SNSに投稿したい、記念に残しておきたいなど、愛犬の写真を撮影する機会は少なくない。撮影にあたっての準備や心構えなどを理解して、楽しく撮影に挑みたい。
日本犬と写真撮影の相性って?
初めての場所や環境が苦手な犬は、日本犬には多いと言われている。そのため、写真撮影の現場が初めての場合、いつもどおり動けない犬も少なくない。もちろん個体差によって違いはある。
また、これまでの撮影で嫌な思いをしたのであれば、当然だが、写真撮影に対しての印象が悪くなっている場合もある。よい印象を持たせることがとにかく大切なのだ。
犬の準備
少しでも愛犬のいいところを撮りたい!そんなベストショットを狙うには、犬自身も準備が重要だ。
1.撮影する場所や環境に慣らしておく
自宅やよく知っている散歩道、いつも行く公園なら大丈夫だけど、愛犬が新しい場所が苦手とわかっていたら慣らしておきたい。どのような環境でも落ち着いていられるようにしておくことがまずは大切。
2.一眼レフカメラやストロボに慣らしておく
スマートフォンは日頃から見慣れている犬も多いが、大きなレンズのカメラは飼い主が持っている状態を見せて慣らしておきたい。ストロボの光が苦手な場合もあるのでこちらも犬の様子を見て慣らしておこう。
人の準備
飼い主側も当然、準備が必要。撮影成功のカギを握ると言っても過言ではない。心得ておこう!
愛犬の性格をしっかり把握しておく
初めての場所や他の人、犬など、どんなものが苦手なのか。例えば怖がりで、女性は好きだけど男性は苦手など。日頃から愛犬の様子をよく見てどんな性格でどんなことが苦手なのかを把握しておこう。
必要な合図を教えておく
撮影時に「マテ」などがなかなかできないということも多い。まずはきちんと教えられているかが大前提となる。犬が理解できるように教えておくことはもちろん、初めての場所でも合図を出されたらきちんとできるようにしておきたいもの。
リスクがあることも考え安全を確保する
例えば高い場所に犬を座らせて撮影しようとすれば、うっかり飛び降りて怪我をさせてしまうこともあり得る。必ず安全な場所を選び、リードは命綱と考えよう。また周りに迷惑をかけないようにすることも忘れずに。
オヤツの上手な使い方を知る
撮影ではオヤツ誘導が多い。好みのオヤツのランクを把握し、いざという時は特別なオヤツを使えるようにしよう。また誘導時、タイミングよくごほうびがあげられるよう細かくして持つように。
これまで紹介したように愛犬側も飼い主側もそれぞれの準備が整ったら、いざ撮影! となる。そして、ここでも飼い主の技術と知識が大きく影響してくることを忘れずに。
犬にとってみれば撮影されて、いくらいいショットが撮れたとしても「おお、いい感じに撮れているじゃん」と喜ぶわけではない。でも大好きな飼い主が喜んでくれて、おいしいオヤツがもらえるなど、楽しくてよい印象を持っていれば、コミュニケーションのひとつになるはず。
そのためには、くれぐれも無理がないようにすることが大切だ。
タイミングよくいい写真が撮れればいいが、欲しい写真が撮れていないからと飼い主だけが夢中になりすぎてしまわないこと。しつこく続けられたなど、撮影で嫌な思いをしてしまうと次からはカメラのほうを見てくれない、なんてことも起こりかねない。
また、プロに撮ってもらう撮影会などでは、普段と違う状況に緊張している場合が多い。少しでも緊張を和らげてあげるためにも、次に挙げる愛犬に関する情報を伝えるように心がけておこう。
プロなど他人に撮ってもらうコツ
余計なストレスがないよう苦手なことも忘れず伝えて
大きな音や声、男性など、苦手なことも伝えておけば、それに配慮してもらえることで、愛犬のストレスが少しでも軽減される。
大好きなオヤツの準備は必須!好きな言葉もあれば伝える
愛犬のモチベーションが上がるオヤツや、好きなオモチャを持参すること。また「ゴハン~」など愛犬が反応する好きな言葉も伝えよう。
指示を出す際どんな言葉を使っているのかを具体的に
例えば、座らせる際の指示の言葉は「オスワリ」なのか「スワレ」なのか。飼い主さんが普段どの言葉を使っているかも伝えること。
愛犬ができることをしっかり伝えておく
「フセはできないけれど、オスワリとマテはできます」というように、愛犬ができることをきちんと伝えておくと撮影がスムーズに。
飼い主さん必携の技術と知識
アイコンタクトを日頃から心がけているか
カメラ目線が欲しい時、愛犬の名前に反応してもらうには“名前を呼ばれたらいいことがある”と教えておくことだ。日常の中で愛犬の名前を呼んだ後だけでなく、目が合ったらほめてごほうびをあげるなどして、アイコンタクトが取れるようにしておきたい。
愛犬がリラックスしている時に声をかけるのもよい。反応してくれて当たり前ではなく、ほめてあげることも忘れずに。
アイコンタクトを含め、飼い主とのコミュニケーションが日頃から取れていることも上手に撮影する上で大切なこと。
ごほうびのタイミングは合っているか
例えばオスワリさせている最中に立ち上がった際、慌ててオヤツで誘導し、オスワリさせてごほうびを与えていたら、立ち上がったことでごほうびがもらえると勘違いする場合がある。座り続けている時に与えるなど、ごほうびを与えるタイミングに気をつけて。
オスワリやマテなど、合図したことがしっかりできている状態の時にごほうびをあげること。
ダラダラ続けず楽しいうちに終えているか
トレーニングなどでも、犬の集中が続くのはほんのわずか。5分も続けると集中力が落ちてくる。それは撮影も同じ。1回5分程度で終わらせるようタイマーをかける、こまめな休憩を入れるなどの工夫を。嫌な思いをさせないためには楽しいうちに切り上げることだ。
撮影時に協力してくれる人がいる場合
家族や友人に協力してもらい、カメラを構える人とごほうびを見せてあげる人とそれぞれ役割分担するというのもひとつの方法だ。犬からしてみたら、ごほうびを見ていたつもりがいつの間にか写真も撮られていたということになる。
ごほうびを食べない時は食生活を確認
緊張時はごほうびを食べない場合もあるが、普段から食べない時にはまず健康状態を確認。食べずに痩せているなら必ず動物病院で健康チェックを。健康なら食生活を見直してみよう。ゴハンが置きっぱなし、オヤツを家族からよくもらっているなどお腹が空いていないことも考えられる。
人も芝居をする時、準備や練習をしっかり行ってから舞台本番へと臨む。愛犬の撮影もそれと同じと言える。撮影という本番に向けて、準備や慣らしなどの練習を重ねることで成果は違ってくるはずだ。
そのためには、撮影に必要となる動作ができるように的確な指示を教えること。また日頃から愛犬とのコミュニケーションを取って絆を深めておくことも欠かせない。
そして、撮影時は愛犬の様子をよく見ておき「ここまででやめておこう」という妥協点を見極めることも重要になってくる。犬も飼い主も、お互いに楽しい時間が過ごせる撮影になるよう工夫してみよう。
ポイントおさらい!
・愛犬が理解できるように的確な指示を教えておく
・愛犬の状態に合わせた妥協点を見極めること
Text:Hiromi Mizoguchi Photos:Minako Okuyama、Miharu Saitoh
監修:長谷川あや甫先生
家庭犬しつけインストラクター
PARA主宰。優良家庭犬普及協会常任理事。GCTジャッジ。AFC公認インストラクター。福島県を拠点に全国でしつけ指導、講演、執筆活動など、幅広い分野で活躍中。
いぬのしつけ方教室・ようちえん PARA(パラ)
☎0242-85-8896
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