甘噛み?じゃれ噛み?噛む理由を知って愛犬と上手に付き合おう!

アピール、遊び、攻撃。犬の噛みにはいろいろな意味がある。人にとっては困ることもあるけど、理由が分かっていれば上手に付き合えるはず!

 

噛む理由と対処方法を知る

犬が噛む理由

1.甘え噛み
愛情表現のために口を使って軽く噛むことが多い

【おしゃぶり噛み】
人の指や腕をくわえて舐めながら軽く噛む行動。母犬や年上の犬に甘えるしぐさに似ている。乳を吸う行動に由来するのかもしれない。主に子犬や若い成犬によく見られる、親愛の表現。

【毛繕い噛み】
前歯だけを器用に使って、人の髪、体毛、皮膚を軽く噛みます。犬が自分の体のかゆいところを気にして噛む、親犬が子犬の毛繕いをする行動に似ています。さまざまな年代の犬が行う親愛の表現。

【対処法】
プラスの感情なので受け止めてあげたい
対処は特に必要ない。どちらの甘え噛みも犬の愛情表現。うれしい時や甘えたい時に舐める行動と同じだ。犬がプラスの感情を向けてくれている噛みなので、できれば受け止めてあげよう。どうしてもやめさせたい場合は、犬が口を当てた瞬間に立ち上がって離れる。それを繰り返せば、甘え噛みはだんだん減っていく。
2.うっかり噛み
興奮しすぎて周囲が見えない猪突猛進タイプが勢い余ってガブッ。

オモチャで遊んでいる時やオヤツを与えた時に、間違えて人の手を噛んでしまうこと。犬には人に歯を当てる意図はない。噛んでいる自覚がない、もしくは少々の自覚はあっても「まぁいいか」と気にしていない状態。興奮しやすい犬、夢中になると周囲が見えなくなる猪突猛進タイプの犬に見られる噛み。

【対処法】
犬に歯が当たったことを自覚させて注意を促す 頻繁に噛んで困る場合は対処をしよう。噛まれた時に「痛い!」と大げさに声を上げて、歯が当たったことを自覚させる。遊びは中断、オヤツは握って隠して食べさせない。途中でやめるとさらにがさつに噛むようになるので注意。

3.じゃれ噛み
多くの日本犬が行う格闘の遊び、加減をしないで噛む犬もいる

犬が噛む理由

犬同士の格闘の遊びに由来する噛み。活発な子犬や若い成犬は、人を相手に同じようなプロレスごっこをする。ほとんどの日本犬に見られる噛みなので、正常な行動のひとつと考えられる。飼い主が遊びの一環として相手をしていれば、危険な噛みに発展はしないが、皮膚が傷ついたり服が破れたりして困ることがある。それが気にならなければ、多少は我慢して遊びにつき合ってもいいだろう。犬がプラスの感情を向けてくれているわけだから、痛くてもかまわない、服が破れてもいい、という人は対処しなくても大丈夫。日本犬は子犬の頃を除き、他人にいきなりじゃれ噛みをすることはほとんどなく、成犬になれば自然に収まるはず。
「じゃれ噛み」は「甘噛み」に似ているが、加減して軽く噛むとは限らず、興奮すると唸りながら血が出るほど強く噛む犬もいる。また、要求に応えてかまってくれたりオヤツをくれたりする、特定の家族を狙うこともよくある。要求には応えず欲求を満たしてしまうかもしれないが、「じゃれ噛み」の場合は表情も全身もリラックスしている。気を許した人に対して行う行動なので、強く噛む場合でも犬に敵愾心はない。明らかに攻撃的に見える場合は、別の理由が考えられる。

【対処法】
犬が「遊ぼう!」と誘っている噛みなので、怒ってはいけない。「噛む遊びは困るから別の遊び方にしたい」という人の提案を、犬が理解できるよう教えることが大切。噛んだら相手をしない、噛むことをやめたら(もしくは噛まなければ)遊ぶ、この2つは無視を徹底して教える。
意図的に噛んだ瞬間に犬を無視する。直立不動よりも別室に立ち去った方が確実。立ち去る(無視の)瞬間に「あれ? なんで遊んでくれないの?」と思わせて、「噛んだら相手をしない」と伝える。立ち去る(無視の)時間は数秒から数十秒でOK。それ以上の時間は、ひとりぼっちになったきっかけや理由を覚えていない。数秒から数十秒で戻ると、またすぐに噛んでくると思うが、噛んだ瞬間にまた立ち去る。行ったり来たりを数回繰り返せば変わり始めるはず。

4.要求噛み
叶えて欲しい要求があるときに歯を当てる

犬が噛む理由

人の気を惹きたい、食べ物や散歩などの要求を伝えたい、要求が叶えられなくてイライラする、などの理由で出る。噛まれた後に「仕方がないなぁ」と要求を叶えると、さらに噛むようになる。「要求噛み」をよく行う犬は、飼い主が自覚していなくても欲求に応えているケースが目立つ。例えば、噛まれた時に叱ったり視線を向けたりすると、犬は気を惹けた」と思う。また、欲求を応えてかまってくれたりオヤツをくれたりする特定の家族を狙うケースもある。

【対処法】
「要求噛み」は無視して絶対に反応しないことが鉄則。叱ったり視線を向けたりすることが要求に応えることになるからだ。要求は無視で対処する必要があるが、「遊びたい」「かまってほしい」といった欲求は満足させてあげたいもの。犬が落ち着いて過ごしている時に、飼い主さんの方から遊びなどに誘って、犬の欲求を満たしてあげよう。

5.うざがり噛み
足拭きや抱っこなど不快なことに軽く抵抗してガジガジと噛む

犬が不快なことに軽く抵抗している時の噛み。力を込めた一撃ではなく、ガジガジとかじるような犬が多い。散歩の後に足を拭く時や、抱っこに飽きた時などに見られます。人がくすぐられた時に手を払いのける程度の行動なので、深刻な対立関係ではありませんが、誤った対応は「攻撃としての噛み」に変わる場合があるので要注意。

【対処法】
かじられても全く意に介さないように心がけよう。足拭きや抱っこなど、飼い主が行っていたことを淡々と続ける。そして、これらの不快なことを犬が受け入れられるように、ごほうびを与えながら練習をしていく

6.攻撃としての噛み
対立関係にある相手に攻撃を行うための行動

犬が噛む理由

[防御の噛み]
1.びっくり噛み。ふいに触られた時や踏まれた時など、びっくりして反射的に噛みつくこと。野生動物であれば危険から身を守るために必要な行動で、野生に近い性質の日本犬にもよく見られる。2.怖いものを排除する噛み。犬が人から危害を加えられた時や危険を感じた時に、身を守るための防御として噛む行動。人は危害を加える意図が全くなくても、犬が脅威だと感じた場合は噛まれる。人はしつけや愛情表現だと思って行っていることでも、犬は負担を感じている可能性がある。人のいじめやセクハラ問題のように、加害者はからかっているつもりでも、被害者は苦痛を感じていることがあるもの。

[対決(闘争)の噛み]
犬が大切なものを守るため、もしくは、相手より有利な立場になる(不利な立場にならない)ために行う攻撃。犬が発見したものを取り上げる、犬のお気に入りのソファに座る、犬の食器を片づける、などを人が実行しようとした時に起きる。利害関係の対立による噛み。犬の生活環境や接し方を専門家に相談して見直そう。

【対処法】
[防御の噛み]
1.反射的な噛みを防ぐために、日頃から犬をびっくりさせるようなことは避ける。もし噛まれた場合は、淡々した態度を心がけよう。犬には傷つける意図はないので、間違いとして受け止めてあげる。特に敏感な犬は、普段からごほうびを与えながら接触の練習を。2.犬が危険だと感じた行動を淡々とフェードアウトさせる。大げさな動きや叱るような態度は、「窮鼠猫を噛む」の状態に犬を追いつめてしまう。

[対決(闘争)の噛み]
日常生活で利害関係の対立が起きていることが原因なので、犬の生活環境や家族の接し方の見直しが必要。しつけを上下関係で考えない、動物行動学と学習理論にもとづいた指導を行う専門家に相談をおすすめする。

 

犬の困った噛みには動機に合わせて対処する

犬が噛む理由

愛犬に噛まれた時に、思わず叱ってしまうこともあるのでは? 「かわいがっているのにどうして……」という、悲しい気持ちの裏返しの怒り。この愛のムチを犬は残念なことに犬は理解できない。飼い主は犬を擬人化しがちですが、人のように扱って叱るのではなく、犬がわかりやすい方法で教えてあげたいもの。噛んだ時に楽しいことが終わる、噛まない時に楽しいことが起きる、という教え方が基本の対処になる。しかし、犬を反省させるために、昔からいろいろな方法が考案されている。例えば、説教をしたり、マズルをつかんだり、ひっくり返してみたり…。

犬への説教は人の気持ちが少し晴れるだけだろう。犬は文脈を理解できないので、『ダメ』などの短い禁止の言葉を教えた方が有効だ。

では、マズルをつかんで叱る方法なら理解はどうだろうか。母犬が子犬のマズルを噛んで叱ることが由来なので、犬にも伝わる気がするが、母犬がマズルを噛む行動は、子犬がいけないことをした瞬間に行うからこそ効果的なのだ。人が同じスピードでマズルをつかむことは至難の技。むしろ関係を悪化させる恐れがあるので避けよう。

それなら、ひっくり返してお腹を見せる「反省ポーズ」をとらせる方法。服従や降参の姿勢といわれるから、効果は抜群だろうか。本当に効果が出ているなら、数回ひっくり返せば噛まなくなるはず。繰り返し噛むなら、いけないことが犬に伝わっていない状態。その場しのぎの『反省したふりのポーズ』。効果がない拘束は体罰になりかねないので、関係が悪くなる前にこれもやめよう。

それでは、すべての噛みに効く便利な方法はあるのだろうか?犬の困った噛みを人の手の動きに例えると、気安く叩く、突き飛ばす、引っ張る、殴るなどの迷惑行為になる。これらをひとつの方法でやめさせられないように、犬の噛みも動機に合わせた対処が必要だ。

まずは愛犬の噛みの種類を見極めて、それに合った対処をしていこう。噛みの理由が複雑なケースは、飼い主が自力で解決できないことが多い。動物行動学の専門家に相談することが良い。

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監修:山下國廣先生
 
Shi‐Ba vol.72 『犬が噛む理由を知って、上手に噛みと付き合おう!甘噛み!じゃれ噛み!本気噛み!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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