柴犬が日本犬ということはわかっていても、仲間にどんな犬種がいるのか知らない人もいるだろう。
秋田犬・甲斐犬・紀州犬・四国犬・北海道犬をよく知る飼い主や専門家のアンケートをもとに「日本犬あるある」をまとめた。彼らの魅力に気づいてほしい!
日本犬の代表格は柴犬だけれど、秋田犬・甲斐犬・紀州犬・四国犬・北海道犬の五犬種のことをもっと知ってほしい。そこで本誌読者や専門家、スタッフから集めたエピソードをもとに、彼らの「あるある」に迫りたい。
中・大型日本犬の最大の特徴は、原産地が犬種名になっていることだ。柴犬は全国から集められた小型犬の総称で、現在まで続いているのは島根県と四国出身の犬の系統であるとされる。一方、秋田犬・甲斐犬・紀州犬・四国犬・北海道犬は、いずれも犬種名の地域で育成されてきた猟犬や番犬の子孫だという。
体格に応じて分けると、秋田犬が唯一の大型犬になる。有無を言わさぬ迫力を備え、海外でも高い人気を誇る。堂々たる体躯を包むもふもふの毛並みに埋もれたくなるのは「秋田犬あるある」だ。
続いて、甲斐犬・紀州犬・四国犬・北海道犬はいずれも10〜20kgほどの中型犬。山野を駆け回って獲物を追い、時にクマを追い払うには適した大きさなのだろう。実は日本犬の中核をなす存在だ。心身から感じる野生味で愛好家をとりこにするのが「甲斐犬・紀州犬・四国犬あるある」だ。
携帯電話会社のCM効果でマスコット化している北海道犬を分けたが、愛嬌を振りまいてタレント性を発揮したかと思えば、強い警戒心を見せるのが「北海道犬あるある」ではないだろうか。
そして、巷で見かける柴犬グッズの立ち耳と巻き尾に心がときめき、「犬種は違うけどうちの犬に似ているし」と買ってしまうのが「中・大型日本犬飼い主あるある」。
本特集が愛すべき日本犬の魅力を再確認するきっかけになりますように!
獣医師から見た日本犬
【性格】信頼している人の言うことが絶対
日本犬は全般的に信頼している人の言うことしか聞かないところが、飼い主さんにとっては魅力的に映るのではないでしょうか。甲斐犬や四国犬はその印象が強く、訓練士の知人によれば秋田犬もトレーニングの入りにくい犬のベスト3だとか。いずれも警戒心は強いですが、近年では家族と室内で生活するようになり、穏やかな性格の犬も見かけます。北海道犬や柴犬はやや温厚なイメージがあります。
【暮らし】残したフードや食器を守る
警戒心の強さから音にも敏感で、家族が帰宅すると誰よりも早く気がつきます。ただし、長所が問題につながることも少なくありません。例えば日本犬は自分の食事を取られることが嫌い。食べたくないフードであっても、食器に触ろうとした相手に唸るタイプが洋犬よりも多い印象ですね。飼い主さんには愛犬の性格や行動をよく理解してほしいと思います。
【コミュニケーション】ほめてしつけたほうがよい関係を築ける
やんちゃだからといって厳しくしつける方が多いのですが、かえって悪化するケースをよく見かけます。ほめながらしつけていくほうが日本犬とはよい関係を築けると思います。心の広いお年寄りに育てられた日本犬は穏やかな犬が多いですね。誰彼構わず愛想を振りまくタイプではないので、散歩中の立ち話に付き合わされる場合では、輪に加わることなく飼い主さんにピッタリくっついている印象があります。
【健康】動物病院では暴れん坊に変身してしまう
日本犬の飼い主さんは毎日のように朝早くから長い距離の散歩に行っている印象があります。注意が必要な病気も多いので、健康維持のためにはよい習慣です。一方、動物病院で診察するのはなかなか大変。動きを制限されることが苦手なので、耳掃除や爪切り、口の中のチェック、採血や超音波検査、レントゲン検査など保定が必要な検査や治療では、飼い主さんも愛犬を診察台に抱き上げるのに苦労しています。
【飼い主あるある】一目惚れで迎えてから現実を知る
日本犬の子犬のとても愛らしい顔と動きに一目惚れして迎える飼い主さんの、実に多いこと。ところが成長に従ってはっきりしてくる彼らの態度に振り回され、「こんなはずじゃなかった」と言う家族も珍しくありません。飼うという意識ではなく心を広くもって家族として共に生活し、子犬を迎え入れたらすぐにしつけ教室などでの教育を始めてほしいと思っています。また、保護犬の場合は心から優しく接してあげてください。
ノヤ動物病院院長。日本獣医畜産大学獣医学科卒業後、1983年よりノヤ動物病院を開院。
著書に『犬の言葉がわかる本』(経済界)、『犬と暮らそう』(中央公論新社)他多数。ノヤ動物病院
埼玉県日高市上鹿山143-19
https://www.noya.cc/
Text:Shio Kaneko Illustration:Yuko Yamada
Shi-Ba Vol.133『長所も短所もひっくるめて迫る!中・大型犬の日本犬あるある』より抜粋