求。

大きく分けて「探索したい」(ニオイ嗅ぎや、散歩へ行きたいなどの欲求)、「狩りたい」(追いかけたり、噛む欲求)、「安心したい」(飼い主と触れ合ったり、ひとりになりたいなどの欲求)の3つに分けられる。

これらは、野生時代は生きるために必要だった欲求が残ったもの。満たされていない状況が続くと、吠えが増えたり神経質になるなど、精神的に不安定になる可能性が高いから、うまく満たしてあげなければいけない。

 

行動欲求1.探索したい!

柴犬の行動欲求

■しつけの利用方法 
散歩中においを嗅ぎたそうにしている場合。オスワリを教えたいのであれば、オスワリさせて成功したらにおいを嗅がせてあげる。また、振り返って目があったらにおいを嗅がせると、アイコンタクトの練習にも。

■欲求の満たし方

1.散歩
散歩中は、時間がないのであれば別だが、飼い主が決めた状況では、におい嗅ぎはある程度自由にさせてあげよう。嗅がせすぎるとしつけによくないと言われているが、柴犬にとって情報を得るための大切な行動。ちゃんと欲求を満たしてあげることが大切。

2.宝探し
におい嗅ぎの欲求が強い柴犬には効果的な遊び。好きなオヤツを隠して、探させる。最初は見えるところに置いてあげ、成功したら以下のように、さらに難しい場所に隠す。飼い主も声をかけるなど楽しそうにしてあげると、効果倍増だ。

ゲーム始めよう! と言うなど楽しい雰囲気を作ってからオヤツを手に持ち、マテをかける。

オヤツを見せながら、飼い主が移動して、ベッドの下など見つけやすい場所にオヤツを隠す。

愛犬の近くに戻り、ヨシと号令をかけて探させる。最初は、床などの見える所へ置くだけでも。

見つけられない場合は、指をさして教えてあげよう。成功するようになったら難易度を上げていく。

ポイント
宝探しする時は、オヤツを皿の上にのせて隠そう。普段の生活との区切りをつけないと、床にオヤツがあったら拾い食いするようになることもあるので注意。

 

好奇心の話

人間も同じであるが、好奇心があるから探索する欲求が生まれる。

身の回りのものを何でも怖がっていたら、生物として不利だ。しかし、好奇心が強いと、新しい経験ができ、自分のメリットになる。

好奇心と探索欲求。この両者を満たすことは、他にも効果がある。

散歩に行くことは社会化にも繋がるからだ。できるだけ多く散歩に連れて行ってあげ、色んな経験をさせよう。

だが、怖がっているものの近くに無理矢理連れて行くのは、逆効果になるので注意を。

散歩中、愛犬が見たことのないもので無害なものを怖がっていたら、一緒に確認してあげよう。近くに寄って、愛犬が見えるように触り「大丈夫だよ」と声をかけてあげる。同時にオヤツをあげるとさらに効果的である。

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行動欲求2.狩りがしたい!

柴犬の行動欲求

動くものを追いかけ、噛みたい!狩りをしていたときの生活の名残だ。この欲求を解消している時が犬はかなり楽しそう。

■しつけの利用方法
愛犬がボールやひっぱりのオモチャをくわえて持ってきたとき、遊ぶ前に教えたいコマンドをかける。成功したら遊んであげよう。それがご褒美になる。
 
1.ボール投げ
文字通り投げたボールを追いかける遊び。追いかけたいという欲求を満たせるとともに、交換の練習もできるので一石二鳥。ボールを持って帰ってきた時に、「交換」と声をかけて、オヤツをあげれば放すはずだ。

2.引っ張り&振りまわす
歯をケガさせないために、固すぎず細長いものでやってあげるのがベスト。全身運動にもなる。また、犬は噛んだものを振りまわすのが好きだが、飼い主が主導的に振りまわすとケガをすることがあるので注意。

3.噛むオモチャを与える
一緒に遊ぶことも大切だが、与えるだけで遊んでくれると飼い主も楽。
 
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満たされないと噛まれる場合も?

犬の野生時代の1日の流れを想像すると、まず探索して、獲物を見つける。そのあと、狩りをしていただろう。

今は、狩りをしたい! と思ってはいないと思うが、動くものを追いかけたいという欲求は残されている。

柴犬は、繁殖の段階でコーギーなどの牧羊犬のように、追いかけたいという欲求を特別のばされた犬種ではないが、狩猟犬の血を残しているので、ある程度この欲求は強い。

また、狩りをするためには、捕まえたものを噛むという行動が必要だ。この欲求も強く残されている。引っ張りっこが好きなのはこの影響だ。

追いかけたい、噛みたいという欲求が満たされていないと、困ったことが起こる。

例えば、ものがテーブルから落ちたら走って追いかける、飼い主が愛犬の顔の近くに手をおろした時に噛むなど、反応されたら困るものに敏感になってしまうのだ。

この欲求は若い時の方が一般的には強いが、性別では強さに違いはあまりない

犬の野生の群れには、オスは少なかったと言われている。これは成長すると新しい群れを作るために独り立ちするためなのだが、おかげでメスも狩りにでるはめになっていたからだ。

子育てに、狩りにどの世界も女は大変である。
 
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行動欲求3.安心したい

柴犬の行動欲求

飼い主との触れ合い方や安心できる場所の提供。柴犬は撫でられることを好まない子もいるので工夫が必要。

■しつけの利用方法 
飼い主と触れ合いたい欲求をごほうびに。撫でられることを求めて来たら、コマンドを教える。
 
■欲求の満たし方 
触ってほしいと近寄って来たら撫でる、近くにいたくなさそうなら放っておく。また、ひとりの時間を好むのも柴犬の特長。下のコラムで詳しく説明する。
 
▼愛犬の空間を作る

個体差にもよるが、1人になりたい欲求が強い柴犬

こもれる場所を作ってあげることが大切だ。できれば飼い主が普段過ごしている部屋と別の部屋に用意してあげるといい。

その際、クレートだけでは狭いので、周りをケージで囲うと、より広く使えるので快適。

また、クレートトレーニングをしておくと、災害時、避難所で暮らす時に役に立つ。

トレーニングのコツとしては、自らクレートに入るように誘導してあげること。好きなタオルを入れたり、オヤツを投げ入れて入ることを促そう。

 

柴犬の心情は複雑。それが魅力だが……

もともと犬は、単独では暮らしてなかった動物。仲間と一緒にいる方が落ち着くはずだ。現代において、犬が安心する存在は飼い主

だが、柴犬の場合、べったりしたり撫でられるのが必ずしも好きなわけではない。

個体差にもよるが、少し離れた距離で同じ空間にいるのが落ち着くという犬もいるし、触られるのは苦手だが体の一部だけ飼い主とくっつけておきたいという犬もいる。

どういう触れ合いを愛犬が好んでいるか確認するためには、放っておいてみて、愛犬がどんな行動をとるかを見ればよい。その時、こちらからアクションを起こしたり、無理矢理触るのは止めよう。

また柴犬は、昨日は触ってほしかったが今日はダメということもある。嫌がっていたらやめてあげよう。どんな触れ合い方を求めているか判断することが大事。

 

柴犬の行動欲求Q&A

柴犬の行動欲求

Q.探索、狩り、安心の他に強い欲求はある?

A.守る欲求はかなり強い。柴犬の場合、ゴハンやオモチャを守るケースが多く見られる。これも野生時代に生き抜く上で必要だったもの。同じ群れの個体同士でも、エサを取り合うことはあったのだ。守る犬への対処法はこれ以上悪化させないこと。飼い主が相手だと、守らなくても奪われないということを教えることが必要だ。守っている行動をとっている時は、近くに寄らないで置こう。

 
Q.多頭飼いすると欲求は満たされやすい?

A.仲が良ければ、2匹で遊ぶことで、追いかける欲求や安心したい欲求は満たされやすくなる。しかし、守る欲求は強くなりやすい。また、先住犬にとっては、今まで自分にあわせて遊んだり、触れ合ってくれていた飼い主が、他の犬にも時間をとるようになることで、欲求不満に陥る可能性はある。以前と比べて、先住犬の欲求が満たされていないことがないか考えてみることが大切。
 
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Q.考えたいという欲求もある?

A.ある。コマンドトレーニングも考える作業。遊びのような感覚で、飼い主も楽しそうに声をかけながら教えてあげよう。だが、この時、いきなり難しくて理解できないコマンドを教えるのはさけよう。正解がわからないことに苛立ってしまう場合があるからだ。まずは、簡単にできそうなもの、オスワリなどから初めて、成功したらごほうびを与える。その時、達成感を味わうこともできる。

もし、愛犬が好きなのであれば、知育玩具を与えて遊ばせてあげるのもよい。また、紙コップを2つ用意して、どちかにオヤツを隠し、ありかを指差しで教えてあげる。正解したら紙コップの中のオヤツをあげることで、楽しみながら考えることができる。

 
Q.オスの方が欲求は強い?

A.どの欲求も性差はあまりないが、探索欲求と場所を守る欲求はオスの方が強い印象。特に異性のにおいを嗅ぐ欲求。また、行動欲求ではないが、メスのほうが食べる欲求にムラがあることが多い。もし食欲がない場合、フードを手でおはじきのようにはじいてあげると、反応して食べるかもしれない。追いかけたいという欲求を利用したもの。

 

もうひとつの欲求、生理的欲求

柴犬の行動欲求

もうひとつ大切な犬の欲求には、生理的欲求があげられる。こちらは、生に直結するもの。すなわち満たされることで命を保つことができるものだ。以下の3つは、必ずある程度満足させてあげる必要がある。

1.摂食欲求
ゴハンを食べたり、水を飲んだりといったもの。これを欠いてしまうと、栄養を得ることができないので、痩せ細ってしまう。反対に満たしすぎると太ってしまう。

2.排泄欲求
オシッコをしたり、ウンチをするという欲求。健康な犬の場合は意識せずとも自然な現象として起こる。柴犬の場合、外でしかしない犬も多いので飼い主の気配りも必要。

3.睡眠欲求
字のごとく、眠りたいという欲求。簡単な話にはなるが、まったく眠らない日が何日か続くと、ストレスがかなりたまり、体力が消耗する一方だろう。

 

柴犬だって我慢することがあるが……

ここで紹介したものは、柴犬の平均的な欲求だ。もちろんどの行動欲求が強いかは個体差によることは忘れずに。

また、「ほんとはこれがしたいけど我慢しよう」と思っている場面も結構あるはずだ。

だから、愛犬の欲求を行動だけから察するのではなく、何がしたいかを理解してあげる努力もしよう。

そうやって、本当に満たしたい欲求を理解すれば、その欲求を満たすことをごほうびとしても使えるのである。

 
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Shi‐Ba vol.71『探索したい!狩りたい!安心したい!柴犬の3大欲求を探る!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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