愛こそが上達への近道! うちの子のかわいさ引き出す撮影テクニック

愛犬の写真を撮った時「実物はもっとかわいいのに」なんて不満を感じたことがある方は必見! 愛犬のかわいさを存分に表現する技をご紹介します。

撮影をする前に押さえたいポイント

好きな写真をマネてみる
「こんな写真が撮りたい」と思う作品を見つけたら、構図や光の感じ、背景の選び方などをマネしてみて。

何を撮りたいか、伝えたいか
撮りたいものを撮るのが第一だけれど、「作品を見る人の目」を少し意識すると、より思いが伝わる1枚に。

犬の暮らす世界を知る
主役の犬だけでなく、まわりのものにも目を向けて。犬の背景は、犬が暮らす世界を作るものでもあります。

目にピントがなくてもいい!

最近のカメラやスマホは被写体の顔や目にピントが合いやすくなっているので、犬の「いい顔」をしっかり残す写真が撮りやすくなっています。でも、「目にピント」にこだわる必要はありません。耳でも鼻でも、好きなパーツにピントを合わせてみると、いつもとは味わいの違う1枚に仕上がります。

ピントあり

写真を見る人と犬の視線が合い、「犬が自分を見つめてくれている」と感じられるのが魅力。

ピントなし

口元にピントを合わせたことで、うれしそうに木の枝をかじる口の動きや幸せな雰囲気が伝わるのでは。

 

カメラの位置を変える

同じ場面でも、どの位置から撮るか、どの範囲を切り取るかで仕上がりの雰囲気が大きく変わります。カメラを引いて背景も入れると「場の雰囲気」が伝わります。反対に、犬にぐっと寄ると、微妙な表情や毛の質感などが見えてきます。カメラの向きや高さを変えることで、光の感じも変化します。

全体を写す

室内の様子やリラックスした犬の姿勢がわかることで、普段の暮らしぶりやゆったりした時間の流れなどが伝わってきます。

犬に寄る

見せたいのは、ウトウトしている犬の表情。後ろから当たる光で耳などの毛がふんわり見えるのもきれい。

 

犬の目線はなくてもいい!

カメラ目線の写真は、「強い」印象を与えます。犬が見る人に何かを訴えているようで、ストレートに「かわいい」「面白い」などと思わせます。それに対して目線を外した写真は、犬の目線の先を想像させます。見る人によって、感じ方が違ってくる面白さがあります。

目線あり

「遊ぼう」「オヤツちょうだい」など、犬が自分に話しかけてくれているよう。犬と自分の世界に浸れます。

目線なし

遠くを見る犬の視線を追いたくなります。並んで同じほうを眺める人と犬の間の絆も感じられるような……。

 

犬の写真を撮る時に忘れないようにしたいのが、犬は写真を撮ってほしいわけではない、ということ。犬には「かわいく撮ってね!」なんて欲もないし、撮った写真を見る楽しみもないのですから。

カメラやスマホのモニター越しに犬を見ていると、つい「いい写真を撮らなくちゃ!」なんて思ってしまうことがあります。でも、そんな気持ちは犬にプレッシャーを与えるだけ。犬にとって「撮られること」が負担になったら本末転倒です。だから、北田さんの撮影は常に犬ファースト。

「犬の魅力が伝わる〝いい写真〞は、犬と楽しく暮らしてこそ生まれるものだと思うのです」

 

カメラの向きを考える

背景を生かして撮影する場合、構図の縦・横で写真の印象を変えることがあります。奥行きを感じさせたい場合は縦、広がりを表現したい場合は横がおすすめです。

例えば花畑で犬を撮る場合、タテ構図は「花畑にいる犬」。あくまで犬が主役です。これに対してヨコ構図は「犬のいる花畑」。画面を構成する要素のひとつとして犬を見せることになります。

タテ構図

犬の後ろに続く道を画面に入れることで、凹凸のある地形と犬が遠くから走ってきたことが伝わります。

ヨコ構図

犬の姿を小さくし、左右に伸びる砂浜と海の広さを強調。犬の前後にまだまだ砂浜が続く印象に。

 

犬は動き回るし、表情もくるくる変わります。素敵な一瞬を逃さないために必要なのは、日頃から犬をよく見ること! と北田さん。

「動きを追い、視線をたどることが習慣になると、犬の気分やしたいことがなんとなくわかってきます。一緒に過ごしている時、『あくびをしそう』『柴ドリルをするな』なんてピンとくるから、サッとカメラに手を伸ばせる。そして、残しておきたい瞬間を押さえることができるんです」

 

愛犬が夢中な時を狙う!

名前を呼んでカメラのほうを向いた時に撮る写真は、かわいいけれど「見慣れたキメ顔」になってしまうことが。自然な表情を撮るなら、犬が夢中になっている時を狙うのがおすすめです。カメラを意識せずにお気に入りのオモチャなどで遊んでいる時の表情やポーズは、最高にかわいい!

散歩中に見つけた「いい感じの棒」に夢中の北田さんの愛犬。目線やキメポーズがなくても、全身から「楽しい!」があふれてる!

 

モノと一緒に撮る

画面に犬プラス「何か」を入れることで、初めて表現できるものもあります。犬がふわふわの毛布にもぐって気持ちよさそうにしていれば、「寒い季節なのかな?」と思うはず。また、犬がかじっているボールが変形していれば、噛む力の強さを感じられるでしょう。写真の主役である犬以外のものからも、見る人は多くのことを感じ取っているのです。

頭を乗せたぬいぐるみのへこみ具合いや犬の毛のつぶれ方から、犬の頭の重みや手触りが伝わってきます。

 

手前のモノをぼかす

ちょっとひと工夫して撮影するなら、犬の手前に何かを置いてみましょう。ピントは、奥にいる犬に。手前のものをぼかすことで画面に奥行きが加わり、雰囲気のある写真に仕上がります。ふわっと写り込んだものを「これ、なんだっけ?」と考えることは、犬との思い出をたどるきっかけにもなります。

高い木

高い位置から、木の下で昼寝する犬をパシャ。手前に葉を入れたことで、木の高さが感じられます。

鉢植えの植物

小さな鉢植えを左手に持って撮影。カメラと犬の距離感が伝わり、画面が立体的に。

 

連写機能を活用する

動いている犬を撮る時、カメラの連写機能を使うのもおすすめ。犬の動きは速いので、普通に撮ろうとしても追いつけないからです。もちろんブレているものもありますが、肉眼では見ることができない一瞬のいい表情や絶妙なポーズをとらえることができた時は、少し得したような気分になるはずです。

目が覚めて、伸びからの柴ドリル。数秒の動きを連写してみると、ドリル中の耳や頬ってこんな風に揺れてるのか! なんて新鮮な発見も。

雪が降った後にはしゃぐ犬。顔が切れていても、一緒に写真を撮りたくて「柴ダルマ」を作ったな、なんて幸せな記憶につながる大切な1枚。

どの瞬間の犬もかわいい……
撮らせてくれて、ありがとう!

北田さんは犬と暮らし始めて、今年で10年目。ほぼ毎日、愛犬の写真を撮っています。そして、撮れば撮るほど犬のことが好きになっているそう。

「マンガ『ちびまる子ちゃん』に出てくる〝たまちゃんのお父さん〞は、いつも首からカメラをぶら下げて娘の写真を撮りまくっていますよね。私には、お父さんの気持ちがよくわかる! だって、目の前にいる犬は最高にかわいいから。私にとっては、どの瞬間の犬もたまらない。笑顔もブサ顔も、元気な動きもだらけたポーズも、影も気配も、すべてを残しておきたい! と思うんです」

撮る瞬間だけでなく、見直して楽しめるのも写真の魅力。「今」の写真が「思い出」の写真に変わっていきます。見る側の思いが加わり、同じ写真の見え方が変わることも。だから、犬の写真に「ボツ」は1枚もないと言います。ピントが合っていなくても、顔が写っていなくても。犬と過ごした時間の断片は、皆さんの宝物になるはずです。

Text:Kumiko Noguchi
取材・写真提供:北田瑞絵さん
X(旧Twitter)で愛犬“犬”の写真を投稿する「@inubot」を運営する写真家。犬との日々を綴るフォトエッセイ「inubot回覧板」をESSE onlineで連載。

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