オスワリ、マテ、オイデ……。日常何気なく使っている愛犬への「声かけ」。けれど、うまくいかないこともある。
「うちの子は言うこと聞かない!」と思う前に、その声かけ方法が正しいのか、一度見直してみませんか?
日常編
普段何気なく愛犬に対して話していることが、いつのまにか「声かけ」になっている場合も。日常の愛犬との会話を一度見直してみることも大切だ。
【OK】「マテ」「オフ」などの声かけを教える
【NG】「コラ!」「ダメ!」と大きな声で愛犬を叱る
やめさせたい時こそ飼い主が落ち着いて
愛犬の行動を止めたい時、「ダメ!」と大声を出しても、その大声に驚いて動きが止まっただけかも。「マテ」「オフ」などの声をかけて、応じたらいいことがあると教えるのがベター。いたずらしない環境を整えることも大事。
【OK】特に何も言わずしれっとしている
【NG】「大丈夫よ~」といつもと違うトーンでなだめ続ける
緊張を和らげたい時のなだめ声は逆効果
動物病院など、犬が緊張する場面で飼い主さんが過剰になだめたり心配すると、余計に犬は「いつもと違うんだ」と緊張や不安を増長させる。飼い主さんは「いつも通りだよ」くらいのしれっとした態度でいるほうがよい。
【OK】落ち着いていつも通りに「オイデ」と声かけ
【NG】「マテ~!」と大声で叫びながら追う
脱走した時は追いかけない
万が一の脱走時に備えてオイデを教えておくこと。すでに教えた犬なら、焦らずいつものオイデを行うのがベスト。それで来ないなら、犬の様子を見つつ背中を向けて歩き出すのも有効。ただし不確定なので、何より脱走しないよう首輪のチェックなどを怠らないこと。
【OK】いたずらしない環境を整える
【NG】いたずらした犬を、同居犬がいる空間で叱る
同居犬の前で叱るのは悪影響
多頭飼いで1匹だけの行動を叱ると、他の犬が不安を感じることも。いつもと違う飼い主さんの様子などさまざまな理由があるが、総じて群れの不安定さが犬の不安を増長させている。まず何よりも、いたずらさせない環境づくりが大切になる。
OK こちらを見てほしい時の呼び名を教える
NG 名前をとにかく連呼する
いざという時は呼び名を変える
「○○~かわいい~」など愛犬の名前を呼びすぎると、愛犬のほうも「またか」という気持ちになるため、いざという時に注意を引けなくなる。他愛ない話しかけと、注意を引きたい時の呼び名を変えておくとよい。
愛犬につい話しかけてしまう飼い主さんも多いだろう。しかし、それが犬にとってはネガティブに感じさせる声かけになっていることもある。前述したように、緊張する場面で犬に「大丈夫よ〜」と話しかけるのが逆効果になるケースも多い。
日本犬は変化に敏感な子が多いので、飼い主さんのいつもと違う様子を鋭く感じ取る。
「また、愛犬がいたずらした際、愛犬の動きを止めたい時などの声かけも注意したいところです」
多くの飼い主さんは「コラ」「ダメ」などを無意識に使っているはず。
「『コラ』や『ダメ』が〝NO〞の意味だとは思っていなくて、ただ単に大きい声を出されたから動きを止めるというケースもあります」「コラ」の後に飼い主さんが自分のほうに来てくれることが続けば、こうすれば構ってくれると学習し、いたずらが激しくなることもある。
「『オフ』でごほうびと交換したとしても、ごほうび欲しさにさらにやる犬も。なので、犬がいたずらする理由を探ることが大事です。スリッパをかじって飼い主さんの気を引きたいのか、かじり心地が好きなのか。それによって対処が変わります」
そして、犬がいたずらしないような環境を整えることも重要だ。
まとめ
声かけに応じたらいいことがあると覚えてもらうのが大事
声かけは犬との生活で欠かせない。しかし「日本犬だから言うことを聞かない」と思考を止めてしまう飼い主さんもいる。
「どうしてこちらの声かけが届かないのか、理由を考えることが大切なんです。ハンドサインを取り入れるなど、届くように環境を整えることを心がけてください。そして声かけに応じればいいことがある、と犬に覚えてもらうことも大事です。オヤツを使うことをためらう飼い主さんもいますが、上手にどんどん使ってほしいですね」
監修:長谷川あや甫 先生
家庭犬しつけインストラクター。PARA主宰。優良家庭犬普及協会常任理事。GCTジャッジ。AFC公認インストラクター。福島県を拠点に全国でしつけ指導、講演、執筆活動など、幅広い分野で活躍中。
いぬのしつけ方教室・ようちえん PARA
☎0242-85-8896
https://paradoggy.com
Text:Eriko Itoh
Photos:Mariko Nakagawa、Michio Hino、Miharu Saitoh
Shi-Ba Vol.135『「言うこと聞かない!」のその前に 声かけ見直し塾』より抜粋