愛犬の歩き方がおかしいと思ったら【膝蓋骨脱臼には要注意②】

小型犬に多く見られる膝蓋骨脱臼。そのまま様子を見ていて大丈夫なケースもあれば、外れやすくなって次第に悪化してしまう場合もある。やはり正しい知識を持って、定期的に獣医師にチェックしてもらうことが肝要だ。

治療法は?

投薬などで改善を図る内科的治療、手術で根治治療する外科的治療の他、保存療法・安静療法で状態の悪化を防ぐ方法もある。
今何をすべきか、きちんと理解して治療法を選択したい。

 

内科的治療

症状が軽い時は投薬治療やサプリメントを使用

膝蓋骨脱臼の症状がまだ軽い段階であれば、内科的治療を選択することが多い。症状に応じた薬を投与することで改善を図る。

消炎鎮痛剤などを使用し、それに加えて効果が期待できるサプリメントを摂取することで、症状を軽減させる。

ただ、内科的治療は根治治療ではないので、再発のリスクはその後も伴ってしまう。グレード2程度の症状までは内科的治療が行われることが多いが、グレード2の段階で手術を行ったほうがいいケースもある。

 

保存療法・安静療法

膝に負担をかけない生活を心がけて安定を図る

保存療法は膝蓋骨脱臼の症状がほとんど見られない場合か、あるいは逆にもはや手術ができないという状況になった時に選択される治療方法。運動を制限したり、減量を行ったりして膝に負担をかけずに生活させて悪化を防ぐ。

安静療法は保存療法に似ているが、さらに積極的に運動制限をして安静を保つ方法。具体的にはケージレストなどで一定期間過ごさせることで、症状を軽減する。しかし供に根治治療ではないので、再発の可能性はある。

脛骨粗面転移術
膝蓋骨に繋がっている膝蓋靱帯は、脛骨粗面についている。この脛骨粗面が内側あるいは外側にずれてしまうと、膝蓋骨には異常な力がかかってしまい、不安定な状態になってしまう。これを修正するのが脛骨粗面転移術である。膝蓋骨と膝蓋靱帯、そして脛骨粗面が本来のように一直線に並ぶように、脛骨粗面を移動させる。その移動のためには骨に切れ込みを入れなければならず、そこを金属製のインプラントで固定することになる。

滑車形成術
膝蓋骨は通常であれば大腿骨にある滑車溝というくぼみにはまっている。それが正常な状態だ。しかしこの滑車溝が本来よりも浅いため、あるいは平坦であるために膝蓋骨が外れやすくなり、脱臼を引き起こしてしまうというケースがある。そのような状態の時に行われる手術が滑車形成術である。浅いあるいは平坦な滑車溝を適度に切除して深くして溝を形成し、そこに膝蓋骨がきちんとはまるように再建することで、脱臼しにくい状態にする術式である。

 

外科的治療

内側関節包開放術
脱臼した膝蓋骨によって、内側に引っ張るようになってしまった筋膜や支帯や関節包を切開することで、膝関節の内側の緊張を解放し、再建する術式。そうすることで膝蓋骨を正しい位置へ修正できる。以上4つの術式は、脱臼の状態により必要な術式を組み合わせて行われることが多い。また、グレードが高くなる(病状が重くなる)と手術を行うこと自体が難しくなることもある。また周囲の骨や筋の状態によっては、再手術が必要となるケースもある。

外側関節包縫縮術
内側に脱臼してしまった場合、関節を包んでいる膜である関節包が外側に引っ張られてしまう。その結果、関節包が大きく伸びてしまうことがある。伸びてしまうと、内側に脱臼した膝蓋骨を戻しにくくなってしまう。この外側に伸びてしまった関節包を縫縮(縫い縮める)ことによって膝蓋骨を元の位置に戻し、安定させる術式を外側関節包縫縮術という。他の術式と組み合わせて行われることも多い。

 

予防するには?

膝に負担がかかっているかイメージすることが大切

では膝蓋骨脱臼は予防することができるのか。

どの病気でもそうなのだが、完璧な予防法というものはない。できるだけ発症させないようにする、症状が悪化しないように心がける。
そのためにはどうしたらいいかを考えることが必要となる。

膝蓋骨脱臼予防の秘訣、それは一にも二にも「膝への負担」ということになるだろう。

金子先生が見てきた膝蓋骨脱臼の子の多くは「体重オーバーの子が多い」という。

体が重ければ膝への負担が大きくなる。適正な体重まで戻し維持するためには、食事の管理が重要となる。ダイエット用のフードなどで肥満防止に努めることが求められる。

生活環境の見直しも重要だ。フローリングなど足元が不安定な中での生活は、膝への負担大だ。カーペットなどを敷いて対処したい。

段差を越えたり、ソファなど高いところから飛び降りるなども避けるべきだが、運動によって筋肉をつけることは必要だ。

愛犬の膝に負担がかかっているかどうかを飼い主がイメージできるか、予防するために大切なのはそこなのだ。

 

体重管理で負担を軽減

膝蓋骨脱臼予防の第一は体重管理。そのためには食事の量や内容に心を配り、適正な体重を維持することが重要。虫歯予防の歯磨きガムは、意外と油分が多いため注意が必要だ。

 

段差にも気を配る


ソファからの飛び降りも膝にはよくない。抱っこして高いところから降ろしてあげたり、あるいはローソファに変更するなど一考を。

 

ジャンプは禁物

激しい運動、強い衝撃が脱臼の引き金になる。運動は大事だが、ジャンプなど膝に強い衝撃がかかる行動はさせないようにする。

 

マッサージはさするだけ

マッサージすることも予防効果を期待できる。つい強く揉んでしまいがちだが、軽くさすってあげるだけで十分なのである。

 

滑らない床で負担減

滑りやすいフローリングの床は、膝に相当余計な負担をかけてしまう。カーペットなどを敷いて、生活の場を滑らないように改善することが必要。

マット提供:サンコー

 

もっと知りたい! 膝蓋骨脱臼Q&A

Q. 脱臼は手術すれば必ず治るのでしょうか

A.グレードによって結果はかなり変わってきます
膝蓋骨脱臼を根治治療したいと思えば、手術が必要となってくる。ではどの段階で手術すべきか。金子先生は「グレード2~3で行いたい」とのこと。グレード4になってからの手術は、治りが悪かったり、骨が固くボロボロになっていることもあり、再手術しなければならないということもあるという。状態が悪くなってからの手術だと、完治が難しいこともある、ということは覚えておきたい。

 

Q.いつも外れているようです
でも普通に暮らしています

A.いずれ別の疾患が起きる恐れが……早めに処置したほうがいいです
脱臼していても痛がらないという話を聞くことがある。痛くないなら大丈夫と思ってしまう飼い主も少なくないようだ。犬自身が膝をはめ直したり、飼い主が戻してあげるというようなことも。しかし、脱臼すれば膝周りの骨や筋には確実に負担がかかる。そうなると膝蓋骨脱臼のグレードが高くなってしまったり、あるいは別の疾患を引き起こす可能性も高くなるので、診察に行ったほうがいい。

 

Q.膝蓋骨脱臼を発症しやすい犬種を知りたいです

A.小型犬に多く見られるチワワの発症例も非常に多いです
膝蓋骨脱臼は全犬種に発症の可能性がある疾患である。その中でも特に小型犬種での発症例が多いというのも特徴だ。具体的にはヨークシャー・テリア、トイ・プードル、ポメラニアン、マルチーズ、パピヨン、そしてチワワ。これらの犬種では内方脱臼が多い。先天性での発症が多いので、飼い主はその点心得ておきたい。外方脱臼は逆に大型犬に見られることが多く、その他ダックスフンドにも発症例がある。

 

Q.膝蓋骨脱臼の症状が急に悪化することはありますか?

A.いきなりグレード4にはなりません
しかし慣れてしまう子もいます

膝蓋骨脱臼の症状は、基本的には段階を踏んで悪化していくと考えていい。昨日まではなんともなかったのに、いきなりグレード4の症状になることはまずない。だから注意深く観察していれば、症状が軽い段階で治療を始められる。でも、グレード4でもすぐに慣れてしまって、脱臼を気にせず平気で走りまわる子もいる。それを見て大丈夫と思ってしまうと、さらに悪化していってしまうので気を付けたい。

 

Q.激しい運動は控えたとして、どの程度の運動が必要なのでしょう?

A.大事なことは膝への負担の有無負担をかけずに動かしましょう
ジャンプしたり、段差を越えたりは、膝への負担が大きくなることは理解していただけていると思う。でも運動しないと筋力が低下してしまう。膝蓋骨脱臼を起こさない、悪化させないためには、脚の周囲の筋肉は重要だ。だから膝に負担をかけない運動はむしろ行ったほうがいい。普通に散歩するのであれば問題ない。リハビリでは膝に負担の少ない水中歩行などを取り入れることもある。

 

Q.同じような症状で膝蓋骨脱臼ではない疾患はありますか?

A.最も多く見られるのは前十字靭帯断裂です
膝の疾患として膝蓋骨脱臼とともに発症例が多いのが、前十字靭帯断裂である。膝蓋骨脱臼から前十字靭帯断裂を引き起こしてしまうこともある。前十字靭帯断裂は基本的には加齢によって起きやすくなる疾患である。膝蓋骨脱臼を持っている子は3~4倍、発生率が高いという。前十字靭帯を断裂してしまうと、治療はほぼ手術しかないので、そこまで至らないように注意したい。

日頃から膝をチェックするそれが悪化を防ぐ鍵

膝蓋骨脱臼は、それ自体が命に関わる疾患ではない。しかし、歩行に困難をきたすようになったら、犬も飼い主も楽しい日々を過ごすことが難しくなってしまう。発症例が多い病気だけに、日頃から膝の状態をチェックすることで症状を把握し、できるだけ悪化を防いでいきたい。金子先生は言う。

「外れやすい子は3ヶ月に一度は診察させてほしいですね。膝蓋骨脱臼は症状によってはお付き合いもできる病気です。逆に早めに手術をしたほうがいい子もいます。ですから定期的なチェックは大切です」

愛犬の膝の状態を知ること、そして膝への負担を飼い主がきちんとイメージすること。そのことで適切な時に適切な治療を行うことができるはずである。

 

Text:Takahiro Kadono ※写真提供:金子泰広先生

監修:金子泰広先生
北里大学獣医学部卒業。東京大学動物医療センター外科学研修医。2009年、神奈川県海老名市にアニマルクリニックイストを開設。地域のホームドクターとしてだけでなく、職業講話、体験教室などで地元小中学生を中心に臨床獣医師の仕事を伝えている。

チワワstyle Vol.34『歩き方がおかしいと思ったら 膝蓋骨脱臼には要注意』より抜粋

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