あらためて学ぶ 犬の「食」きほんの【き】

今一度、日本犬の「食」の基本をおさらいしよう。今さら聞けない食の悩みや疑問をスッキリ解決しちゃいます!

健康な体を育み、維持する日本犬に合った食を探る

古来より日本犬の食は、日本人の食生活同様、味噌や穀類、野菜、魚などを主にしていた。その後、欧米から流入したドッグフードにより犬の食事は変化して、それに伴い、起こるトラブルやかかる病気も変わってきたのではないかと言われている。

現代において古来の食生活に戻すことは難しいからこそ、市場に出回っている多くのドッグフードの中から愛犬にベストなものを選ぶためにも、食の基本を知っておくことが大切だ。

 

食べてはいけない食材

チョコレート類
チョコレートやココアなどに含まれるデオブロミンという成分が嘔吐、下痢、発熱などの他、心臓や神経に異常を起こし震えや痙攣、ショックを引き起こすこともある。

ネギ類
タマネギや長ネギなどには赤血球を壊す成分が含まれているため貧血や元気消失などを引き起こし、下痢や嘔吐などの症状が現れる。加熱処理しても毒性は分解されない。

ニラ、ニンニク
タマネギと同様、ネギ科の植物。貧血などの中毒症状が現れる有害成分が含まれている。血尿、急性腎不全を引き起こし、命を落とす危険性もある。加熱処理しても毒性は分解されない。

ブドウ
ブドウやレーズンを食べると24時間以内に嘔吐や下痢など中毒症状を起こす可能性がある。そして数日後には腎不全に進行することもあり命に関わる危険性がある。

アボカド
アボカドに含まれるペルシンという成分は犬にとって毒性があり、嘔吐や下痢などの中毒症状を引き起こす。少量の摂取でも呼吸困難など重篤な症状に陥ることもある。

グレープフルーツ
外皮、内皮、白いスジなどに消化不良や下痢、嘔吐などの症状を引き起こす可能性がある成分が含まれていると言われている。オレンジやレモンなども同様に要注意。

ナッツ類
マカダミアナッツは嘔吐や腹痛など中毒症状を引き起こす。また、アーモンドやピーナッツなどは中毒にはならないが高脂肪、高カロリーのため過剰摂取は控えること。

キシリトール菓子
ガムなどのキシリトール配合の菓子を食べたり、舐めたりすると急激な低血糖により、痙攣、意識障害、下痢、嘔吐などの症状が現れる。最悪の場合、死に至ることも。

イカ
生のイカにはビタミンB1を破壊するチアミナーゼという成分が含まれ、ビタミンB1欠乏症を引き起こす。またイカに寄生するアニサキスによって食中毒を起こすこともある。

カフェイン
コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインを摂取すると下痢、嘔吐、痙攣、呼吸不全などの中毒症状を引き起こす。最悪の場合、死に至る場合もある。

ウーロン茶
コーヒー、紅茶同様、カフェインが含まれている。特に乾燥させた塊の茶葉を食べてしまうと危険。水を加えると体内で茶葉が広がり毒素が増加してしまう。

アルコール
犬はアルコールを分解する酵素がないため、下痢、嘔吐、昏睡などの中毒症状を起こす。アルコールを含むウェットティッシュや除菌スプレーなどの取り扱いにも要注意。

 

フードのきほん(総合栄養食)

種類


ドライ
フードの水分含有量が10%以下のもの。含まれている水分が少ないため常温での長期保存が可能。賞味期限は未開封であれば製造日から約1~1年半、開封後は1ヶ月程度。

ソフトドライ
水分含有量は25~35%。フードの中に気泡を含ませる加熱処理が施され、より柔らかな食感。水分量が多いため長期保存が難しく、腐敗防止の添加物が使用されていることも。

セミモイスト
水分含有量は25~35%。フードの中に気泡を含ませる加熱処理は施されず無発泡。食感はやや硬めで、もっちりとしている。水分量が多いため傷みやすい。添加物にも要注意。

ウェット
水分量が多く、柔らかい上に風味も良く、嗜好性が高いので食べやすい。缶やパウチなど密閉性の高い容器に小分けされているため、添加物が少なく長期保存が可能。

フードの水分量
ウェット>セミモイスト>ソフトドライ>ドライ

POINT

愛犬に寄り添ったフードの選び方
市販のドッグフードは、アメリカのAAFCOの栄養基準を採用した総合栄養食を選ぶといい。フードのパッケージには総合栄養食の基準をクリアした記載があるのでチェックすることも忘れずに。メーカーも多岐にわたるため自社工場を持っている、あるいは信頼性の高いメーカーなどを目安に選ぶと安心だ。その上で愛犬にとって食い付きがいいフードを色々試してみることが大切。

 

与える量

おおよその目安は愛犬の頭の大きさくらいパッケージに記載されている適量を与えるのも一つの方法だが、体重を目安にするのではなく愛犬の運動量と体型で量を調節するといい。体型のチェックは犬のボディコンディションスコア(BCS)を参考にすること。

POINT

フードの鮮度をキープ!
ドッグフードには脂肪が含まれていて一度開封すると酸化が進んでしまう。1ヶ月以内に食べきることができない大袋のフードを購入した際には、1日に与える量の目安として100~130gくらいのフードを小分けにして冷凍庫で保存、あるいは真空パックにしておくと安心だ。

 

与える回数

年齢によって回数を変えていく生後2~3ヶ月は1日4回、生後3~6ヶ月は1日3回、生後6ヶ月~1歳は1日2回、1歳以降は1日1~2回。子犬の頃は腸が短いので消化吸収を促すために回数を多くすること。

POINT

フードの切り替えは慎重に
長期間同じフードを与え続けている場合は、今までのフードの中に切り替えたいフードを少しずつ混ぜて1~2週間かけて切り替えていくこと。いきなり切り替えてしまうと嘔吐、下痢など体調を崩すこともあるので注意しよう。

犬を飼っている家庭ではドッグフードを与えていることが圧倒的に多いのが現状。今一度、ドッグフード選びの基本を知っておこう。ドッグフードにはドライ、ソフトドライ、セミモイスト、ウェットなど4つのタイプが用意されている。

「どのタイプのフードも大差はなく、どれを与えてもいいでしょう。本来、犬の歯は咀嚼するためではなく、肉を引きちぎるためのもので歯石は付きません。しかし、フードは引きちぎる必要がないのでどんなタイプのフードでも歯石は付きます。従って歯周病予防のためにも歯磨きは必須となります」と、野矢先生。

また、ドッグフードは成長段階によって必要とするエネルギー量の違いから離乳期、成長期、成犬期、高齢期などそれぞれのライフステージに適したタイプに分かれいる。

「離乳期、成長期は多くのエネルギーが必要なので、ライフステージに合った栄養バランスの取れたフードを選ぶといいでしょう。それ以外のステージの場合はあまりこだわらずに、愛犬の体質、運動量などを考えてその子に合ったフードを与えてあげてください。また、犬種別のドッグフードもありますが、これもこだわる必要はありません」

 

食いつきが悪い日本犬たち

 

食べない理由と改善策

【その1】フードそのものがおいしくない
保管場所が悪く鮮度が落ちてしまったり、賞味期限が切れておいしくない場合があるので今一度確認してみよう。飽きてしまったり他の味を覚えてしまったことも考えられる。

【その2】気温で食欲が落ちている
夏の暑い時期は他の季節に比べ、食欲が減退する。特に気温30度を超えるとさらに食欲が落ちる。涼しい時間帯に与えたり、氷をトッピングしたりして工夫してみよう。

【その3】メーカーによるリニューアル
メーカーによって同じフードでも成分や風味が変更され、知らぬ間ににおいや味が変わっていることも。パッケージに記載されている成分内容や製造年月日を再度確認してみよう。

【その4】病気や加齢による体調不良
急に食べなくなったなど、いつもと違う様子が見られたら病気の可能性がある。好きなオヤツを食べない、2回以上吐くなどの症状が現れたら動物病院で診てもらうこと。

POINT

食いつきがダウンしたらトッピングしてみて!
成犬の場合、トッピングは主食のフードの1~2割程度の量にしてみよう。トッピングする材料は細かくして、風味をフードに染み込ませるように混ぜ合わせること。トッピングの内容は獣医師に相談すると安心だ。完食する様子を観察することも忘れずに。

 

オヤツのきほん

種類

 

ちぎれるもの、一口サイズのもの

小さくちぎって、その都度与えられるソフトジャーキーや一口サイズの卵ボーロなどはしつけのごほうび、留守番ができた時、散歩中に与えるのにおすすめ。

香りの強いもの

チーズや肉系のオヤツは香りが強いものが多く、散歩中に他犬と近付く時や来客時など、注意をそらしたい際におすすめ。ノーズワークなど、嗅覚を刺激する遊びにも活用できる。

ガム系

歯の健康に有効な成分が含まれていたり、嗜好性の高い風味が付けられているなど様々。ブラッシング効果がある歯磨きガムは、歯磨きが苦手な犬におすすめ。

POINT

留守番時に与えたい安心安全なオヤツは?
留守番時に与えるオヤツは飽きずに長持ちするものがいい。コングなどの知育オモチャの中に煮干しやササミ、卵ボーロなど、においが強く、その子が好きなものを入れてあげると飽きずに遊んでくれる。また、少しの時間であれば、大きめの硬い歯磨きガムもおすすめ。ただし、丸呑みして喉に詰まらせてしまわないよう適切な大きさを測ることが大切。

 

我が家の食いしん坊は、何故か最近、食べ物を見ても知らんぷり……。においは嗅いでも口を付けない……。そんな愛犬の様子に困惑したり、心配した経験を持つ飼い主さんは意外と多い。

「食いつきが悪いのには必ず理由があります。もっとおいしい味を覚えてしまった、食欲が落ちやすい暑い時期、メーカーによる成分や味の変更、フードの保管状態や保存方法が悪く酸化してしまったり、カビが生えてしまったり、そして病気などさまざまな要因が考えられます。食いつきが悪くなったら、これらの要因をチェックしてみるといいでしょう。それでも食べない時は好きなオヤツを与えてみて、2回以上吐いてしまったら病気の可能性もあるので獣医師に相談することをおすすめします」と、野矢先生。

しつけの際のごほうびや留守番時、他人に迷惑をかけないための手段としてオヤツはさまざまなシーンで有効的に使うことができる。愛犬にとってもオヤツはお楽しみのひとつになっているに違いない。

「オヤツを選ぶ際は、原産国、賞味期限、製造年月日、保存料や添加物の有無、内容などを必ず確認すると安心です。保存料が入っていないものは開封したらすぐに与えるようにすることも大切です。オヤツの与え方は、まるごとひとつを与えるのではなく、ひとつのものを細かくして、与える回数を多くすると満足感が得られます」

愛犬が安全に食べ物を口に入れられるよう、日頃から愛犬の様子を観察して、ちょっとした与え方の工夫をしてあげることが望ましい。

 

読者犬の「食」のお悩みQ & A

Q.空腹時にきまって嘔吐しています。対処法はありますか?

A.食事の時間を変更してみてください。早朝に吐くようならば夜の食事時間を遅くしてみましょう。改善しない場合は胃酸を抑える内服薬を投与してみるのも一手。いずれにしても早めに動物病院を受診することをおすすめします。

 

Q.避妊手術をしたら太り始めました。対処法はありますか?

A.今まで食べていたフードの量を減らすか、低カロリーのフードに替えてみましょう。ただし、体重を落とすベストな方法は運動です。運動量を今まで以上に増やすことで体重の軽減を図ることが可能です。長めの散歩も実行してみてください。

 

Q.食いつきが悪い愛犬に療法食を与えたいです。どうすればいいですか?

A.今までのフードに少しずつ療法食を混ぜながら時間をかけて慣らしてあげましょう。療法食の内容にもよりますが一時的に味付けをしていい場合は、液状オヤツを少しだけトッピングしてもいいかもしれません。獣医師に相談すると安心です。

 

Q.グレインフリーのフードを与えてみたいのですが……

A.米や麦、とうもろこしを使用していないグレインフリーフードはグルテン不耐症やイネ科の植物アレルギーがある場合には有効です。ただし、高タンパク質、低炭水化物の商品もあり、肝臓や腎臓への負担が大きくなるので要注意です。

 

Q.適量を与えていてもなぜか空腹そう……。このままでOK?

A.犬は食べられる時に食べて、栄養を蓄えておこうとする野生の頃の名残があります。空腹そうにしていても与えないようにしましょう。量を増やしたり、欲しがるだけ与えると肥満につながってしまいます。

 

Q.シニア期に入る犬におすすめの食材はありますか?

A.5~6歳を過ぎたら活性酸素の働きを抑える抗酸化力の強い食材を与えるといいでしょう。緑黄色野菜、アマニ油、ベニバナ油、サケやイワシ、エゴマなどを細かく刻む、すりおろす、煮るなどしてフードにトッピングしてください。

 

愛犬がガツガツ、モリモリ食べてくれるのはうれしいのだが、その反面、食にまつわるトラブルが意外と多いのも事実。それは誤飲や誤食。大きな骨や肉、食べ物以外の異物などが食道に詰まったり、胃で消化されずに腸で詰まってしまうことがある。そんな時は速やかに動物病院に連絡すること。

トラブル回避のためにも、家の中では犬にとって危険な食材の扱いに注意したり、盗み食いをさせない工夫をしたり、与える時
の大きさや形に配慮したりすることが大切。安全な「食」の環境を確保することを忘れてはいけない。

愛犬がいつまでも健康で長生きができるように、また、食生活が楽しいものになるように、「食べること」に関する基本を知り、その子に合った食事内容を創意工夫することは、飼い主さんにとって最重要課題かもしれない。

食べることは生きること。愛犬が毎日、ご機嫌な笑顔で生き生きと過ごしてくれることが飼い主さんの願いに他ならないのだ!

 

 

監修 野矢雅彦先生
ノヤ動物病院院長。日本獣医畜産大学獣医学科卒業後、1983年よりノヤ動物病院を開院。著書に『犬の言葉がわかる本』(経済界)、『犬と暮らそう』(中央公論新社)他多数。
ノヤ動物病院/埼玉県日高市上鹿山143-19 ☎042-985-4328 http://www.noya.cc/

Text:Masako Komuro Photos:Michio Hino

Shi-Ba Vol.129「あらためて学ぶ 犬の「食」きほんの【き】」より抜粋

-ごはん, 飼い方