「愛犬は◯◯してばかりで困る!」と悩んでいる飼い主に朗報だ。
家族を困らせる行動こそ、愛犬に向いている遊び方を見つけるヒントになる。
「こうすれば遊ぶ」という小手先のテクニックで誤魔化されるほど日本犬は甘くないが、愛犬の気持ちがわかれば一緒に楽しい時間を過ごせる。遊びをコミュニケーションに役立てよう。
お悩み
解決策
犬を室内で自由にさせていると、部屋全体がくつろぐ場所になってしまう。半屋外のようなテラスやベランダ、玄関などを遊ぶ場所にして空間を切り替えたほうが気分も変わる。
お悩み
解決策
日本犬は遊びよりも外の刺激を優先する。突然全力で走り始めて追いかけさせたり、わざと嗅ぎそうな場所に誘導するなど単純な遊びから試そう。
お悩み
解決策
オモチャは遊ぶ時に出し、終わったら犬に見えないところへ片付ける。オモチャに特別感が出るうえ、飼い主が楽しいことを提供してくれる存在になる。
お悩み
解決策
どちらかが嫌がっていたり、一方的に追い回したりしているならフリーにするのはNG。攻守交代しているなら格闘ごっこを楽しんでいるので心配はない。
POINT
犬のスイッチが入りそうな時を狙って脇腹や背中をポンポンと叩き、それを遊びのスイッチオンの合図にするのがおすすめ。勝手に遊ぶのではなく、飼い主が楽しいことを提供してくれると印象付けられる。
お悩み
解決策
噛まれて困るものは犬の届く範囲に置かないのが鉄則。狙われやすい靴下や手袋は家族全員が片付けを。犬用のベッドやマットで遊ぶ場合は発想を変えてオモチャ兼用にする。
お悩み
解決策
若い頃にオモチャの「モッテキテ」が得意だった犬には、落ちたオモチャを持って来たらほめてフードを、落ちる前にキャッチして持って来たら拍手喝采&特別なオヤツを与える。
試してみたい遊び
飼い主とのコミュニケーションになる遊びの他に、「ひとり遊び」で退屈しのぎをしたり「宝探し」で本能を生かしたりすることにも応用できる。
「日本犬とうまく遊べない」と感じる飼い主が多い理由について、山下先生は犬種のルーツをたどれば見えてくると言う。
「特定の作業のために生み出された犬種は作業に役立つ本能的な行動が突出していて、遊びにも応用しやすいのが特徴です。例えばラブラドール・レトリーバーは物をくわえて運ぶ本能が突出しているので、モッテキテをエンドレスで繰り返します。また、いつまでも子犬のようでシニアになっても遊び好きです」
一方、日本犬は作業を目的として人為的に改良されていない犬種だ。「日本犬は野生動物の性質を色濃く残しているため、本能のバランスが取れています。例外的にエンドレスでボール遊びをする柴犬もいますが、多くの日本犬は成長すれば同じことを繰り返すだけの〝目的のない遊び〞を好みません」
人間が跳んだり走ったりするのは子供の頃だけで、成長するに従ってルールのあるゲームやスポーツを楽しむようになるのと同じだ。「本特集を読んで、遊びなのにトレーニングをするのかと不思議に思った人もいるかもしれません。しかし日本犬には特に、ルールを教えたほうが知的な楽しみをプラスできます」
オモチャを次々に買い与えたり飼い主が盛り上げたりするような小手先のテクニックでは日本犬は誤魔化されないが、山下先生からちょっとしたコツの提案が。
「遊んでいて気分が盛り上がったら、ピークに達する前にスパッとやめること。『もっと遊びたかった』と思わせて、次回につなげるわけです」
日本犬の特性やルーツを知れば、遊びの悩みは万事解決だ。一緒に楽しい時間を増やしていこう。
ひとり遊び
オモチャは飼い主と一緒に遊ぶために使う楽しいアイテムなので、基本的に片付けておく。知育玩具は退屈しのぎのためにひとつだけ与えてもよい。
まずは少し転がしただけで食べ物が出てくる形の知育玩具を選んで。あまりに難易度の高いものから始めると「何もいいことがない」と感じてやらなくなることも。なお、所有性攻撃のある犬には食べ物を入れるオモチャは与えないこと。
宝探し
におい嗅ぎが得意な日本犬には、シニアになっても楽しめる嗅覚を使った宝探しがおすすめ。犬が嗅覚で探し当てるルールを覚えたら、食べ物の代わりにお好みのアロマ(犬に害のないアロマを選んで)を使うと本格的なノーズワークに。
1.ジッパーで開閉するフェイクファーのポーチに、犬の目の前でフードやオヤツを入れる。中に食べ物があることを認識させる(はじめはそのまま食べさせてOK)。
2.食べ物を入れたポーチを近くに投げる。この時はリードをつけて。犬が追いかけたら飼い主もついていき、すぐにジッパーを開けて中の食べ物を与える。
3.ファの後ろなどの見つけやすいが、犬から見えない場所に食べ物を入れたポーチを隠す。犬が探し当てたらポーチを開けて食べさせる。
※この時「あそこにあるよ」など飼い主が誘導せず、自主的に探させることを意識する。
監修:山下國廣先生
日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)卒、獣医師。犬のトレーニング、問題行動治療を行う「軽井沢ドッグビヘイビア」主宰。家庭犬のしつけ指導から作業犬の訓練まで、 幅広く活動している。災害救助犬としても活躍した甲斐犬のすぐり(オス)と、15年7 ヶ月を共に過ごした。
軽井沢ドッグビヘイビア
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Text:Shio Kaneko Photos:Minako Okuyama Models:Dai、Fuku、Kotsubu、Sora マット提供:サンコー
Shi-Ba Vol.133『日本犬を知れば万事解決 困る!は楽しい遊びの第一歩』より抜粋