日本犬と暮らす以上、避けては通れないことがある。それが、抜け毛との終わりのない闘いだ。毎日の掃除を楽にする方法はあるのか……? 掃除のプロに、抜け毛との付き合い方を伺った。
お掃除のキホン
●高いところ→低いところの順に掃除を進める
●床掃除は、部屋の隅→中央の順に掃除を進める
●“たまにガッツリ”ではなく“こまめにチョコチョコ”行う
抜け毛やホコリは上から下へ落ちるため、高いところから順にきれいにしていくほうが効率的。また、抜け毛などは部屋の隅や壁と床の境目に集まるので、掃除機の排気などで毛が舞い上がる前に、たまっている毛を取り除いておくとよい。気づいた時にサッとひと拭きしておくことも、掃除を楽にするコツだ。
愛犬の愛おしいモフモフの毛も、部屋の隅々で見かけると「掃除が面倒くさい!」と感じる飼い主さんも多いのではないだろうか。おまけに、日本犬は抜け毛の多いダブルコートの持ち主だ。細くて柔らかいアンダーコートが、あっちにフワフワ、こっちにペタッ。換毛期ともなれば、それはもう……。
抜け毛は軽いため、空気がわずかに動くだけで空中に舞ってしまう。アレルギーなどの原因になりかねないうえ、室内のあちこちにいつの間にかたまっていく。
また、ラグやじゅうたんについた抜け毛を放置すると、ダニやノミなどが繁殖する可能性もある。人と犬の健康を守るためにも、ポイントを押さえた抜け毛対策が必要なのだ。
掃除の基本として押さえておきたいのが、掃除機の使い方。フローリングの場合、掃除機がけからスタートするのはよい方法とは言えない。部屋中に抜け毛が落ちている状態で掃除機をかけてしまうと、排気で毛が舞い上がる。空中にある毛は掃除機で取り除くことができないため、かなりの量を取りこぼすことになるのだ。
正解は、部屋の隅から中央に抜け毛やホコリを集めるように床用ワイパーシートなどで拭いてから掃除機をかけること。拭き掃除は、水拭き→から拭きの順に行うのが理想だ。
じゅうたんの場合は、まず掃除機がけを丁寧に。その後、ブラシ類や掃除用の粘着シートなどで、繊維に絡まった抜け毛も取り除こう。
犬と暮らす家庭では、年間を通してエアコンをつけている時間が長い。エアコンは室内の空気を吸入して温風・冷風を出しているため、空気中に漂う抜け毛まで吸い込むことになる。
吸い込まれた抜け毛の多くは、フィルターにたまっていく。そのままにしておくとカビや悪臭の原因になるうえ、冷暖房の効率も下がってしまう。内部に入り込む抜け毛を減らすには、室内の掃除に加え、エアコンをつける前に窓を開けて換気をすることも有効だ。
二〜四週間に一度を目安にフィルターを掃除し、できれば年に一度はプロに依頼して内部の清掃もしておこう。
リビングの抜け毛スポット
①犬のケージ周りはしっかり拭き掃除
サークルやケージなど犬のためのスペースは、抜け毛に加えて水分や食べものの汚れにも注意。周囲の床は洗剤で汚れを落とした後、水拭きで洗剤の成分をしっかり取り除き、から拭きで仕上げる。
②キャスター付きの家具は◎
掃除のしやすさの面で、キャスター付きの家具は優等生。床置きの家具のように、床と家具の境目に抜け毛がたまることがない。また、動かすのも簡単なため、家具の後ろまで簡単に掃除することができる。
③犬用マットは敷きっぱなしNG
滑り止めや汚れ防止のために使われるジョイントマットは、通気性がよくない素材のものがほとんど。マットの下に抜け毛や汚れがたまると菌やカビの原因になることもある。床掃除をする際は持ち上げて裏側まで風を通し、マットの下のゴミも取り除こう。
④じゅうたん掃除は掃除機+αで
じゅうたんやラグなどに抜け毛がついている場合、掃除機だけできれいにするのは難しい。丁寧に掃除機をかけた後、表面についた毛は掃除用の粘着シートなどでキャッチ。繊維に絡んだものは、じゅうたん用のブラシなどでかき出して取り除くとよい。
⑤エアコンの「上」の掃除を忘れずに
エアコンは吸気口から室内の空気を取り入れ、吹出口から温風や冷風を送り出す。フィルターやエアコン内部を汚れにくくするためには、吸気口のあるエアコンの上の面(前面の場合も。メーカーや機種によって異なる)をこまめに掃除するのが効果的。
⑥掃き出し窓はサッシの溝に注目
サッシの溝の部分には、抜け毛やホコリ、土などが混ざった汚れがたまりがち。乾いた汚れは細いノズルをつけた掃除機で吸い取り、こびりついた汚れは専用のブラシや古い歯ブラシなどでかき出した後、水洗いをしておこう。
⑦電化製品の裏側は要注意ポイント
静電気がホコリを吸着するため、家電周りは汚れやすい場所。テレビやオーディオ製品は、裏側まで丁寧に拭き掃除を。ハンディタイプのモップやドライタイプの床用掃除シートなどを使うと、抜け毛やホコリを絡め取ることができる。
⑧ソファはパーツのすき間にも注意
布製なら表面の抜け毛を掃除用の粘着シートなどで取り除き、その他は素材に合わせて拭き掃除を。クッションや背もたれのすき間にゴミがたまりやすいので、取り外せるパーツは外し、外せない場合は細いノズルを付けた掃除機で抜け毛やホコリを吸い取る。
⑨ロボット掃除機はメンテナンスも大切
自動的に室内をきれいにしてくれるロボット掃除機は、抜け毛掃除の頼れる相棒だ。ただし掃除機をかける手間が省ける分、掃除機そのもののメンテナンスには注意を払いたい。吸引力を保つためにも、たまったゴミ捨てやフィルター類の手入れはこまめに行おう。
その他の抜け毛スポット
①換気扇が汚れていると家中の空気に影響が
油汚れ+抜け毛やホコリがたまっていると、換気扇のパワーが低下して家中の空気が淀んでしまう。2~3ヶ月に一度を目安に、油汚れ用の洗剤を使ってファンをきれいにしておこう。フードカバーや周囲の壁の拭き掃除も忘れずに。
②玄関は水洗いが理想 できない場合は水拭きを
玄関のたたきは、ほうきなどで抜け毛や土ボコリを取り除いた後、ブラシでこすり洗いまたは水拭きを。散歩から戻って玄関で犬のグルーミングをした場合、直後だと抜け毛が空気中に舞っているので、30分ほど待ってから掃除をするのが正解。
③フローリングはワックスで汚れ防止&滑り止め
フローリングに傷がつくと、その部分に汚れがたまりやすく、雑菌が繁殖する可能性もある。犬と暮らす場合は、傷や汚れ防止&滑り止めのためにワックスをかけるのがおすすめ。犬が舐めても安全なものを選び、3~6ヶ月に一度を目安に行うとよい。
④階段掃除には床掃除用ワイパーが活躍
階段は、踏板(足を置くところ)と蹴込板(踏板の奥につけられた垂直の板)の間の「角」が抜け毛がたまりやすいポイントだ。掃除機は重くて扱いづらいので、床掃除用のワイパー&シートなどで拭くのが基本。水拭きした場合は、から拭きで仕上げを。
⑤犬を家で洗うなら排水口の掃除も忘れずに
犬を浴室で洗う際は、排水口にネットなどをつけ、抜け毛をできるだけ流さないようにすることが大切だ。シャンプーの後は
排水口の外せるパーツをすべて外し、抜け毛を取り除いて洗う。排水溝のにおいが気になる時は、専用の洗剤を使ってもよい。
家全体の印象を大きく左右するのが玄関と廊下。日頃から、特にきれいにしておきたいポイントだ。
玄関のたたきは、散歩の後、犬の体や足を拭くことが多いため、抜け毛に加えて土ボコリなどの汚れも多くなる。ほうきや掃除機でゴミを取り除いた後、可能なら水を流しながらブラシなどでこすり洗いを。水を流せない環境の場合は、水拭き↓から拭きの順に拭き掃除をするのがおすすめだ。
廊下に限らずフローリングの床は、ツヤがあると清潔感がアップする。拭き掃除&掃除機がけで抜け毛やホコリを取り除いておくのはもちろん、定期的にワックスをかけておくとよい。床をきれいに見せるだけでなく、犬の爪による傷を防ぐ効果も期待することができる。犬と暮らす家なら、滑り止め効果があり、舐めても安全なペット用のワックスがおすすめだ。
また、抜け毛対策をする際に見落としがちなのが、キッチンの換気扇。犬がキッチンに入ることはなくても、抜け毛は確実に入り込んでいる。換気扇についた抜け毛は油と混ざってこびりつき、換気の効率を下げて家中の空気を汚してしまう。
この他、犬を家でシャンプーしている場合は、浴室の排水口も要確認。抜け毛が詰まると悪臭の原因にもなるので、こまめなケアを心がけよう。
教えていただいたのは……
問:日本おそうじ代行
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https://nihonosoujidaikou.com/
☎0120-537-176
Text:Kumiko Noguchi
Photos:Ayaka Shida、Tajiri Teruhisa
Illustration:Yuko Yamada
Shi-Ba Vol.134『暮らしの 見直し!きれいを保つお掃除アイデアVS抜け毛』より抜粋