ニガテは減らせる!ステップアップ de おうちケア①愛犬の苦手を知る

愛犬のお手入れ嫌いは、「性格のせい」と思われていることが少なくない。でも、「苦手」には、必ず理由がある!

「お手入れはちょっとね……」と思う犬の気持ちを深掘りし、改善策を探ってみたい。

 

人間の「お風呂キャンセル界隈」の理由は、主に面倒くさいから。でも、犬の「お手入れキャンセル界隈」は、人間とは理由が異なる。

一度でも「嫌なことを無理やりされた」と感じる経験をすると、犬はお手入れ嫌いになってしまうのだ。愛犬の健康と美を守るため、飼い主さんは一生懸命お手入れをする。でも、犬はケアの必要性を理解しているわけではないため、「コレ、やらないとダメ?」などと思ってしまうわけだ。

つまり、飼い主さんにとっての「正義」は、犬にとっては「ありがた迷惑」。深い愛で結ばれた飼い主さんと犬であっても、お手入れに関しては悲しいすれ違いが起こりがちなのだ。

お手入れを「嫌なこと」にしないためには、一気にゴールを目指さず、愛犬の性格や体質に合わせて少しずつ慣れさせていく工夫が必要だ。

 

身につけたい

ブラッシング
健康のために毎日!
抜け毛をそのままにしておくと、正常に換毛せずに肌トラブルが起こることも。毎日の習慣にしたいケア。

歯磨き
歯ブラシが必須
1日1回は必ず行う。ハミガキガムなどは補助的に利用するもの。きちんとブラッシングすることが大切。

できたらよりよい

シャンプー&ドライ
自宅でできると便利
プロに任せてもよいけれど自宅でできるようにしておくと、急に汚れてしまった時などにも対応できる。

爪切り
無理なく慎重に
爪が伸びすぎると歩行に影響が出ることもあるので、ケアは必須。苦手な場合は、無理せずプロに頼もう。

できなくてもOK

耳掃除
不要なことが多い
立ち耳の柴犬は耳が蒸れにくく汚れもたまりにくいので、日常の特別なケアは必要ないことがほとんど。

肛門腺絞り
するならプロの手で
柴犬は肛門腺の分泌物をうんちと一緒に排泄しやすい。病院に行った際、絞る必要があるかどうか相談を。

愛犬の“ニガテ”はどこから?

お手入れが苦手になってしまう理由は、「いきなり」「一気に」やろうとするから。まずは、体に触られることや必要に応じて体を押さえられること、お手入れグッズなどに慣らしていこう。

①じっとしているのがニガテ

「動くの大好き!」というアクティブ派と、「お手入れが好きじゃないからここから離れたい」という逃走派に分けられる。

②触られるのがニガテ

過去の不快な経験などのために、触られることそのもの、または特定の部位に触られることを嫌がることがある。

③知らないものがニガテ

用心深いタイプの犬は、初めて見るお手入れグッズなどに警戒心を抱くこともあるので、「物に慣らす」ための工夫も必要。

④痛みがニガテ

飼い主さんに悪気はなくても、一度でも痛い思いをすると、そのケアが嫌いになってしまう可能性大。改善には根気よく取り組もう。

⑤トラウマでニガテ

痛みだけでなく、「怖い」「嫌なことをされた」という不快感も、一度でも味わえばお手入れ嫌いの原因になってしまうことが多い。

④⑤でお悩みのこんな子はすぐに専門家へ!

歯を見せて唸る

毛を逆立てて吠える

攻撃的に突進してくる

咬みつこうとする

犬は怖い思いをすると、二度と同じ思いをしないように、きっかけとなった出来事などを避けようとする。これを「恐怖条件づけ」といい、一度の経験で学習してしまうことも。改善するのは簡単ではないので、ドッグトレーナーなど専門家に相談しよう。

じっとしているのがニガテな子は一緒にいることに慣れさせよう

体を動かすのが好きな犬には、落ち着いて止まっていることから教える必要がある。慣れるまでは無理強いせず、ブラッシングなどは犬が近くにいる時を狙って、体を押さえずに行ってもよいだろう。

日頃から、犬が近くで落ち着いている時にほめ言葉をかけてオヤツをあげるなど「飼い主さんの近くで静かにしているのも悪くない」と思わせる工夫を。重要なのはオヤツではなく、犬と穏やかなコミュニケーションをとること。お手入れ中に動くからと、力で押さえつけるのは逆効果。ますますお手入れ嫌いにしてしまう。

×NG⇒人が後を追う

逃げた犬を追いかけてケアを続けると、嫌な気持ちが増したり、追いかける遊びという認識になってしまったりすることも。

 

触られることに慣らす

愛犬の様子
・体を押さえると暴れる

・触ろうとすると逃げる
・正面から手を出すと後ずさる

触られる=嫌なことをされる、押さえつけられて動けなくなる、というイメージを、よりよいものに上書きすることを目指そう。

1.手に慣れさせる

犬が逃げないギリギリの距離に手を出し、直後に反対の手でフードを与える。徐々に手と犬の距離を縮めていく。左右それぞれの手で行う。

フードの代わりにオモチャで遊んでもよい。

2.体を触られることに慣れさせる

①背中

犬の正面を避けて横に座り、比較的敏感ではない背中から触る。背中を優しく撫でてすぐにオヤツを与える。

②胸

背中をある程度触れるようになったら、胸のあたりへ。指先ではなく、手のひら~指全体を軽く体に当てるようにするとよい。

③お尻~後ろ足

背中のあたりから続けて、太もも~お尻~後ろ足の先~シッポなどを毛の流れに沿って撫でていく。嫌がらなければ、足先を軽く握ってみてもよい。


シッポは軽く握って付け根~先へ。

④前足

前足は嫌がる犬が多いので、様子を見ながら付け根から足先へ撫でていき、可能なら軽く握ってみる。

3.顔を触られることに慣れさせる

①首すじ

体を撫でることに慣れてきたら、顔周りへ。体を撫でた流れで首の両サイド&後ろを撫でていく。さらに毛の流れに沿って後頭部~首を軽く撫でる。

②耳

撫でられるのを嫌がる様子がなければ耳へ。力を入れすぎないように注意しながら、左右の耳の付け根から先へ、親指の腹などで軽く撫でる。

③アゴの下

アゴの下に手を添えるように軽く当て、少しずつ口の周りを触っていく。アゴに触られるのを嫌がる場合は、左のような方法で「人の手にアゴを乗せること」を教えてもよい。

おすすめトレーニング!


ごほうびにするオヤツを小さくちぎる。


オヤツを親指で隠すようにしっかり持つ。

犬の前に片方の手を差し出し、上のようにオヤツを持った反対の手を、差し出した手のひらあたりに添える。犬が自分から差し出した手に下アゴを乗せたら、オヤツを食べさせる。

「体中、どこを触られてもOK」になることが、お手入れの苦手克服の第一歩。この段階で、犬に我慢や無理をさせないことが大切だ。犬の様子を見ながらじっくり取り組み、犬が飼い主さんに触られることを心地よく感じるようになってから保定(体を押さえること)に進もう。

触られるといいことがある!と教えよう

堀井隆行先生
ヤマザキ動物看護大学動物看護学部動物人間関係学科講師。愛玩動物看護師。動物のストレス管理や行動修正を研究し、講演活動や動物病院での行動カウンセリングも行う。共著に『知りたい! 考えてみたい! どうぶつとの暮らし』(駿河台出版社)。

Text:Kumiko Noguchi Photos:Minako Okuyama
Models : Orihime、Happy

Shi-Ba Vol.135『ニガテは減らせる!ステップアップ de おうちケア』より抜粋

-お手入れ, しつけ