「走りたい」「動きたい」は、犬の本能。
1日のほとんどをヘソ天で寝ている日本犬だって、実は運動が好きなのだ。
ただし、人の暮らしに合わせて生活していると自由に体を動かす機会は減っていき、運動の楽しさまでも忘れてしまうことがある。
愛犬の心身の健康を守るため、運動にまつわるあれこれを知っておこう。
運動こぼれ話 散歩の仕方を見直す!
愛犬の運動不足が気になるなら、まずは散歩を充実させよう。毎日の散歩を、犬が進んで行きたくなる楽しいものにすることを目指したい。
毎日の散歩に「楽しい目的」をもたせる
アジリティの練習をするためには、専用のスペースへ行かなければならない。愛犬と一緒に運動を楽しんでみたいと思っても、「運動=スポーツ」と定義すると、それなりにハードルが上がってしまう。でも、スポーツ以外にも運動を楽しむ方法はある。毎日の散歩だって立派な運動だ。
ただし、近所の決まったコースを飼い主さんペースでのんびり歩き、排泄を済ませたらすぐ帰る……といった散歩が日常になっているなら、ちょっと見直しが必要かもしれない。刺激が少ない散歩は犬にとってそれほど楽しいものではなく、動くことへのモチベーションも高まりにくいからだ。
運動としての役割をもたせるなら、散歩を楽しいものにし、犬自身が「早く行きたい!」と思えるようにすることが必要だ。そのためにおすすめしたいのが、「目的」をつくること。毎日の散歩を、ただ歩き回るのではなく、「何かをしに行く」時間に変えるのだ。
例えば、広場に行って飼い主さんとボール投げをする。公園で友達犬と合流して遊ぶ。自分にとって楽しい目的があれば、犬自身が散歩に行きたがるはずだ。
遊ぶ時間に運動量が増えるのはもちろん、そこに向かって歩く時間も楽しいものになる。犬はこれまでの経験などから、「これから起こること」を想像することができる。「今からボール遊びをしに行くんだ」と思えば、歩き慣れた道も新鮮な気持ちで楽しめるだろう。
散歩中のおさらいでコマンドの般化を
散歩は、自宅以外の場所で犬とのコミュニケーションを取るよい機会でもある。また、遊びの中で、「オイデ」や「マテ」などの基本的なコマンドを教えていくこともできる。
例えばボール投げをする際、ボールを見せて「オスワリ」&「マテ」。できたらボールを投げて自由に走らせる。友達犬と遊んでいる時に呼び戻し、やってきたらごほうびをあげる。楽しいことと組み合わせて教えていくうちに、犬は「飼い主さんの指示に従うと楽しいことが起こる」と気づくはずだ。
犬がすでに覚えているコマンドがあるなら、散歩中におさらいを。犬は環境の変化などに敏感なため、家ではできることが外ではできない、ということも珍しくないからだ。
さまざまな場所やタイミングで指示を出すことを繰り返すうちに、犬は飼い主さんの指示に、いつでもどこでも従えるようになっていく。状況などに左右されることなく指示に従えるようになることを「般化」という。
般化は、人の指示で犬が動くアジリティなどに欠かせない能力。つまり、毎日の散歩によって般化ができていれば、アジリティも上手にこなせる可能性があるわけだ。
歩き方を工夫するだけでも散歩の楽しさがアップする
しっかり遊ぶ時間が取れない時は、歩き方に変化をつけてみるだけでもいい。坂道や階段を上り下りしたり、狭い草むらなどを歩かせてみたり。横断歩道を渡る際に「オスワリ」「マテ」をさせてみることも、犬にとっては楽しい刺激だ。
安全に走れる場所があるなら、犬と一緒に走ってみるのもおすすめだ。せっかくなら、走りながら名前を呼ぶなどして、飼い主さんに注意を向けさせる練習もしてみよう。
日本犬には、「人と走るより、自分だけで走るほうが楽しい」というタイプが多い。飼い主さんを意識しながら走らせることは、人と一緒に走ったり遊んだりする楽しさに気づかせるきっかけになるはずだ。
監修:若林匡智先生
SJDフレンズドッグクラブ チーフトレーナー。
JKC公認訓練士、OPDES公認プロフェッショナルトレーナー。アジリティのレッスンを中心に、家庭犬のしつけも行う。アジリティ競技会の審判も務め、日本代表としてアジリティの世界選手権への出場経験もあり。
https://www.sjd.co.jp/dogclub/
Text:Kumiko Noguchi
Photos:Teruhisa Tajiri
Models:Tiberius、Tsukune、Vipsania
Shi-Ba Vol.135『愛犬と一緒!だから楽しい運動の極意』より抜粋