犬連れで遠出する場合、移動手段は車であることがほとんど。
犬にとって移動がストレスにならないように。人も犬も車内で安心して過ごせるように。外出の機会が増える夏休みシーズンに向けて、ドライブ環境を見直しておこう。
法律上、犬などの動物は「乗員」ではなく「物」とみなされる。ただし、だからといって手荷物のように車内のどこに乗せてもよいわけではない。犬は自分の意思で動くことができるからだ。運転中の安全を守るため、運転者は、犬を車に乗せる際には一定のルールを守る必要がある。
犬連れドライブの際に知っておきたいのは、「道路交通法」の第55条2項。少しややこしい条文には、人や物を車に乗せる際の注意点が書かれている。
その中で注目したいのが、「視野を遮る」「ハンドルなどの操作を妨げる」「バックミラーやサイドミラーの働きを失わせる」ような積載をして運転してはならない、という内容。
つまり法律的には「積載物」となる犬を同乗させる場合、運転者には、これらの禁止事項に触れないようにする義務があるわけだ。「うちの子は賢いから大丈夫!」なんて言い分は通用しない。どんなに落ち着いたいい子であっても、何かに驚いた拍子に予想外の行動に出る可能性があるからだ。
法律違反に問われないためにも、ドライブの際には犬のための環境をしっかり整えておきたい。基本は、車内でフリーにせず、犬が安全な場所に留まれるようにすること。サークルやクレート、リードなどを活用し、愛犬に合った方法で犬と人の安全を守る工夫をしてみてほしい。
違反に繋がる行為
ハンドルなどの操作の妨げ
犬を膝に乗せているとハンドル操作がしにくい。また助手席の犬が動いて運転者にぶつかると、ハンドルやブレーキなどの誤操作につながる可能性もある。
運転者の視野の遮り
助手席で自由にさせていると、犬が運転者に飛びつく、ダッシュボードに足をかけて身を乗り出すなどの可能性も。犬に気を取られて脇見運転につながる危険もある。
バックミラーの機能低下
中~大型犬が助手席で元気に動き回っている場面を想像してみてほしい。頭やシッポでルームミラーを隠したり、向きを変えてしまったりすることも考えられる。
サイドミラーの機能低下
助手席の犬が窓から顔を出したり車外に身を乗り出したりしていると、運転席からサイドミラーが見えにくくなり、巻き込み事故などの原因になりかねない。
ベストな車内環境
犬のために最優先したいのが、車内での安全確保。問題なく運転している時を基準にするのではなく、事故やトラブルが起こった場合を想定して対策を。
ワザ① パワーウインドウの ロックを忘れずに
犬がパワーウインドウのスイッチに触れてしまうと、閉じる窓に体を挟ませるなどの事故につながることも考えられる。万が一に備えて、パワーウインドウのロックボタンはオンに。
ワザ② サークルなどはしっかり固定
犬の居場所としてサークルやベッド、クレートなどを利用する場合は緊急時の急ブレーキや急ハンドルに備えて、倒れたり座席の下に落ちたりすることがないよう確実に固定する。
ワザ③ 後部座席でも犬はフリーにしない
運転の邪魔をしない後部座席に乗せる場合も、短めのリードを装着する。前の座席に移動しないようにするだけでなく、急ブレーキなどで投げ出されてケガをすることも防げる。
ワザ④ 元気な犬は四方をガードして制限
まったりしているタイプの犬なら、動く範囲をリードで制限するだけで大丈夫なことも。ただし活発なタイプの犬には、四方をしっかり囲めるサークルやクレートがおすすめ。
ワザ⑤ 助手席に犬をそのまま座らせない
助手席に犬をつないで座らせておくと、緊急時にエアバッグが膨らんだ際、座席との間に体を挟まれてケガをしかねない。助手席に乗せる際は、ケージなどを使ったほうが安心。
ワザ⑥ 後部座席の間の隙間に注意
後部座席がセパレートタイプ(左右が独立しているもの)だと、シートの間に隙間がある。サークルなどに入れない場合、犬が足を挟んでケガをしないための工夫もしておきたい。
もっと快適にするコツ
車内の環境は、「犬目線」と「人目線」の両方でチェックしたい。室温調整やにおい対策は、感覚が敏感な犬基準で。衛生面に関しては飼い主さん基準で環境を整えよう。
ワザ⑦ 車内の体感温度には違いがある
運転席とそれ以外の場所では、体感温度が異なることも。後部座席にエアコンの吹き出し口がない場合など、必要に応じて調整を。ポータブルの送風機などで空気を循環させるのもよい方法。
ワザ⑧ フロアマットはお手入れしやすさを考えて選ぶ
毛足の長いフロアマットには汚れやゴミがつきやすい。犬を乗せるなら、抜け毛が絡まず、水洗いもできる樹脂製のマットがおすすめ。写真のように縁が高くなっているタイプを選ぶと、抜け毛が飛び散りにくい。
※写真はホンダ純正アクセサリーの「オールシーズンマット」
ワザ⑨ ラゲッジルームは暑さ対策をしっかりと
ハードタイプのクレートを使う場合、犬はラゲッジルームで過ごすことになる。エアコンの風が届きにくく熱がこもりやすいので、室温に気を配る他、冷却マットなども併用を。
ワザ⑩ 「車のにおい」を消す工夫も
車特有のにおいは内装の素材などから発生するものなので、完全に取り除くのは難しい。犬にとっては車酔いの原因にもなりかねないので、安全な消臭剤などでにおい対策をしてみよう。
ワザ⑪ シートカバーは合皮製が◎
どんなにいい子でも、犬は汚れることもあれば抜け毛やヨダレも止められない。シートカバーは、汚さないようにするより、汚れても手入れしやすい合成皮革のものを選んだほうがストレスが少ないはず。
ワザ⑫ 犬を乗せる前に車内の温度を確認
犬は人間より暑さに弱いので、犬を乗せる前には複数箇所のドアや窓を開けて車内に風を通すことを忘れずに。暑い時期なら、エアコンをつけて室温をある程度下げてから犬を乗せるようにしたい。
ワザ⑬ 衛生グッズは多めに持参
犬の体を拭くためのタオルやトイレシーツ、ごみ袋などは多めに持参すると安心。人の洋服&車内のケアのために、抜け毛を掃除する粘着ローラーもあると便利。
ワザ⑭ 駐車スペースは日陰を選ぶ
休憩する際などの駐車スペースが屋外の場合は、できるだけ日陰を選ぶことも大切。短時間でも車を離れた後は、犬を乗せる前に車内の温度の確認を忘れずに。
犬連れドライブの最優先事項は、犬と人の安全を確保すること。そのうえで心がけたいのが、快適に過ごせる環境づくりだ。
気をつけたいポイントは、犬と人の感覚の違い。犬は人より暑さに弱いため、車内の温度は犬優先で設定したい。休憩した際などには、車内で犬が過ごす場所の温度や風通しをチェック。暑すぎたり寒すぎたりしないか、エアコンの風が体に直接当たっていないか、などをこまめに確認しよう。
車内では犬の様子に気を配り、無理をさせないことも大切だ。あくびの回数が増える、呼吸が荒くなる、ヨダレを垂らす、などは車酔いのサイン。早めに車を停めて休息&気分転換をさせよう。
車酔いの原因となるのが、車の振動やにおい。急ハンドルや急発進なども避け、愛犬のために落ち着いた運転を心がけたい。車内のにおい対策も、犬ベースで行うのが基本だ。人間にはわからない程度であっても、車には特有のにおいがあるので、犬を乗せる時は消臭剤(犬にとって安全なもの)をスプレーしておくと、愛犬に喜ばれるかもしれない。
安全を保つ便利グッズ
車の中でソワソワ落ち着かなかったり、車酔いしやすかったり。そんな時は、犬用に考えられたドライブ用のアイテムを上手に利用して、犬のための居場所を作ってみよう。
おでかけベストハーネスL
犬の体への負担が少ないベストタイプのハーネス。付属のシートベルト通しの輪にシートベルトを通して固定し、車内での安全を確保。シートベルト通しを手持ちのリードに替えれば、散歩用のハーネスとしても使える。
カラー:ストライプ、カモフラージュ/首周り35~46cm、胴周り54.5~62cm、背丈29.5cm /税込2,750円
問:Richell
愛犬用アクセサリーHonda Dogシリーズ
ペット車外飛び出し防止リード
後部座席のISOFIXチャイルドシート取付用金具に取り付けて使用。2匹以上の場合は、Mサイズのリードの両側を左右のチャイルドシート用金具に取り付け、別のリードの輪の部分を通して使用することもできる。
Sサイズ:幅約2cm×長さ約27~40cm(調節可能)/税込3,300円、Mサイズ:幅約2cm×長さ約68~110cm(調節可能)/税込3,850円
問:ホンダアクセス
愛犬用アクセサリーHonda Dogシリーズ
ペットシートマット
後部座席に取り付けることで、シートの汚れや傷を防止。人が並んで座る場合はファスナーを開け、背もたれ側のマットを折り返せば、抜け毛や汚れも気にならない。パイプなどを外して丸洗いも可。
カラー:グレー、ブルー/ Sサイズ(届出車用):幅約110cm×長さ約155cm(ファスナーを閉じた状態)/税込17,600円、Mサイズ(登録車用):幅約126cm×長さ約160cm(ファスナーを閉じた状態)/税込19,800円
問:ホンダアクセス
愛犬用アクセサリーHonda Dogシリーズ
ペットドアライニングカバー
窓ガラスとドアパネルの間に本体のタブを差し込んで固定。犬がドア内側などに前足をかけるなどした際にも滑りにくく、内装に傷や汚れがつくのを防ぐこともできる。後部ドア用左右2枚セット。丸洗いも可。
カラー:グレー、ブルー/幅約53cm×長さ約56cm/税込6,600円
問:ホンダアクセス
愛犬用アクセサリーHonda Dogシリーズ
ペットシートプラスわん2
助手席、後部座席で使える犬用ソフトケージ。ファスナー式で上面と両側面が開くため、乗り降りもスムーズ。前部は、エアバッグが開いた際にシート内部を衝撃から守る形状になっている。飛び出しを防ぐリードフック2本付き。
カラー:グレー、ブルー/幅約35cm×長さ約45cm×高さ約45cm /税込21,450円
問:ホンダアクセス
フラットボード(車内用)
助手席または後部座席の背面にベルトで固定して使用。座面のスペースを約30%広げ、居心地のよいスペースに。カバーのデザインは3タイプ。外して丸洗いもできるので清潔に使える。飛び出し防止リード付き。
カバーデザイン:3タイプ/幅45cm×奥行77cm×高さ45cm(体重15kgまで)/税込9,790円
問:PEPPY
愛犬用アクセサリーHonda Dogシリーズ
ペットシートサークル
後部座席に取り付けることで、前部座席との足元空間も活用。床面にしっかりしたボードが入っているので安定感も抜群。使用後はコンパクトに収納できる。床面のボードと骨組みのパイプを外して丸洗いも可能。
カラー:グレー、ブルー/幅約54cm×長さ約85cm×高さ:前方約38cm、後方約58cm /税込25,300円
問:ホンダアクセス
ドンパック
犬の排泄物をポリ袋などに入れ、ドンパック本体に収納。車のボディの平らな部分にマグネットで取り付けることで、においを気にせず持ち帰ることができる。車のボディを傷から守るための透明保護シール付き。
カラー: 全10色/ 幅18cm× 奥行4.5cm× 高さ10.4cm /税込1,980円
問:PLUSCO
問い合わせ
Richell
☎076-478-2957
https://www.richell.co.jp/
PEPPY
☎0120-838-780
https://www.peppynet.com/
PLUSCO(プラスコ)
☎0120-773-441
http://don-pac.com/
ホンダアクセス
☎0120-663-521(お客様相談室)
https://www.honda.co.jp/ACCESS/dog/
車は人間のために作られているもので、本来、犬が乗ることは想定されていない。そのため、犬をドライブに連れ出す際には、安全確保&犬が居心地よく過ごせるようにするためのひと工夫が必要だ。
基本は、車内で犬をフリーにしないこと。手持ちのリードやクレートを活用することもできるが、頻繁に犬連れドライブに出かけるなら、専用のカーアクセサリーを利用するのがおすすめだ。車で使うことを前提に作られているアイテムは、いざという時の安全性が高いのはもちろん、装着も簡単&確実だ。
愛犬を守るのは、飼い主の義務。安全確保のための対策をしっかり講じて、犬連れドライブを楽しもう。
Text:Kumiko Noguchi Photos:Teruhisa Tajiri Models:Ao、Sui
取材協力:ホンダアクセス
Shi-Ba Vol.132『犬のためのドライブ環境14のワザ』より抜粋