見た目の変化(10歳~)
体毛のツヤや毛量が減る
人間も加齢とともに毛にツヤがなくなるのと同じ。現代の犬は昔に比べ、室内飼いが多いからか、加齢によって毛量が減ったり、はげることは少ない。
もし体をかいたりして毛量が減ったら、その部分をマッサージして、血流を巡らせるのがおすすめ。それ以外の理由ではげてきたら、何かしら病気の可能性もあるので動物病院で診察してもらおう。
対 策
体を頻繁にかゆがる
皮膚トラブルと無縁だった犬でも、肌の乾燥などが起きてくる。皮膚がパサパサしたりハリがなくなったり、その結果体がかゆくなり頻繁にかくようにも。かゆみは不快に感じているはずだ。
体をかき続けると、体毛が薄くなり、傷になることもある。若い頃よりも頻繁にケアをしてあげよう。年齢とともに皮膚の血流が悪くなってしまうのも原因。
対 策
頭やシッポが下がり気味になる
広背筋中部や下部などの背骨周辺の筋肉が衰えてくる。その結果、背骨が曲がってきて、頭が下がり気味になる。頭が下がったままだと、ゴハンを食べづらくなることも。
食欲が減る原因にもなる。また、後ろ足の筋肉が衰えることで、シッポも下がる。背骨が曲がったまま生活していると、変形性脊髄症になる可能性もあるので早めに対処したい。
対 策
鼻が渇きやすくなる
年齢とともに代謝が落ちたり、分泌物の量が減り、鼻が乾燥しがちになることも。ひび割れや、出血につながるケースがある。
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極端に太ってきた
年をとれば代謝が落ちて太りやすくなるが、運動不足も考えられる。歩く速さはゆっくりでいいので、長めの散歩に出かけよう。また極端に太った場合、むくみの可能性が。
むくむと太ったように見えるし、実際に体重が1kgほど増えることも。血の巡りが悪くなることが原因と考えられる。冷房による冷えなどにも注意しよう。
対 策
痩せてきた
15歳を超えると胃の消化機能が低下する。食べる量が減るだけではなく、栄養を吸収しづらくなり、痩せてしまうことも。また運動量が減り、筋肉が衰えたことで痩せて見えることがある。
極端に体重が減った場合は、病気が隠れている可能性も。痩せたと感じたら自己判断ではなく、獣医師に相談しよう。
対 策
犬と人間の加齢による変化は、共通しているものが多いように思う。乾燥肌になったり、頑固になったり、運動が億劫になったり。対応策も似ているものがある。例えば眠り。年を重ねれば、眠りが浅くなり、長時間の睡眠ができなくなる。
「そんな場合は、昼間にたっぷり動いて疲れさせてあげましょう。また、温かいタオルなどで、寝る前にお腹や、体を温めてあげるだけでも、睡眠の質は上がります」と横山先生。
変化への向き合い方に答えはない。犬の性格や状態によって、いろいろ試してみるべきだ。すべてが当てはまるわけではないが、人間の場合にどうするのかを考えるのも、ヒントになるかもしれない。
行動の変化(10歳~)
散歩中にフラフラするようになる
筋肉の衰えにより、後ろ足の幅が狭くなり、歩きづらくなる。バランスがとりづらくなり、フラフラしてしまうのだ。また膝などの関節が硬くなると、全身を振って関節を使わずに歩くようになる。
そうなると体がふらつき、不安定な歩行に。他にも脳の病気の可能性もあるので、様子がおかしい場合はすぐに動物病院へ。
対 策
坂や階段を登りたがらない
人間も、年をとれば階段を登るのがきつくなる。犬も筋力が衰えたり関節が痛くなり、階段や坂を登らなくなるのだ。日本犬は繊細な性格の犬が多いので、階段で嫌な思いをすると、近寄らなくなる場合も。
階段を登った時に足が痛かったなど、些細だと思えることでも気にする場合がある。
対 策
【column】車イスの利点は他にもたくさん!
犬用車イスを使用する効果は大きい。器具を使ってでも歩くことで、年齢とともに現れる様々な不調を防ぐことができる。適度な運動は膀胱炎、便秘、夜鳴きなどを防げるし、血流の改善にもつながる。また、日本犬はプライドが高い犬種。自分の意志で自由に歩けなくなると、自信を失うことがある。「まだ歩ける! 行きたいところに行ける!」という気持ちが若々しさの源になる。
丸まったりへそ天で眠れない
関節がかたくなったり痛むようになると、丸まったりへそ天ができなくなる。犬は丸くなって眠ると安心する動物。この態勢ができなくなると、ストレスを感じるかもしれない。
そういった意味でも関節の健康を守ることは、とても大切だ。関節炎になると完治は難しいので、若い頃から痛めないように努めたい。
対 策
聞こえているのに起き上がらない
年齢とともに聴力が衰えて、聞こえていない場合もあるが、認知症になっている可能性もある。
対 策
できていたことをやらなくなる
人間も年とともに、億劫なことをやらなくなりがち。犬もこれまでできていたコマンドをやらなくなるケースも。この原因のひとつとして、脳の前頭葉の萎縮により、感情のコントロールが以前よりもできなくなることが挙げられる。
悲観的にとらえるのではなく、自分の気持ちに素直に生きるようになっているのだと、ポジティブな言葉をかけてあげよう。そうすると、愛犬も気分よく暮らせるはず。
対 策
監修:横山恵理先生
多くのシニア犬を診察し、飼い主の不安に寄り添いながら具体的な介護方法をアドバイス。中医学を取り入れた治療も実践している。
キュティア老犬クリニック
神奈川県横浜市青葉区美しが丘4-7-28メゾンドアミ1F
☎045-903-1334
https://cutia.jp
Text:Daizo Okauchi Illustration:Yuko Yamada
Shi-Ba Vol.130「年齢による変化に必要な助けは犬それぞれ 7歳以上だって”シニア“でまとめるな!」より抜粋