おとボケまる子日記:その2「視覚や足腰も衰えてきたので生活環境や習慣の見直しをしてみませんか?」

まる子:2021年3月現在13歳のおばあちゃん。体重は8.6kg。7歳の猫兄妹と同居。2020年夏頃から体調、行動、見た目など様々な変化が現れるようになった。

犬の行動変化を観察し近い将来に起きそうなことを想像しよう

シニアになると今まで留守番できた犬が、飼い主の外出時にキューキュー鳴いたり、後追いしてくるという話もよく聞く。認知機能が低下し気持ちを抑制することが難しくなり「寂しい」という本能が出てしまうのだ。

この場合、ひどくなると飼い主を探すために部屋から出ようと爪から出血するまで壁や戸を引っかいたり、外飼いの場合は脱走して迷子になる可能性もある。「飼い主の目が届かない時はしっかりと行動の管理をすることが大切です。犬の身の安全を確保できるケージなどに入れて外出するようにしましょう」

犬の行動の変化をよく観察し、どんなことが起きそうか、飼い主は日頃から近い将来を想像することが大切だ。

ところで、最近は階段の上り下り時に転ぶことが増えたまる子。今は危ないので毎回抱っこしているが、最初は抱っこをする時に噛まれそうになり、結構困った(苦笑)。

「動物病院に行くことも増えますので、抱っこの時にオヤツをあげ、もぐもぐ食べている間に抱っこしてみるなど、犬が納得して嫌がらない方法を考えると良いでしょう」

茂木先生によればシニア犬には、我慢(抑制)することが減り、やりたいことが増えて歩き回る活発なタイプと、活性が落ちて何もしなくなるタイプの2パターンがいるそう。まる子は前者。ずっと放置していたオモチャを振り回し遊ぶことが増えた。

「今は自粛生活で飼い主さんが在宅していることも多いので、犬と関わる時間を増やす良い時期だと言えます。家族の存在、愛情を認識させることで、認知症の進行を予防することができます。また、活動性を維持すれば、筋肉量が落ちることも防げます。元気に動いているのであればオヤツを使ってトレーニングをしたり、オモチャで遊んで、今の状態を維持できると良いですね。ただし足元や周りを見ないで走って物にぶつかることもありますから、危険な場所は通れないようにしたり、危険な物は取り除きましょう」

ジャンプや着地の際に失敗すると、「今までできたのに、今日はできなかった」と犬自身がガクッと自信をなくすことも考えられそう。

「段差をなくすことでケガは防げますが、スロープや階段を無理のない範囲で上らせることは、下半身の強化になりオススメです。下りは前肢への負担が重いので避けましょう」

 

我が家で実際に見直し&改善したこと

▼外回り▼

階段は抱っこで上り下り

昨年の夏に体調を崩して以降、階段でつまずくことが増え、勢いよく駆け上がる際に顔をぶつけることも増えた。今は大事をとって、上り下りの際は抱っこしている。

 

スロープの利用率は5割

ウッドデッキと地面の高低差があるのでスロープを設置。しかし、元気な時はダイレクトジャンプして下りる(涙)。上りはわりと使っている。使用率は5割程度か。

 

足に優しい庭へ整備中

まる子と暮らすべく購入した築40年の家の庭。前の住人が残していった石が山のようにあり、片付けるのは初老の夫にはかなりの重労働。でも、老犬のために頑張れ!

 

庭での運動を増やしてみた

まる子が歩きたがらないこともあり、最近は散歩の距離が減った。でも庭に出すと喜んで走り回るので、こまめに庭に出して遊ぶなど足腰が弱らないようにしている。

 

▼室内▼

コタツは板を外して使用

室内で猫を追いかけ、コタツの板に顔をぶつけることが何回かあったので、思い切って板を撤去。使いづらいが「目をケガしたら嫌だな~」という心配はなくなった。

 

冷えないよう各所に敷物を

冬はエアコンを入れても床が冷えることがあり、何度かお腹がゆるくなったまる子。ベッド以外にも気に入りそうなフカフカなものを置き、より暖かく過ごせるようにした。

 

夜はTVの音を小さくね♥

早寝遅起きになったまる子。夜、夫がTVをいつまでも見たり大きな音を出すと、深いため息をつくので彼女の眠りを妨げぬよう、夜は部屋暗め&音小さめで過ごす。

 

ぶつかってもこれで安心

かなり元気な老犬さん。散歩から帰宅してゴハンを食べるまでに興奮して室内を走り回り、家具に体をぶつけることがあるので、該当場所に段ボールやタオルをあてがった。

 

さて、目的もなく家の中を回遊する、戸を引っかく、段差でつまずく、家具にぶつかる……。全て最近のまる子に見られる症状だ。これは「見当識障害」によるもの。現在の時間帯、場所や周囲の状況、自分が置かれている状況を把握し理解する能力=「見当識」が欠如する障害で、認知機能が低下したことによって起きる。

「回遊する例は多くの飼い主さんから聞きます。自分がどこにいるのか、今はゴハンを食べた後なのかどうか、散歩から帰ってきたばかりなのにまた外へ行こうとする、などです」

見当識障害による認知症の犬の行動はさまざまな場面で見られるので、今後も例を挙げながら触れていく予定。「こういうことが起きる可能性がある」ということを1つでも多く、このコーナーで紹介できれば良いと思う。

最近の飼い主の悩み

台所のドアを引っかく!

用はないのに洗面所へ行きたがり、戸をガリガリと引っかいて傷だらけに。真冬に洗面所で震えながら座って下痢をしたこともあったので、ゴミ箱を置き冬は洗面所への道を封鎖。

ネコタワーの柱にはさまる!

部屋の隅の猫タワー。週1回、タワーの足元に体がはさまって鳴くことが。「どうした?」と近づくと、自力で脱出し「遊ぼう!」と誘ってくる。謎……。

 

こんな様子が見られたら認知症かも


ドアを開けた時蝶つがいの方に寄ってしまう!
散歩に行きたくて部屋から出るなど飼い主がドアを開けた際に、以前はドアが開く方で待っていたのに、なぜか蝶つがいの方で立って待っている場合は、認知症が進んでいる可能性が高い。見当識障害のひとつ。

まとめ
時々元気だからこそ、物にぶつかった時のダメージ、結構大きいです。気をつけて!

監修:茂木千恵先生
東京大学大学院農学生命科学科獣医学博士課程卒。獣医師。専門は獣医行動学。ヤマザキ動物看護大学准教授。教育・研究活動のかたわら、東京都町田市内でペットの問題行動治療やパピークラスの開催も行う。「飼い主が幸せになれば犬も幸せになり、犬が幸せになれば飼い主も幸せになる」という考えをベースとし、飼い主の話をじっくり聞くことも大切にした指導は、多くの人や犬から好評を得ている。

Text&Photos:Mari Kusumoto

Shi-Ba Vol.118『おとボケまる子日記』より抜粋

-柴犬, 連載