動物病院のトラブル回避に限らず、トレーニングしておくと安心なことを紹介!
▶︎病院トラブルイザ!という時① │ 待合室でのトラブル回避
▶︎病院トラブルイザ!という時② │ 診察室でのトラブル回避
抱っこ
診察台に乗せたり、待合室内での移動時も抱っこができると役立つ。普段から少しずつ慣らしておきたい。
まずは体を撫でられることに慣れさせておく。次に抱っこできる位置に犬を寄せて、体を触りながら、抱っこする準備に慣れさせる。
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上の写真のように横にいる状況に慣れたら、犬をさっと抱き上げる。最初のうちはすぐに下ろし、少しずつ抱っこの時間を延ばしていく。
安心できる場所
クレートが安心できる場所になっていれば待合室での待機中にも使える。犬が自発的に入るよう段階を踏みながら教えよう。
犬に見られないよう、中にオヤツを散りばめ、犬が自分から入るのを待つ。1日2回程続けていくとオヤツが入っていない時も中に入り休息するように。
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自発的に入り休息するようになったら、扉の動きに慣らす。扉を閉める方向へゆっくり動かしながら、扉越しにオヤツを与える。開ける時は与えない。
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扉の動きに慣れたら扉を閉め、外からオヤツを入れて扉を閉めた状態に慣らす。クレートにいるといいことがあると覚えれば、安心できる場所になる。
マナーベルト・パンツ
マーキングや排泄をする可能性がありそうなら、マナーベルトやパンツの着用にあらかじめ慣らしておきたい。
マナーパンツはシッポを通す必要があるため、まずシッポに触られることに慣らす。ひとりがシッポを触ったら、もうひとりがオヤツを与える。これを繰り返す。
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次の段階は、シッポだけを通してごほうび、を繰り返す。シッポを通すことに犬が慣れてきたら、マナーパンツをしっかり着させる。
オイデ
人が後ろに下がると犬はついてくることが多い。確実についてくるなら「オイデ」と言ってから後ろに下がり、足元まで犬を呼び込む。
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手に握ったごほうびを見せないようにして、犬を足元まで呼び込み、犬が足元まで来て首輪をつかむことができたら、ほめて握っていたごほうびを与える。
※首輪をつかまれることが嫌な犬は先に慣れさせておく。
口輪
怖がりや警戒心の強さから咬みつきの可能性がある場合、スムーズな診察のために口輪に慣らしておくことも大切。
中で咀嚼しやすいようオヤツは柔らかくて細かいものを用意。手の平をお皿がわりにして、鼻先が入れば食べられるようにする。
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犬が口輪に鼻先を入れたら、オヤツを追加で与える。口輪の中に鼻先を入れている時間を延ばす。鼻先が口輪に入っているといいことがあると教える。
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口輪の中に鼻先を入れることに慣れてきたら、ヒモを後ろに回すことに慣れさせる。慣れてきたら留める、と段階を経ていく。
エリザベスカラー
咬みつき防止対策にエリザベスカラーを着ける機会もある。いざという時のために慣らしておこう。
まずはエリザベスカラー自体に慣らすことから始める。犬の近くでエリザベスカラーを持っている状態で、オヤツを与える。
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上から被せられるのを苦手な犬が多いので、写真のように顎下にあてた状態でオヤツを与え、犬が自分から頭を通すことに慣れさせていく。
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上の段階に慣れたら、カラーを巻くという行為に慣れさせる。この時はまだボタンを留めずに、カラーを巻いたらオヤツを与える。
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ボタンを留める音を嫌がるなら音を近くで鳴らし、オヤツを与えて音に慣れさせる。音が大丈夫ならボタンを留めて、着けていたらいいことがある、と覚えさせる。
起こり得ることを想定し万が一の時は冷静に対処を
何らかのトラブルが起きた時に、とにかく飼い主は慌てずに冷静に対処することが大切だ。
「速やかに対処しなければいけない場面もありますが、飼い主さんが焦ってパニックになってしまうと、犬もパニックになってしまいます」
また、日頃から自分の犬の性格を把握しておくことも欠かせない。例えば、他の犬が苦手、聞き慣れない音に敏感に反応してしまう、など。これらを把握しておけば、起こり得るトラブルがある程度は想定できるのだ。そうすれば、それを防ぐためにはどのような対策をしておけばいいのかもわかってくる。
「そして最初にも話したように、飼い主さんが愛犬をしっかり管理する(守る)。きちんとコントロールできるようになっておくことが、トラブルを回避することに繋がります」
そのためには日頃から信頼関係を育むことはもちろん、愛犬にとって「この人といると安心する」と思われる存在になっておくことも必要だ。愛犬の健康を守るために欠かせない場所である動物病院。トラブルを起こさないためにも、飼い主の心構えが大切だということを忘れずに。
こんな時どうすればイイ!?
Q.長めの散歩をして疲れさせてから連れて行ってもいいの?
A.犬の満足度をあげることになるのでよいことだと思います
動物病院へ行くまでに長めの散歩をしておくことは、紹介したようにマーキング対策にもなります。また疲れさせることよりも、十分な散歩で犬の気持ちが満たされた状態になることがポイントです。すると、満足していない状態に比べると動物病院で不快情動が起きにくくなります。動物病院はどうしても犬にとっては嫌なことをされる機会が多く、行く価値を理解しにくい場所です。ですから行く前に少しでも満足度を上げておくことも大切です。
Q.他の犬に咬みついてしまったらどうやって引き離したらいいの?
A.水をかける、大きな音を立てるなどしてみましょう
動物病院には、どこかに痛みがあって機嫌が悪かったり、いつもと違う状況に緊張していたり、いろいろな犬がいます。ですから大前提として、他の犬と接触させないのがトラブル回避の鉄則です。それでももし、ケンカになってどちらかの犬が咬みついて放さない状態になってしまったら「水をかける」「大きな音を立てる」などしてください。咬んでいた口を放したら、すぐにリードを引いて引き離しましょう。くれぐれも犬同士の間に入って止めようとしないで。
Q.他の人に触られるのが苦手なので保定を飼い主がしてはダメですか?
A.獣医師やスタッフに相談してみて指示に従いましょう
飼い主さんなら体を触られても大丈夫だけど、他の人に触られるのは苦手という犬もいます。診察台に乗ると落ち着かなくて、暴れてしまうようだと診察に支障が出てしまいます。動物病院によって方針には違いがありますので、保定は必ず病院側が行う場合もあります。もし気になるようであれば、「保定をさせていただけないですか」と相談してみるといいでしょう。スムーズに診察を行うために獣医師やスタッフの指示に従うことが大切です。
監修:堀井隆行先生
ヤマザキ動物看護大学動物看護学部動物人間関係学科講師。愛玩動物看護師。動物のストレス管理や行動修正を研究し、講演活動や動物病院での行動カウンセリングも行う。共著に『知りたい! 考えてみたい! どうぶつとの暮らし』(駿河台出版社)。
Text:Hiromi Mizoguchi
Photos:Miharu Saitoh、Minako Okuyama、Teruhisa Tajiri
Illustration:Mika Fujisawa
Shi-Ba Vol.131『愛犬の安全のために対処法と対策を身につけて 病院トラブルイザ!という時』より抜粋