必要な助けは犬それぞれ 年齢による変化【10歳以上 前編】

見た目の変化(10歳~)

体毛のツヤや毛量が減る

人間も加齢とともに毛にツヤがなくなるのと同じ。現代の犬は昔に比べ、室内飼いが多いからか、加齢によって毛量が減ったり、はげることは少ない。
もし体をかいたりして毛量が減ったら、その部分をマッサージして、血流を巡らせるのがおすすめ。それ以外の理由ではげてきたら、何かしら病気の可能性もあるので動物病院で診察してもらおう。

対 策

体毛のツヤを維持するためにはブラッシングが大切。セラミド入りの保湿スプレーを使ってあげよう。皮膚が乾燥していると、ツヤにも影響する。また、食事に気をつけるのもよい。たんぱく質やビタミン、ミネラルを含む栄養バランスがとれる食事は、毛ヅヤの維持だけではなく、皮膚の乾燥にも効果的。若い頃から栄養のバランスを考えてあげよう。

 

体を頻繁にかゆがる

皮膚トラブルと無縁だった犬でも、肌の乾燥などが起きてくる。皮膚がパサパサしたりハリがなくなったり、その結果体がかゆくなり頻繁にかくようにも。かゆみは不快に感じているはずだ。
体をかき続けると、体毛が薄くなり、傷になることもある。若い頃よりも頻繁にケアをしてあげよう。年齢とともに皮膚の血流が悪くなってしまうのも原因。

対 策

保湿とブラッシングが大切。皮膚の乾燥はトラブルにつながりやすい。セラミド入りのスプレーを使おう。ペットショップでも販売されている。特に秋から冬にかけては、乾燥をしやすいので注意。フケが多い、皮膚にほんのり赤みがある、ハリがないといった状態ならば乾燥のサイン。この年齢になれば、毎日ケアしてあげよう。

 

頭やシッポが下がり気味になる

広背筋中部や下部などの背骨周辺の筋肉が衰えてくる。その結果、背骨が曲がってきて、頭が下がり気味になる。頭が下がったままだと、ゴハンを食べづらくなることも。
食欲が減る原因にもなる。また、後ろ足の筋肉が衰えることで、シッポも下がる。背骨が曲がったまま生活していると、変形性脊髄症になる可能性もあるので早めに対処したい。

対 策

散歩やジョギングなどの適切な運動で筋肉を維持すると同時に、マッサージもしてあげよう。背骨の両側の筋肉をほぐすのが効果的。1段でも2段でもよいので、階段を登って筋肉をつけるのもおすすめ。下りは怪我をしやすいので気をつけて。ストレッチは独断でやると危険。獣医師など専門家に相談しよう。

 

鼻が渇きやすくなる

年齢とともに代謝が落ちたり、分泌物の量が減り、鼻が乾燥しがちになることも。ひび割れや、出血につながるケースがある。

対s 買う

ひび割れや出血には痛みが伴う。動物病院で、保湿剤をもらおう。病気が原因の可能性もあるので、相談してみて。

 

極端に太ってきた

年をとれば代謝が落ちて太りやすくなるが、運動不足も考えられる。歩く速さはゆっくりでいいので、長めの散歩に出かけよう。また極端に太った場合、むくみの可能性が。
むくむと太ったように見えるし、実際に体重が1kgほど増えることも。血の巡りが悪くなることが原因と考えられる。冷房による冷えなどにも注意しよう。

対 策

太ったと感じた時は、まず原因を探そう。運動不足か、あるいはむくみか。むくみの場合、特に胸や肩まわりがぶよぶよするので触ってみよう。室温を低くしすぎないように気をつけたり、マッサージをして血流をよくする。むくみが原因なのにゴハンを減らすと、筋肉が衰えてしまい、老化が進んでしまう。寝たきりにつながることもあるので、注意しよう。

 

痩せてきた

15歳を超えると胃の消化機能が低下する。食べる量が減るだけではなく、栄養を吸収しづらくなり、痩せてしまうことも。また運動量が減り、筋肉が衰えたことで痩せて見えることがある。
極端に体重が減った場合は、病気が隠れている可能性も。痩せたと感じたら自己判断ではなく、獣医師に相談しよう。

対 策

痩せた原因を知ることが大事。年をとると、肋骨の下部の筋肉が落ちる。人間でいうみぞおちの横当たり。若い頃から、ブラッシングの時などにその部分を触り、肉づきを確認しておく。痩せた原因が筋肉の衰えかどうかの目安になる。フードが原因であれば、シニア犬用のフードを小分けにして与え、消化と吸収を助ける工夫を。

犬と人間の加齢による変化は、共通しているものが多いように思う。乾燥肌になったり、頑固になったり、運動が億劫になったり。対応策も似ているものがある。例えば眠り。年を重ねれば、眠りが浅くなり、長時間の睡眠ができなくなる。

「そんな場合は、昼間にたっぷり動いて疲れさせてあげましょう。また、温かいタオルなどで、寝る前にお腹や、体を温めてあげるだけでも、睡眠の質は上がります」と横山先生。

変化への向き合い方に答えはない。犬の性格や状態によって、いろいろ試してみるべきだ。すべてが当てはまるわけではないが、人間の場合にどうするのかを考えるのも、ヒントになるかもしれない。

行動の変化(10歳~)

散歩中にフラフラするようになる

筋肉の衰えにより、後ろ足の幅が狭くなり、歩きづらくなる。バランスがとりづらくなり、フラフラしてしまうのだ。また膝などの関節が硬くなると、全身を振って関節を使わずに歩くようになる。
そうなると体がふらつき、不安定な歩行に。他にも脳の病気の可能性もあるので、様子がおかしい場合はすぐに動物病院へ。

対 策

ふらつきだした時点で、胸を支え歩行をサポートする、犬用車イスを作ってあげたい。ふらつきを確認した時点で作るのをすすめる。できるだけ若いうちに、慣れさせてあげたほうが良いからだ。車イスなら膝の関節をしっかり使え、筋肉を維持できる。散歩だけでも筋トレになり、ふらつかずに歩けるようになることも。

 

坂や階段を登りたがらない

人間も、年をとれば階段を登るのがきつくなる。犬も筋力が衰えたり関節が痛くなり、階段や坂を登らなくなるのだ。日本犬は繊細な性格の犬が多いので、階段で嫌な思いをすると、近寄らなくなる場合も。
階段を登った時に足が痛かったなど、些細だと思えることでも気にする場合がある。

対 策

寝たきりを防ぐために、筋肉を維持することはとても大切。坂や階段を登ると、膝やお尻の筋肉を使うので、筋力の維持に効果的。無理のない範囲で大丈夫。散歩中に階段や坂を登って、疲れた様子であれば、抱っこして家に戻ってもよい。この年齢になると特に、階段を降りることで、膝を痛める場合もあるので注意して。

【column】車イスの利点は他にもたくさん!
犬用車イスを使用する効果は大きい。器具を使ってでも歩くことで、年齢とともに現れる様々な不調を防ぐことができる。適度な運動は膀胱炎、便秘、夜鳴きなどを防げるし、血流の改善にもつながる。また、日本犬はプライドが高い犬種。自分の意志で自由に歩けなくなると、自信を失うことがある。「まだ歩ける! 行きたいところに行ける!」という気持ちが若々しさの源になる。

 

丸まったりへそ天で眠れない

関節がかたくなったり痛むようになると、丸まったりへそ天ができなくなる。犬は丸くなって眠ると安心する動物。この態勢ができなくなると、ストレスを感じるかもしれない。
そういった意味でも関節の健康を守ることは、とても大切だ。関節炎になると完治は難しいので、若い頃から痛めないように努めたい。

対 策

若いうちに運動をよくしておくと、関節に筋肉がつくので、年齢を重ねてかたくなったり、痛むのを防ぐことができる。散歩やジョギング、ダッシュなど運動をさせておくことでトラブルが起きにくくなる。また室内がフローリングなどで滑りやすければ、関節を痛めやすい。生活環境の整備を意識的に行おう。

 

聞こえているのに起き上がらない

年齢とともに聴力が衰えて、聞こえていない場合もあるが、認知症になっている可能性もある。

対 策

まずは獣医師の指示を仰ごう。普段の生活では、認知症に効くサプリを取り入れたり、できるだけ不安を感じさせないように。

 

できていたことをやらなくなる

人間も年とともに、億劫なことをやらなくなりがち。犬もこれまでできていたコマンドをやらなくなるケースも。この原因のひとつとして、脳の前頭葉の萎縮により、感情のコントロールが以前よりもできなくなることが挙げられる。
悲観的にとらえるのではなく、自分の気持ちに素直に生きるようになっているのだと、ポジティブな言葉をかけてあげよう。そうすると、愛犬も気分よく暮らせるはず。

対 策

健康を損なったり害がないのであれば、愛犬がやりたくないことはやらせなくてもかまわない。楽しいことを増やしたほうが、犬の健康にとってもよい。犬は人間のライフスタイルに合わせて暮らしている。わがままになったのではなく、これまで頑張って付き合ってくれていたのだ。歯磨きやブラッシングなどのケアを嫌がる場合は、ごほうびを与えながら。機嫌がいい時にだけするようにしよう。

 

監修:横山恵理先生
多くのシニア犬を診察し、飼い主の不安に寄り添いながら具体的な介護方法をアドバイス。中医学を取り入れた治療も実践している。

キュティア老犬クリニック
神奈川県横浜市青葉区美しが丘4-7-28メゾンドアミ1F
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Text:Daizo Okauchi Illustration:Yuko Yamada

Shi-Ba Vol.130「年齢による変化に必要な助けは犬それぞれ 7歳以上だって”シニア“でまとめるな!」より抜粋

-年齢, 柴犬