ドッグランは犬のための遊び場。でも、利用するすべての犬が楽しく、安全に遊べることを目指すためには、飼い主さんのサポートが欠かせない。ドッグランを利用する際に必要な、ルールやマナーを知っておこう。
生まれ持った性格や育った環境によって、犬の好みはさまざま。中には犬同士の付き合いが苦手な犬もいる。そんな犬にとって、知らない犬たちがノーリードでワチャワチャしているスペースは居心地がよいとは言えない。「ドッグラン=楽しい場所」とは限らないのだ。まずは愛犬がドッグラン向きかどうかを見極めよう。
よいヒントになるのが、散歩中、他の犬に会った時の反応だ。落ち着いて挨拶を交わしたり遊びに誘い合ったりすることができるなら、社会性が育っているということ。ドッグランでも楽しめる可能性が高い。
反対に、相手と距離をとったり吠えたりする場合は、ドッグランデビューを急がないほうがよい。ドッグランは犬社会のルールやマナーを知っている犬が利用する場。勘違いしがちだが、社会性を身につける目的で連れて行く所ではないからだ。
犬同士の付き合いを楽しめる犬にとって、ドッグランで遊ぶメリットは大きい。「思い切り走る」「他の犬と関わる」という欲求が満たされ、ハッピーに。さらに、さまざまな犬が集まるため、「オトナな犬」や「デキる犬」との出会いも。よい友との遊びを通して多くのことを学び、コミュニケーション能力をさらに伸ばしていくこともできるのだ。
ドッグラン1番の目的
ドッグランは「犬が自由に走る」ためにある!
ドッグランの第1の目的は、犬を自由に運動させること。公共の場では犬をつないでおくことが義務づけられている日本では、ドッグランはノーリードで過ごせる貴重な場だ。
犬にとって「走ること」は、本能的に「快」。人間は犬より運動能力が劣るため、日常の散歩で飼い主さんがどれだけ頑張っても、犬の「走りたい欲」を完全に満たすことはできない。ドッグランで思い切り走ることは、犬の心身の健康維持に役立つはずだ。
ドッグランその他の目的
主役は犬! 飼い主さん同士の交流はおまけのお楽しみ
飼い主さんとつながっているリードがあるかどうかで、犬の行動パターンは大きく変わる。複数の犬がノーリードで遊ぶ場では、犬本来の形で他の犬と関わることができる。普段とは違うコミュニケーションを通して犬の社会性が磨かれることも、ドッグランのメリットのひとつだ。
ただ、利用する際の大前提として認識しておきたいのが、ドッグランは原則として犬のための場所だということ。飼い主さん同士の交流はプラスアルファのお楽しみと考え、視線と注意は常に愛犬へ。「犬ファースト」の行動を心がけたい。
堀井先生おすすめ利用法
初心者は犬が少ない所で「ドッグラン慣れ」を
ドッグランデビューは規模が小さい所で、犬が少ない時間を選ぶとよい。まずはリードを着けたまま中に入って様子を見よう。この際のリードは、2mほどの長さがあるものが理想。
リードが短すぎると、挨拶しようと寄ってきた他の犬に囲まれた時に逃げる余地がなく、ストレスが大きいからだ。最初の数回は、場所になじむことを目標に。犬同士フリーで遊ぶことに慣れてきたら、犬が多い時間に行ってみる、大きめのドッグランに行く、などのステップアップをしていこう。
「犬同士で遊ぶこと」にこだわらなくていい
他の犬から離れてポツーン……という時は、飼い主さんが遊びに誘おう。環境に慣れていないために振る舞い方がわからないのかもしれないし、飼い主さんとのコミュニケーションを楽しみたいのかもしれない。
他の犬と遊ぶことにこだわらず、まずは愛犬がドッグランという「場」を楽しめるようになることを目指すとよい。ただし、シッポと頭を下げてどんよりしていたり、出入り口から離れたがらなかったりするのは「ここが嫌」というサイン。無理強いせずに退場しよう。
知っておくともっと楽しい
●ドッグランの見極め
犬の体格差がケガやトラブルの原因になることがあるので、サイズ別のエリアがあると安心して楽しめる。囲いの高さが十分であることや、出入り口が二重扉になっていることも重要なチェックポイント。愛犬が元気に走るタイプなら、土や芝生のランを選ぶと体への負担が少ない。
●準備するコト
利用する犬たちの安全のために
混合ワクチン、狂犬病の予防接種を済ませておく。飼い主さんは日頃から他の犬との関わり方を観察し、どんな遊び方が好きか、苦手なタイプの犬がいるか、興奮したりおびえたりした時どんな行動をとるか、などを知っておくこと。
忘れずに持って行きたいもの
犬鑑札、または、マイクロチップの登録証の画像やプリントアウト、ごみ袋、飲み水、保冷剤などの暑さ対策グッズ、リード。ランの中で排泄してしまった時に備えてペットシーツや排泄した場所にかけるための水も用意しておく。
ドッグランに入る前の注意
必ず排泄を済ませておく。屋外のドッグランであっても、できればマナーベルトやマナーパンツを着けて利用するとよい。興奮しやすいタイプの犬は、ある程度外で遊ばせ、場の雰囲気に慣らしてからドッグランの中へ。
ドッグランに入ったら、まずはリードを着けたままぐるっと一周するのが基本。ドッグランの出入り口では、「誰か来た!」と他の犬が寄って来ることが多い。慣れない場所で知らない犬に囲まれるのは、どんな犬にとっても緊張するもの。
興奮して攻撃的になる可能性もある。トラブル防止のため、一通り探検が済むまでは飼い主さんが周りに目を配り、愛犬の動きもコントロールできるようにしておこう。
犬をフリーにする時は、犬が少なく、相性の悪そうな犬から離れた場所を選ぶ。その際、外すのはリードだけ。いざという時、犬の動きを押さえてスムーズにリードにつなげるよう、カラーやハーネスは着けたままにしておくのがルールだ。
リードを外した後も、愛犬からは目を離さないように注意。犬の動きに合わせて移動し、トラブルが起きそうになったらすぐに介入できる距離にいることが大切だ。
個体差はあるが、柴犬は好き嫌いがはっきりしている犬種。ドッグランに来たからといって、新しい友達と遊ぶとは限らない。犬の輪に入れようと無理強いすると逆効果になることが多いので、遊び方は犬自身に任せるのが正解。飼い主さんと遊んでもいいし、ドッグランの片隅で日向ぼっこをしてもいいのだ。
コレだけはできるようにしておいて!
呼び戻しは確実にできるようにしておく。一瞬でも動きを止められるとトラブル防止に役立つので、できれば「マテ」も教えておきたい。「マテ」に自信がない場合は、犬のお気に入りのオモチャや音が出るものなど、飼い主さんに意識を向けるきっかけになるものを用意しておくとよい。
また、いざという時にリードを着けられることも大切。リードの着脱が苦手な子の場合は、日頃からスムーズにできるように練習しておこう。
※本特集の撮影は相性の良い犬のみ、プライベートドッグランで行っています。
監修:堀井隆行先生
ヤマザキ動物看護大学動物看護学部動物人間関係学科講師。愛玩動物看護師。動物のストレス管理や行動修正を研究し、講演活動や動物病院での行動カウンセリングも行う。共著に『知りたい! 考えてみたい! どうぶつとの暮らし』(駿河台出版社)。
監修:株式会社ドッグラン・ラボ
新横浜公園ドッグランの運営・管理に加え、横浜ベイエリア中心とした移動式ドッグラン「ドッグラン・キャラバン」を手がける。http://www.dogrun-lab.info/
Facebook:@Dogrun.Lab
Instagram:dogrunlab
Text:Kumiko Noguchi Photos:Minako Okuyama
Models:Ange、Azuki、Ito、Kojimaru、Koma、Oshoh、Sarah、Tamako
Shi-Ba Vol.131『日本犬だってドッグランを楽しめる!』より抜粋