愛犬にできるだけストレスなく快適な生活を送ってもらいたい。そのためには自宅のどんなところに気をつけてあげたらいいのか知っておこう。
部屋のココを見直し!
具体的な見直しにはどんなスポットがあるのか。それぞれを紹介していこう。
床はコストや手軽さの面でもクッションフロアが◎
床に関しては、犬の足が滑らないようにしてあげることが重要だ。最近はクッションフロアなどでペット用に滑りにくい加工がされたものがいろいろあったりするので、うまく利用するといいだろう。
じゅうたんを敷くという手段もあるが、柴犬は抜け毛が多いということを考えると、こまめに掃除機をかける必要が出てくる。また、フローリングが滑りにくくなるようにコーティングをする方法もあるが、コスト面や手軽さにおいてはクッションフロアが便利だ。
壁だけに限らず天井にも注目してみよう
温度・湿度調整機能があるものや消臭性、防音性があるものなど、壁材にもさまざまな種類がある。そういった機能をもっている壁材を使えば、生活環境がよくなるという意味では人にも犬にも、どちらにとっても利点があるといえるだろう。
また、天井のクロスを温度・湿度調整機能や消臭性などの機能をもったものを利用するという方法もある。床・壁だとどうしても傷や汚れがつきやすいが、天井はそういった心配が少なく、床・壁に比べて劣化がしにくいと考えられる。
家具は災害時の転倒防止対策は欠かさずに
家具の配置では物の落下や転倒に気をつけてあげたい。万が一、地震が起こった際に犬がいる場所がどんな状況になるかを考え、転倒防止対策は万全に。
また、現在の家具の配置が生活環境の快適性に対して、何らかの支障が起きていないかのチェックを。日当たりを阻害していないか、エアコンの効き具合を悪くしていないか、など。もし何かしら問題がありそうな場合は、配置を見直すことが必要だ。
間取りの変更が難しい時は家具配置で工夫を
これから家を建設予定なら間取りにこだわることはできるが、現状の環境を整えることがほとんど。その場合は家具の配置で犬の居場所の確保をしよう。
さらにクレートトレーニングをして、クレートが愛犬にとって落ち着ける場所になっていれば、夏の夜のエアコン問題も解決。エアコンを消したリビングから寝室へクレートを移動させても、安心して就寝してくれるはずだ。また日向ぼっこや適度な刺激などのために窓辺へ行ける間取りを考えてあげてもよい。
[間取り]理想のサークル環境はこれだ!
子犬を迎えたら、いきなり部屋で自由にさせるのではなく、トイレの場所やクレートで寝ることなど人との生活のルールを覚えるまではサークルを使いたい。理想としては柴犬であれば180×180cmの広さがあるとよい。
中にトイレとクレートを置き、ひとり遊びできる知育玩具などのオモチャを入れてあげよう。サークルの床に敷くマットは、排泄の失敗が想定される子犬の場合、張り合わせタイプだと隙間におしっこが漏れ出す心配もあるため、1枚ものにしておくと安心だ。
犬にとってよい方向になら大きく環境を変えるのはアリ
柴犬には警戒心が強い犬も多い。そのため、生活環境を改善するためとはいえ、大きく環境を変えるのはどうなのだろう、と不安に思う飼い主も少なくないはず。
基本的には犬にとって快適になるような環境変化であれば、そんなに気にする必要はない。思い切ってガラッと変えてもいいのである。
ただ、変化させるものによっては条件がある。例えば、室内トイレの位置を変える場合。
「合図で排泄ができる」、「ペットシーツを敷いただけでも排泄ができる」など、トイレトレーニングがしっかりできているなら何も心配はいらない。ただ、家具の配置など位置関係でトイレの場所を覚えている犬の場合、トイレの場所がガラッと変わってしまうと室内トイレができなくなってしまうことも。その場合は、トイレの位置は毎日少しずつ移動させていく必要がある。
クレートやベッドなど寝床に関しては、移動後に「ここにあるよ」と誘導して犬に教えてあげること。
また、空気清浄機などを新たに導入する際は、モーター音が苦手という犬に配慮して、できるだけ静音性の高いものを選ぶようにしてあげたい。
愛犬の様子を見直し!
愛犬にどんな様子が見られたら生活環境を改善すべきなのか。犬のサインを知っておこう。
触られることを嫌がる
今までは体に触られても嫌がらなかったのに、ストレスから「嫌だ!」と抵抗するように。
音に対して敏感に反応してしまう
これまで気にしていなかった音に対して怖がるなど、過剰に反応を示すようになった。
足を舐めたり噛んだりしている
体に特に異常はないのに、自分の足を舐めたり、噛んだりするようになった。
何かと吠えることが増えた
これまで、ほとんど吠えることはなかったのに最近やたらと吠えやすくなっている。
落ち着いて寝ていられない
寝床へ行ってもなんだか落ち着いていない様子で、ぐっすり眠れていないようだ。
サイン以外に室内での行動もよく見ておくことが大切
おかれている生活環境が犬にとって快適でない場合、ストレスによるさまざまな行動が起こってくる。
犬がストレスを感じた時に見られる主なサインを挙げてみたが、これらが必ずしも生活環境が原因になっているとは限らない。もしかしたら他にストレスの原因になっていることがあるかもしれないからだ。
見分けるためには、サイン以外の行動もよくチェックしてみよう。当てはまる場合は生活環境が影響している可能性が高いと考えられる。
サイン以外の行動
居場所を転々として安定していない
ぐっすり寝る場所は基本1~2ヶ所だが、あちこち転々としていたり決まった場所で熟睡していないのなら、何かの不快感があるのかも。
室内で歩く様子にぎこちなさがある
関節などに特に異常はなく、散歩中は普通に歩けるのに、室内での歩き方がなんだかおかしいと思われる場合は、足が滑っていることも考えられる。
行動に不自然さが見られる
日が当たっていようが当たっていまいが、ずっとその場所に居続ける、部屋の隅から動かないなど、不自然な行動が見られる時も環境の見直しが必要。
周辺環境に対して吠えずにいられない
窓の外を通る人や犬などを見つけると警戒するあまり、吠えなければ気が済まない。そのため窓際からなかなか離れない場合は環境整備が必要。
安心して過ごせる快適な環境を心がけてあげよう
快適な環境である目安は気持ちよく寝られているか
当然のことながら、犬は自分から生活環境の不満を訴えることはできない。例えば、布団の寝心地がよくない、家族がよく通る場所だから落ち着いて眠れない、など寝不足になっていたとしても犬の場合はわかりにくい。寝不足のイライラがストレスサインとして現れて気づくということになる。
だが〝生活環境〞というものは単に寝床や家具の配置など、物理的なものだけで構成されているわけではない。置かれている環境が快適かどうかは、飼い主との関係性であったり、同居している動物がいる場合にはその関係性だったり、他の要因も影響してくる可能性も考えられる。
ストレスサインが見られるけれどその原因がよくわからないという場合は、勝手に判断せずに専門家に相談することも考えておきたい。愛犬が不快に感じていることを早めに気づいてあげることは大切だ。
安心できる快適な環境で生活を送っている犬は、気持ちよく熟睡もできているものだ。愛犬が爆睡している姿を見られているのか、というのはひとつの目安となる。
まずは愛犬がしっかり寝られているのか、ぜひ確認してみよう。
堀井隆行先生
ヤマザキ動物看護大学動物看護学部動物人間関係学科講師。愛玩動物看護師。動物のストレス管理や行動修正を研究し、講演活動や動物病院での行動カウンセリングも行う。共著に『知りたい! 考えてみたい! どうぶつとの暮らし』(駿河台出版社)。
Text:Hiromi Mizoguchi
Photos:Ayaka Shida、Minako Okuyama、Teruhisa Tajiri
Illustration:Yuko Yamada
Shi-Ba Vol.134『暮らしの見直し!ポイントおさえて今日からスタート 生活環境大改造』より抜粋