【セミナールポ】動物行動学のスペシャリストであるヴィベケ・リーセ氏/「犬を飼う」ではなく「犬と暮らす」ために

ドッグトレーナーとしても世界の第一線で活躍しているヴィベケ・リーセ氏が、数年ぶりに来日! 彼女を支持し、トータルドッグサービスを提供する「イヌのトリコ」のオープン記念として2022年11月13日(日)、「Pocem Cafe Dining」にてヴィベケ・リーセ氏を招いたセミナーを開催した。

 
●ヴィベケ・リーセ氏とは?
約40年にわたり様々な動物と出会い、研究による「観察眼の鋭しさ」、「素早さ」、「正確さ」がずば抜けた動物行動学のスペシャリスト。日本では2011年から犬のボディランゲージについての解説本を5冊、DVDブックを1冊出版している。犬と人とは種の異なる動物。犬という動物を知り理解することで、彼らは今の何倍も人に信頼をよせてくれるようになる。「お互いの理解があるから愛が生まれる」それがヴィベケ氏の信念である。

 

●イヌのトリコとは?

イヌの福祉に則ったレッスンをはじめ、ドッグホテルはトレーナー24時間常駐、そのほか健康寿命を延ばすためのアドバイス、保護犬を迎えた家族の応援など、お互いがより豊かな暮らしができるようサポートしてくれる。“犬を理解し、優しく、愛情と尊敬の念をもって接することで犬との関係性を築いていく”というヴィベケ氏の考え方に基づいたレッスンでは、犬を「訓練」するのではなく、犬に人と「共生」する術を教えてくれる。

東京都渋谷区神山町6-4 ラビアンヌ第5共同ビル 地下1階101号室
☎︎03-5738-8299
https://www.inu-no-trico.com/
instagram : inu_no_trico

 

犬が語りかけてくる言葉

当日は「イヌのトリコ」のレッスン生のご家族が、愛犬をデモ犬として連れて参加した。実際に犬たちの動きを観察しながら行うセミナーに、参加者は全員釘付け。

スライドを流しながら、身振り手振りで犬たちの動きなどを表現するヴィベケ氏。

言葉を話せない犬たちも、実は人間たちにたくさんのことを語りかけている。それはいわゆるボディランゲージであり、「耳を傾けた人にしか聞こえない」とヴィベケ氏。

 

―全身を使って表現しているため、語り尽くせません。耳、目、マズル、くちびる、全身の毛、シッポ、足はもちろん、その時の環境などで意図は様々に変化します。その中でも鼻はかなりセンシティブ。犬たちは鼻を使って世界を感じているのです。

また、シッポについては体つきによって見誤られることも多い。決めつけたり、レッテルを貼らないよう注意が必要なのだ。

 

頭と体に十分な刺激を与えることの重要性

実際に参加した犬たちとコミュニケーションを取るヴィベケ氏。基本は上から覆いかぶさらないような姿勢で。

手にあるオヤツを夢中で取ろうとするボリス(オス・6ヶ月)。
―こうして座りながら接することが多いですね。

まずは「何をすればオヤツ(ごほうび)がもらえるのか」を犬自身が考え、行動するのを待ってみる。

取ろうとするのをやめた瞬間=望ましいことをした瞬間に“正解の合図”であるオヤツをあげることがポイントだ。このタイミングがとても重要。若くても、成長途中の小さな脳内で一生懸命考えている姿が印象的だ。

 

次にトライした8ヶ月の子は、ボリスとヴィベケ氏のやりとりを観察。模倣行動をとることで、最短でオヤツにありつくことができた。

このように頭と体を使う行動が犬たちの暮らしには欠かせない。犬だけでなく、すべての動物にとってそれは同じこと。このバランスが崩れてしまうと問題行動を起こす可能性が高まるとヴィベケ氏は話す。

 

その犬のメンタルキャパシティを把握する

実は1匹、輪の中心までなかなか行けない犬がいた。しかしここでヴィベケ氏は、参加者全員に囃し立てたり強制しないという協力を仰ぐ。

興味はあるようで、ヴィベケ氏の方向をしきりにチェックするムム(メス・7ヶ月)。

 

あちこちを探索しつつ、環境に慣れてきたセミナーの中盤、ついに和の中心に歩み出る。この時、シッポはやや後ろ足の間に巻き込みがちであった。

 

近づいてきたらオヤツを与えることを繰り返したところ、ムムにとってこの環境が良い印象になってきたようだ。終盤には中央でフセをして滞在するまでになった。シッポもきゅっと上に上がっている。

人間も同じように、その犬にとっての心の許容量(メンタルキャパシティ)は異なるものだ。今現在はどこまで受け入れられるのかを把握することで、その犬のできることを増やしていける。

この日、参加した全員が犬たちの成長を目の当たりにした。一朝一夕にはいかないことも多い犬との暮らしだが「犬のことはもちろん、飼い主さんは自分自身も信じることが大切」とヴィベケ氏。
このシチュエーションをコントロールできると信じる。犬を尊重すると同時に自分自身も尊重することが、犬たちとの円満な暮らしには必須なのだ。

忙しさにかまけて自分自身の気持ちを無視したり、雑に扱ってしまいがちな現代の日本人にとっても、重要なことを教えられるセミナーであった。

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