第7回 銭神
夕暮れ時に人家の軒先を走る薄雲のようなもの。銭の精が集まったものとされていて、声を発して走るのでそれを刀で切るとお金がたくさんこぼれ落ちてくるという。
卑しいといえばその昔、ある女が昼めし時に先輩女子社員2人から外食に誘われた時の話。女は切り詰めた生活をしていたので丁重にこれを辞退。しかし後から知った話では、先輩社員は拾った金で鰻重を奢ってくれる心づもりだったという。女がついてくると1人あたりの鰻重の単価が下がるので、なるべく着いてこないようにと願って黙っていたそうな。
はい、その女とは私のこと。銭神さま、かわいそうな私に鰻重を食べるための銭をください。
それにしても、あの時の鰻重の恨みが未だに消えないのが自分でも恐ろしい。こういう奴こそ妖怪なのかもしれない。私を欺いて鰻重を食べに行くと、30年以上にわたって祟られますよぉ~。
【参考】
「絵で見る 江戸の妖怪図巻」善養寺ススム/江戸人文研究会 (廣済堂出版)
「ビジュアル版 日本の妖怪百科」岩井宏實(河出書房新社)
絵と文/影山直美