おとボケまる子日記:その1「いよいよ認知症が始まりました。最近、ちょっと 変わった?とまずは 気付こう!」

まる子:2021年1月現在、13歳のおばあちゃん。体重は8.6kg。7歳の猫兄妹と同居。2020年夏頃から体調、行動、見た目など様々な変化が現れるようになった。

13歳以上のハイシニアは低脂肪、高カロリー、高タンパクが○

一昨年までは散歩をしていても「7歳くらいですか?」と言われるほど見た目も動きも若いのが、唯一の自慢だったまる子。しかし、2020年の夏頃から目に見えて老化が進み、「認知症が始まったかも」と不安を募らせていたまる子の母。意を決して、このコーナーを企画し、これからの老犬介護に備えようと思った次第。ご自身もハイシニアの愛犬を看取ったご経験のある茂木先生に気になることを伺うことにした。

で、今回は「食」に関するお話。我が家の場合、以前と変わったな~と痛感したのは主に2点。

まず1つ目は、与えるものを変えたわけではないのに、下痢が多くなったこと。最初、アレルギーかと疑ったのだが茂木先生によると、「うちの犬も14歳8ヶ月位から下痢がちになり、体力が一気に落ちました。
ハイシニアになると腸管の膜が薄くなり、それまで侵入してこなかった毒素(腸内で異常発酵したもの)が入りやすくなります。その危険を腸が察知して水分を多く分泌し、毒素を流し出そうとするのが下痢です。
心臓が元気でも腸からの吸収がうまく働かな食べ物の内容や量を変えていないのに下痢になる場合は、かかりつけの獣医師に相談するか、与える量を減らしてみるといいだろう。

食事時は殺気が立ち込める!?

散歩から帰宅後は食事処まで猛ダッシュ。ゴハンの準備ができていないと、飼い主や猫に八つ当たりしたり、ブーブー鼻を鳴らす。「餓鬼道に落ちた」とは夫の弁。

 

餓鬼様にお供えするマグロ

好物だった焼き芋は下痢になりやすいので、最近は刺身用の赤身のマグロを茹でてオヤツに。この他白米も餓鬼様にお供え。おかげで冷蔵庫にはワサビの大量在庫が。

 

餓鬼様、かなり迷惑なのですが

朝「そろそろ起きようよ」と声をかけても知らん顔なのに、台所で調理が始まるとムクムクと起き上がり、おかしな場所でスタンバイする餓鬼様。かなりの迷惑行為。

 

そして2つ目は「異常な食欲」だ。まる子は以前は淡々と食べるタイプだった。しかし、最近はフードを器に入れている時から興奮し、噛まずに飲むような状態。食べ終わっても「まだ食べていない!」と催促する。

「過度の食欲や食欲の亢進はよく見られる認知症の特徴の1つです。食べたことを忘れる記憶障害と、消化吸収機能が低下したことにより、生理的に飢餓状態になっていることが考えられます。若い頃とは違い、飲み込んだ食べ物を胃だけでは消化しにくくなってきますので、消化酵素が混ざりやすくなるように、ひと手間ではありますが、フードをすり潰したり、お粥状にしてあげると良いでしょう」

消化吸収機能の低下と言われると、思い当たる節がある。フードやオヤツの量や内容は全く変えていないのに、なかなか落ちなかった体重が少しずつ減少しているのだ。

実はこのことも注意が必要で、「下半身が痩せてきている場合、タンパク質の吸収がうまくいかずに、筋肉量が落ちてきていることになります。歳を超えたハイシニア犬は太る心配をするよりも、高カロリー、高タンパク、低脂肪の食生活を心がけることが大切です。いくら食べても体重が落ちてしまうようなら、栄養補助食を上手に取り入れてみましょう。

筋肉が落ちることの一番の弊害は、寝たきりになってしまうことです。また、認知症は脳の神経が酸化することでその機能を失っていきます。オメガ3脂肪酸やポリフェノールを含む食材を積極的に取り入れ、脳内の酸化を防ぐのもオススメです」

食べ方、便、体重の増減などは飼い主が気付きやすいことなので、「前となんか違う?」と感じたら、早めに対処することを心がけ、認知症と付き合っていこう。

オメガ3生活早速スタート!

スーパーで購入したオメガ3脂肪酸入りのアマニ油。小さじ1で約41.4kcalなので、我が家では小さじ1/8位をドライフードにかける。

 

栄養補助食品も相当お気に入り

生まれて初めての栄養補助食品を食べるまる子。あまりのおいしさに、本能がむき出しに。同居の猫もにおいに反応して阿鼻叫喚。

 

すり潰すそばで圧力をかける

ドライフードをすり潰していると「早くよこせ!」とイライラし始めた。次からは庭か私の仕事部屋でこっそり、すり潰すことにする

 

おうちでチェックしよう
犬痴呆の診断基準100点法(内野式100点法)

各項目から、一番あてはまるものをチェックしよう。

①食欲・下痢
●正常・1点
●異常に食べるが下痢もする・2点
●異常に食べて、下痢をしたりしなかったりする・5点
●異常に食べるがほとんど下痢をしない・7点
●異常に何をどれだけ食べても下痢をしない・9点

②生活リズム
●正常・1点
●昼の活動が少なくなり、夜も昼も眠る・2点
●昼も夜も眠っていることが多くなった・3点
●昼も夜も食事以外は死んだように眠って、夜中から明け方に突然起きて動き回る飼い主による制止が可能な状態・4点
●上記の状態を人が制止することが不可能な状態・5点

③後退行動(方向転換)
●正常・1点
●狭い所に入りたがり、進めなくなると、なんとか後退する・3点
●狭い所に入ると全く後退できない・6点
●上記の状態ではあるが、部屋の直角コーナーでは転換できる・10点
●上記の状態で、部屋の直角コーナーでも転換できない・15点

④歩行状態
●正常 1点
●一定方向にふらふら歩き、不正運動になる・3点
●一定方向にのみふらふら歩き、旋回運動(大円運動)になる・5点
●旋回運動(小円運動)をする・7点
●自分中心の旋回運動になる・9点

⑤排泄状態
●正常・1点
●排泄場所を時々間違える・2点
●所構わず排泄する・3点
●失禁する・4点
●寝ていても排泄してしまう(垂れ流してしまう)・5点

⑥感覚器異常
●正常・1点
●視力が低下し、耳も遠くなっている・2点
●視力・聴力が明らかに低下し、何にでも鼻を持っていく・3点
●聴力がほとんど消失し、においを異常に、かつ頻繁に嗅ぐ・4点
●嗅覚のみが異常に敏感になっている・6点

⑦姿勢
●正常・1点
●尾と頭部が下がっているが、ほぼ正常な起立姿勢を取ることができる・2点
●尾と頭部が下がり、起立姿勢を取れるが、アンバランスでふらふらする・3点
●持続的にぼーっと起立していることがある・5点
●異常な姿勢で寝ていることがある・7点

⑧鳴き声
●正常・1点
●鳴き声が単調になる・3点
●鳴き声が単調で、大きな声を出す・7点
●真夜中から明け方の定まった時間に突然鳴き出すが、ある程度制止可能・8点
●右記と同様であたかも何かがいるように鳴き出し、全く制止できない・17点

⑨感情表現
●正常・1点
●他人および動物に対して、なんとなく反応が鈍い・3点
●他人及び動物に対して反応しない・5点
●右記の状態で飼い主にのみ、かろうじて反応を示す・10点
●右記の状態で飼い主にも反応しない・15点

⑩習慣行動
●正常・1点
●学習した行動あるいは習慣的行動が、一過性に消失する・3点
●学習した行動あるいは習慣的行動が部分的に持続消失している・6点
●学習した行動あるいは習慣的行動がほとんど消失している・10点
●学習した行動あるいは習慣的行動が全て消失している・12点

※総合点:30点以下=老犬、31点以上49点以下=痴呆予備軍、50点以上=痴呆症

動物病院でも使うこの表は獣医師の内野富弥氏が作成したもの。まる子の症状は赤い字で示した。合計点数は25点で「普通の老犬」という結果だが、明らかに認知症の状態。総合的な判断はかかりつけの獣医師と相談し、今やるべきこと、今後のこと、日々のケアについて考えるのが望ましい。

まとめ
先回りした知恵と対処で進行を遅らせよう!

監修:茂木千恵先生
東京大学大学院農学生命科学科獣医学博士課程卒。獣医師。専門は獣医行動学。ヤマザキ動物看護大学准教授。教育・研究活動のかたわら、東京都町田市内でペットの問題行動治療やパピークラスの開催も行う。「飼い主が幸せになれば犬も幸せになり、犬が幸せになれば飼い主も幸せになる」という考えをベースとし、飼い主の話をじっくり聞くことも大切にした指導は、多くの人や犬から好評を得ている。

Text&Photos:Mari Kusumoto

Shi-Ba Vol.117『おとボケまる子日記』より抜粋

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