何歳からでも毎日やりたい!犬の健康を維持するトレーニング

年齢を重ねるにつれ、できないことが増えていくのは犬も人も同じ。愛犬にいつまでも健康でいてもらいたいからこそ、何歳からでもできるトレーニングを取り入れてみよう。

心も体も健全であることが健康な状態と考えて

愛犬に1日でも長く健康で元気に暮らしてもらいたい! とは、どの飼い主も願っていること。まずは犬たちの『健康』とはどのような状態を指すのだろうか。

「体だけでなく、心の側面からも健全である状態が、健康と言えるのではと考えています」と堀井先生。

愛犬の心も体も健全に保つために日頃から飼い主はどのようなことを心がけておくべきかを聞いてみた。

「動物福祉の指針に『5つの自由』があります。この国際的に認められている動物を適切に飼育するための考え方を知っておきましょう。これらを理解した上で、愛犬を迎えた時から生活環境を整えてあげること。
特に重要視したいのが〝休息の質〞。犬にとっても安心して休める空間が必要です。また人間社会で暮らしていくためには、さまざまな物事に慣らす社会化も欠かせません」

人間において、健康寿命を延ばすためには脳の活性化がよいと言われているが、それは犬でも同じと考えられている。嗅覚を活用する遊びを取り入れたり、新しいトリックを覚えさせたり、脳を活性化するのに役立つトレーニングを紹介しよう。
いずれの場合も、教える側も教えられる側も「とにかく楽しく」が基本。
そして、愛犬の様子を見ながら無理しないことも忘れずに。

まずは安心できる空間を作って休息の質を高める!

ここは十分安心してくつろげるよ きなこ(メス・5歳)

愛犬が健康を保つには環境作りが大切。その上で健康を維持するための工夫を。

 

心と体の健康を保つ“ 5つの自由”

①飢えと渇きからの自由

食事は量だけでなく、年齢や健康状態に合わせた栄養が摂れる適切な内容を与える。新鮮な水が常に飲めるように。

②痛み・負傷・病気からの自由

日頃から健康状態をチェックし、ケガや病気の予防に努めるとともに、発見した場合は適切な治療を受けさせる。

③不快からの自由

生活スペースは適切な温度湿度対策はもちろん、清潔で安全な場所を用意し、快適に過ごせるようにしてあげる。

④恐怖・抑圧からの自由

精神的苦痛や不安は生きている上ではゼロにはならないが避け難いものを除いて、受けないよう心がけてあげる。

⑤正常な行動を発現する自由

十分な広さの空間、遊んだり探索したりできる環境など、犬が本来持っている正常な行動ができるように工夫する。

 

嗅覚を刺激する遊び

においを嗅ぐと活発に呼吸することになるので、積極的に心肺機能を使う一種の運動になる。2種類の遊びを紹介。

 準 備 

においが強めなオヤツを用意

チーズなどにおいが強いほうがよく嗅ぐ。量はこの程度が目安。

タオルを準備 散りばめる様子は犬に見せないこと

広げたバスタオルの上に細かくちぎったオヤツを散りばめておく。

タオルの中にオヤツを隠したら準備完了!


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タオルをグチャグチャに巻いたら、犬に隠したオヤツを探させる。

オヤツは細かく切って、たくさん入っているほうが、においが漂いやすく、集中しやすくなる。使うタオルを決めておけば、他のタオルをいたずらすることにはつながらない。

 

 準 備 

犬に見せないように準備する

紙コップを用意

紙コップの下にオヤツを入れる。滑りやすい床ならコースターを敷くとよい。

 


においを嗅がせて中のオヤツを見つけさせる。なかなか取れない子は、オヤツを入れるところを見せてあげてもよい。

レベルアップ!2個にしてオヤツは片方に

オヤツを入れたほうを当てさせるが、触れてよいのは1回に1個。全部開けさせないこと。

もっとレベルアップ!慣れてきたら数を増やしていく


2個で完全にできたら、少しずつコップの数を増やす。犬があきる前にやめること。


嗅覚を使わせるためにも、飼い主は正解に視線を送らないこと。2個の時から「探して」など合図を付けてあげるとよい。

 

新しいトリック

新しいことを覚えることは脳の活性化はもちろん、お互いのコミュニケーションにも役立つ

準備 その①

嗅覚で誘導

誘導する手の中にオヤツを持つ

与える際にちぎって与えられるオヤツだと、誘導中こぼす恐れがない。

握った手に興味を持ったら誘導する

握ったオヤツのにおいに興味を持ち、犬がにおいを嗅ぎながら目的の位置までついてきたら、ほめてオヤツを与える。においでうまく誘導できない犬は短い距離からやってみよう。

 

準備 その②

ハンドターゲット

手にオヤツのにおいをつける

犬が手に興味を持ちやすいように、チーズなどのにおいをつけておくほうが簡単。

犬が自分から鼻先を手に近づけるのを待つ

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犬の鼻先が手に触れたらほめてオヤツを与える。最初は鼻先が手に触れそうという状態でオヤツを与えても大丈夫。

 

準備 その③

トリックの幅を広げるために

足の間を通ることに慣れさせる

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オヤツを持った手を足の間に入れ、犬が足の間を通るようオヤツを軽く投げる。

ターン

犬が混乱しないためにも、まずは片方が完全にできるようになってから反対回りを教えよう

オヤツを握った手で誘導する

左右やりやすい方から始める。回りきったらオヤツを与える。回ることができるようになってきたら誘導を小さくして、「ターン」などの言葉を付けていく。完成形は背筋を伸ばして合図が出せるようになるとカッコイイ。


〈ワンポイント〉上手く回れない際は一歩下がってみる
片足を一歩下げて空間を作ることで回りやすくなる場合も。

8 の字

人の左側についている状態からスタートすることを前提にして、8の字を教えていこう

①まずは誘導しながら左足を回ることを教える

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オヤツを握った手で誘導し、回り終えたらほめてオヤツを与える。

②右足を回って①の動きにつなげる

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右足を回らせて①の動きと繋げることで8の字に。繰り返して行い、動きが固まってきたら「エイト」など言葉を付ける。

レベルアップ!ハンドターゲットで誘導

ハンドターゲットを覚えていると教えやすい。

 

ウィーブ

歩いている人の足の間をくぐるトリック。8の字ができるようになっていると教えやすい。

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ハンドターゲットを使うと教えやすい
最初はゆっくりと一歩出した足の間を通るよう誘導する。足を大きく開けすぎると、人の体勢が不安定になるので気をつけて。できるようになってきたら手の誘導は小さくして、足の動きを目立たせる。「ウィーブ」などの言葉を付けていく。完成形は背筋を伸ばして足の間をくぐらせるとカッコイイ。

 

監修:堀井隆行先生
ヤマザキ動物看護大学動物看護学部動物人間関係学科講師。愛玩動物看護師。動物のストレス管理や行動修正を研究し、講演活動や動物病院での行動カウンセリングも行う。共著に『知りたい! 考えてみたい! どうぶつとの暮らし』(駿河台出版社)。

Text:Hiromi Mizoguchi Photos:Minako Okuyama

Shi-Ba Vol.130「何歳からでも毎日やりたい!健康を維持するトレーニング」より抜粋

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