
モデル:ハル(オス・4歳)
いつ起こるかわからない災害に備え、我が家ではどんなことができるのだろう?ペットと暮らすための家作りに詳しい「JAMMS 一級建築士事務所」の横関和也さんに、建築家の視点で愛犬を災害から守る家について伺った。
家で対策できる災害の種類
●地震
●火災
●ウイルス災害
●長期停電や断水などの二次災害
災害のうち、洪水、津波、噴火は、建築ではどうすることもできないが、地震や火災、ウイルス災害、それに伴う長期停電や断水であれば、人間の手で被害を最小限に食い止めることができる。
大きなリフォームから、小さな工夫まで、今住んでいる家でもできる対策はさまざまある。
建築的な視点でできる災害対策とは?
大きな震災が発生するたびに改正されてきた建物の耐震基準。新しい基準では、震度7レベルの地震でも「人命に危害を及ぼす倒壊などの被害は免れる」ほどの耐震性がある。火災についても法律の改正が何度も行われ、安全基準が高められてきた。
では私たちが行うべき災害対策は、どのようなものがあるのだろう。まず考えられるのは断水で水が出ない、あるいは停電が長期に及ぶ時に備えての二次災害対策だ。
断水については、携帯トイレの使用や飲み水のローリングストック、停電については、ポータブル電源の活用が挙げられる。簡単にできる工夫なので、すぐにでも行いたい。
建築的視点での対策は、ソーラー発電の活用だ。ソーラー発電はすでに一般的になっているが、すべてが停電時に使えるわけではない。すでにソーラー発電を導入していても機種が古い場合、売電はできても蓄電されないものが多々見られた。新しい機種でも、蓄電は手動で切り替えなければいけないものもあるので、事前にしっかり確認しておきたい。
新型コロナウイルスのようなウイルス災害には、住宅の設計段階であれば出入り口付近に手洗いや風呂場を設けることが対策となる。家の出入りの際、必ず手洗い・うがいをして家にウイルスを持ち込まないようにしたい。
戸建て住宅でできること
築年数が古ければ耐震性は低い場合が多いので、耐震対策を施しておきたい。持ち家であれば「屋根軽量化」「耐震ドア」「耐震壁」など、行える対策はたくさんある。阪神淡路大震災を受け、2000年以降に建った比較的新しい住宅であれば、耐震性はある程度高い。集合住宅同様、家の中でできる災害対策を行っておこう。ちなみに耐震基準とは、建物がゆがんだり、ひびが入っても倒れないための基準のこと。
集合住宅でできること
マンションなどの集合住宅では、トランクルームや倉庫を備えていることがある。そこにも防災グッズを分散配置しておけば、家に戻れない時でも安心だ。ただし住宅によっては、地下に設けられている場合があるので、その際は水没の可能性も考慮しておきたい。またマンションには、避難ハッチや緩降機が備えられている。これらを使って避難する際、背中にハンドルがついた犬用ライフジャケットがあるとスムーズに避難できる。
家で実施できる防災対策
:戸建て住宅
:集合住宅

地震でゆがんでも開くんだって!
耐震ドア
耐震ドアとは地震後も開く、閉じ込め防止の玄関ドア。新しいマンションに採用されているケースは多いが、古い集合住宅の場合は耐震ドアでない可能性もある。マンションの管理組合の承認があれば、戸別に改修できることも。

ガラスが割れても安心だよ~

飛散防止フィルム
窓ガラスに貼ることで、低予算で地震の揺れや台風による飛来物からの対策を施せる。最近は、シャッターが設置されていない住宅もあるので、貼っておくと安心。
災害時に犬の足を守るだけでなく、防犯にもなる。
金属瓦
古い戸建ての場合、屋根に重い瓦を使用していることが多い。建物は重心が高いと耐震性が低く倒壊しやすいため、軽量な材料の屋根に変更したい。
金属製で軽量な瓦そっくりのものもあるので、ぜひふき替えを検討してほしい。
物置
防災グッズは、1箇所だけの配置では倒壊すると取り出せなくなる場合がある。複数に分散配置して、万一に備えておきたい。
ガレージがある家はガレージを利用。ない場合は外に物置を置くなどして、防災グッズを分散配置しておこう。

家具はきちんと固定してね!

転倒防止
背の高い家具は、転倒防止グッズできちんと固定。低い家具でも動き回らないよう、耐震ジェルなどで固定しておきたい。
転倒防止グッズをネジで固定する場合は、壁に下地が入っている所にアンカーをする。

小部屋
トイレ、クレート、ゴハン置場が納まるスペースは、壁の多い小さな空間なら揺れに強く、家が倒壊しても守られる可能性が高い。
日頃から愛犬の居場所として活用し、万一の場合に愛犬が逃げ込めるようにしておきたい。

強化網戸
大きな地震があった時など、愛犬がパニックを起こして網戸を突き破ってしまうこともある。そんな場合に備えて、強化網戸に変更しておくと安心だ。
災害時だけでなく、普段の脱走防止にもなる。賃貸でも気軽に使える。

トール型ならたっぷり入るね

トール型シューズボックス
玄関付近にキャリーバッグなど、愛犬の運び出しに便利な物を置いておけるとよい。トール型シューズボックスであれば靴の他、それらを収納できるので便利だ。
トール型ではない場合、可能であれば変更しておきたい。
耐震壁
古い戸建ての場合は新しい耐震基準に対応していない場合もあり、耐震性に不安があることも。そんな場合は、地震の揺れに強い「耐震壁」を追加して、耐震性を上げることもできる。
愛犬のためにもできることから対策を
比較的行いやすいのは、小さなものでは、家具の転倒防止やガラスの飛散防止などの対策。大きいものでは、耐震改修や軽量屋根へのリフォームなどがある。可能な範囲で段階的にやってみるといいだろう。
賃貸住宅に関しては、内装で工夫するしかないが、戸建て住宅・集合住宅共に、新しい建物のほうが高い耐震基準で作られている傾向にある。住宅性能評価書が示されている賃貸住宅もあるので、確認しておくといいだろう。
マンションは、大規模地震があるたびに法律がどんどん強化されている。昔の建物は関東大震災が基準だったが、阪神淡路大震災でも基準を改定。それ以降であれば耐震性は向上している。
愛犬のために行える有効な災害対策は、小部屋を作ること。広い部屋より小さな空間のほうが、横揺れに耐える壁に囲まれているので安全だ。畳半分の幅の押入などあれば、リフォームして活用するのもいいだろう。飼い主が在宅時はリビングなどで一緒に過ごし、寝る時はクレートで寝る。そんな習慣がつけば、避難所でも落ち着く場所になるはずだ。
これらの防災対策をすべて行うのは難しいが、できることから始めて、愛犬と安心して暮らせる家を作っていこう。
Text:Yoshiyuki Ushijima Photos:Teruhisa Tajiri
監修
JAMMS 一級建築士事務所
横関和也さん
暮らしが豊かで楽しくなる建築を提案する「JAMMS 一級建築士事務所」を主宰。人はもちろん、愛犬も幸せに暮らせる住宅を提案している。愛犬との暮らしを考えて設計した家作りのアイデアが詰まった『犬のための家づくり解剖図鑑』(エクスナレッジ刊)も監修。
埼玉県川越市寺山733-3
☎ 049-229-3606
https://jamms-archi.com/
コーギーSTYLE Vol.48『災害から愛犬を守り抜く防災ホームへの道』より抜粋




