足腰が弱ってきたり、毛の状態が変わってきたり。シニア柴の健康とかわいさを守るためには、年齢に合ったケアが必要です。
年齢が出やすい部位
加齢とともに毛量は減っていくもの。毛が薄いと肌が刺激を受けやすくなるので、お手入れの際は力加減に注意。関節が床に当たっても痛くないよう、犬がくつろぐ場所にはやわらかい敷物などを用意しておきましょう。
シニア犬のケアが難しくなる理由のひとつが、犬にとっての「嫌」が増えること。人間だって年をとれば、「嫌なことは嫌」と主張する場面が増えるはず。犬だって同じです。
注意が必要なのは、こうした「嫌」には体の問題が関わっている場合があること。単に「嫌い」「気分がのらない」わけではなく、「痛くてつらい」「苦しいから嫌」と訴えている可能性も考えなければ!
犬の一生は人間より短く、高齢になると心身が一気に衰えます。先月まで受け入れられたことが急にNGになることも。「これまで大丈夫だったから」と同じケアを続けると、犬に負担をかけてしまうこともあります。「今」に合わせて、無理なくできるお手入れを心がけましょう。
ストレスなくケアするために
テーブル上でケアをするトリミングサロンでは、安全確保のため首にかける「トリミングリード」を使います。このリードは「上から吊る」のではなく、頭を支えるためのもの。自宅で使う場合は必ず正しい位置にかけましょう。
頭を支えるリードはあごにかける
トリミングリードを首にかけたら、あごの骨にぶつかる位置まで持ち上げます。その状態で、リードがたるまないように長さ調整を。下にずれると、のどや首が絞めつけられてしまいます。
立たせる時はお腹を支える
シニア犬のお手入れは、犬が楽な姿勢で。フセでもヘソ天でも構いません。どうしても立ってほしい時は体の前から腕を入れて手のひらでお腹を支え、そっと持ち上げるようにします。
足先には触れずに足を上げさせる
前足の足先は敏感な部位。触られるのを嫌がる場合は、肘の下あたりを握ってから手を下へべらせ、手首を後ろへ曲げて足を上げさせてみましょう。
犬の足は前後にしか動かない
足を上げる時は、まっすぐ前または後ろへ。高さは、後ろ足なら膝までを目安にします。体より外側へ開くように上げると、関節に負担をかけることに。
爪は切らずにヤスリで
爪切りが苦手でも、バチンという音や衝撃がない爪ヤスリなら受け入れられることも。優先したいのは、家族と触れ合う際に気になる前足の指と狼爪。本格的な爪切りは、かかりつけの動物病院に相談してみて。
何はなくともブラッシング
できれば毎日続けたいのが、ブラッシング。抜け毛を取り除いて蒸れを防ぎ、肌を刺激して血行を改善する効果があります。毛が薄くなると、ブラシの刺激を強く感じることが。ブラシ選びや力加減の工夫も必要です。
丁寧にケアしたい首まわり
ハーネスや首輪が当たる首まわりは、毛がこすれる部分。アンダーコート(かたい毛の下にあるフワフワした毛)が絡みやすいので、内側まで丁寧にとかします。
優しくとかせるピンブラシ
ブラッシングは毛の流れに沿って行いますが、ふんわりさせたい部分は逆にとかしても。シニア犬には、スリッカーより肌への当たりがソフトなピンブラシが快適なこともあります。
汚れたら濡れタオルを活用
洗い流さないドライシャンプーは汚れを落とす効果はありますが、どうしてもシャンプー剤が毛に残ってしまうため、ベタつきや汚れが気になることも。特にひどい汚れでなければ、濡れタオルで体を拭くケアがおすすめです。
目のまわりはウェットシートで
涙や目やにが多いと、目のまわりで乾いてかたまりがち。専用のウェットシートや拭き取り用ローションをつけたコットンでやわらかくしてからケアします。触れる際、上から手を出すと犬を驚かせてしまうので、視界に入る下のほうから手を当てましょう。
頭を動かさないように軽く支える
濡らしてかたく絞ったタオルで、毛の流れに沿って拭いていきます。頭の位置を一定にしておくと犬が落ち着いていられるので、あごなどに軽く手を添えて頭を支えましょう。強く押さえるのは逆効果。人が力を入れると犬も押し返してきます。
足には湿り気を残さない
散歩などの後は、濡れタオルやウェットシートで、指やパッドの間まで丁寧に拭きます。湿り気が残っていると肌トラブルの原因になるので、乾いたキッチンペーパーで仕上げ拭きを。可能なら、指の間に軽くドライヤーをかけましょう。
尿で汚れるお腹まわりは丁寧に
尿で汚れやすいお腹は、後ろから前へ拭きます。毛の流れに逆らって拭くと毛が立ち上がるので、表面だけでなく内側にしみ込んだ汚れも取ることができます。タオルの上から指の腹でそっともみ、毛の根元まで丁寧に拭きましょう。
コツ 無理強いせずに優しくケア
犬がリラックスしている時に撫でたり話しかけたりしながら行います。シッポをつかんで引き止めるなどの強制は避け、嫌がる前に終了。「嫌がったら終わり」というパターンにすると、かえって嫌がることが増えてしまう場合があります。
ケアの鉄則は、犬に我慢をさせないこと。飼い主さんがやりがちなのが、「すぐに終わるから、ちょっと我慢して!」という流れ。一瞬の不快感で何かを大嫌いになってしまうのが日本犬です。たった一度の強制で、これまでできていたケアを拒否するようになってしまうこともあるので要注意。
毎日のブラッシングなども、タイミングを選んで行いましょう。理想のお手入れタイムは、犬がリラックスしている時。「全身きれいにしなくちゃ」などとこだわる必要はありません。犬の姿勢や気分に合わせて無理のない範囲で行い、嫌がる前に終わりにしましょう。
トリミングサロンを利用したい場合は、若いうちから行きつけのサロンを作っておくことが大切。シニア犬のケアを安全に行うためには、担当トリマーとの間に信頼関係があり、サロン側が犬の性格や体調を把握している必要があるからです。
また、犬の状態によってはできないことやしないほうがよいこともあります。普段の暮らし方などを考えたうえで、「お尻まわりだけはきれいにしたい」など、優先順位をつけて希望を伝えましょう。
汚れたところだけ洗うシャンプー
シニア犬は血圧が高かったり心臓が弱っていたりすることがあるため、全身を濡らして洗うシャンプーにはリスクがあります。年齢や体調に応じて、汚れが気になるところだけを部分洗いするケアに切りかえていきましょう。
①シャンプーは泡立てておく
シャンプーを製品に合った濃度に薄め、混ぜながら泡立てます。体につけた時に垂れにくいクリーミーな泡を作りたいので、やわらかいスポンジを手で握りながら空気を含ませていくとよいでしょう。
② 洗う部分を濡らす
部分洗いが必要になることが多いのは、排泄物で汚れやすいお尻まわりやお腹、泥で汚れた時の足など。お湯の温度はぬるめ(38~39℃)に設定し、内側の毛まで十分に濡らします。
[その1]シャワーヘッドは体に当てて
シンクにお湯が当たる音や水圧で驚かさないよう、シャワーで濡らす場合は、ヘッドを体にぴったり当てます。
[その2]スポンジで濡らす方法も
シャワーが苦手な場合は、やわらかいスポンジにぬるま湯を含ませ、体にそっと押し当てて濡らしていきます。
③ 泡を浸透させて軽くもみ洗い
スポンジに泡を含ませ、いちばん汚れているところから泡をつけて内側の毛まで浸透させます。その後、指の腹で軽くもむようにして汚れを落とし、シャワーやスポンジでぬるま湯をかけて泡をしっかり流します。
④ タオル+キッチンペーパーで拭く
ドライヤーをかける時間を短くするには、タオルドライが大切。乾いたタオルの上から指の腹で軽くもみ、毛の根元までしっかり拭きます。その後、さらにキッチンペーパーで拭くと、根元に残った水気も取れます。
足の毛が短い部分は、キッチンペーパーの上から軽く握って水分を取ります。
体を拭く際は、タオルを数使って。吸水性の高いラバー素材のタオルもおすすめ。
⑤ドライヤーは短時間で
体力の消耗を防ぐため、ドライヤーをかける時間はできるだけ短く。ドライヤーの先を軽く振りながら風を当てるようにすると、早く乾きます。
マナーパンツで肌トラブルも予防
尿漏れが見られたり、寝ている間に失禁したりする場合は、マナーパンツやマナーベルトをつけてみましょう。尿をさっと吸収して戻りもないので、肌に尿がつくことで起こるかゆみや湿疹などを防ぐのに役立ちます。
監修:櫻井春輝さん
「LUMINOUS」オーナートリマー。「シニア犬のケアは無理をせず、犬のペースで。高齢になっても、かわいい姿を保ってあげてください」
LUMINOUS
☎048-269-7990 https://luminous-dog.com/
営業時間10:00~19:00
シニア犬のためのケアプログラムも
「ルミナス」では、2010年よりシニア犬のためのスペシャルケアをスタート。事前のカウンセリングを元に、必要に応じて獣医師とも連携しながら、それぞれの犬の体調を優先したケアを行っています。
カウンセリングでチェックしたいこと
事故防止のため、事前カウンセリングでケア内容や緊急時の対応を決めておくことが大切です。
持病の有無
持病がある場合は病名や、これまでの病歴。現在の体調や獣医師から受けている注意点なども確認。
現在の体調
触った時に痛がったり嫌がったりするところがないか、気になる行動の変化などがないか。
犬の性格
犬が嫌がることやそれに対する反応、過去にトリミングサロンや病院に行った際の様子など具体的に。
飼い主さんが希望するケア
「爪切り」「シャンプー」など、希望するケアを具体的に伝え、可能かどうかを担当トリマーと相談。
かかりつけの動物病院について
かかりつけの病院名と緊急時の連絡先などを伝える。事前に担当獣医師に連絡し、健康状態の確認などをすることも。
Text:Kumiko Noguchi Photos:Miharu Saitoh
Models:Tsukune、Momo
Shi-Ba Vol.130「大切なのは苦手にさせないこと ずっと続けるためのケア方法」より抜粋