愛犬の歩き方がおかしいと思ったら【膝蓋骨脱臼には要注意①】

小型犬に多く見られる膝蓋骨脱臼。そのまま様子を見ていて大丈夫なケースもあれば、外れやすくなって次第に悪化してしまう場合もある。
やはり正しい知識を持って、定期的に獣医師にチェックしてもらうことが肝要だ。

膝蓋骨脱臼とは?

正常な膝蓋骨

膝関節部分は上下(大腿骨と脛骨)がきちんと揃っており、隙間もなくはまっているのがわかる。膝蓋骨は大腿骨下部の丸い影の部分。全体的に一直線になっている点も重要。

 

内包脱臼を起こした膝蓋骨

右の正常な膝蓋骨の写真に比べると大腿骨が幾分内側に寄っているのがわかる。大腿骨下部中央にあるはずの膝蓋骨はかなり内側に寄っている。そのため外れやすくなる。

 

膝の関節が外れやすくなり歩行に支障が出る可能性も

膝蓋骨脱臼はわりとよく知られた病気のひとつだ。膝の関節が脱臼してしまう疾患で、獣医師にも愛犬家にも「パテラ」という一言で通じてしまうことが多い。

だが正確に言えば、膝蓋骨脱臼は「patellar luxation」。パテラは膝蓋骨のこと。膝蓋骨とはいわゆる「膝のお皿」のことで、関節の曲げ伸ばしをする際に重要な役割を担う。膝蓋骨が大腿骨の滑車溝にきちんとはまっている状態が正常なのだが、なんらかの理由でこの溝から外れてしまうことが、膝蓋骨脱臼なのだ。

膝蓋骨が内側に外れるのが内方脱臼。ほとんどの脱臼はこちらで、小型犬に発症例が多い。チワワもその筆頭犬種といえる。

逆に外側に外れるのが外方脱臼。内方脱臼と比べれば少ないが、大型犬やダックスフンドに見られる。

両方向性脱臼というのは膝が緩くなって内外両方に動いてしまうこと。だがその前にどちらかの方向へまず脱臼して、その後両方向になる。発症例は非常に少ない。

膝蓋骨脱臼は初期段階であれば、まずはその後の様子を観察してみることが重要。金子先生は「お付き合いもできる病気」という。

 

原因は?

先天性によるものと強い衝撃で外れる症例がある

なぜ膝蓋骨脱臼が起きるのか。大きく分けて二つの原因がある。

まずは先天的な異常だ。膝蓋骨脱臼の原因のほとんどがこれなのである。金子先生はこれまでの診察経験から次のように指摘する。
「1歳未満で一度発症することが多く、3〜4歳になる頃には外れやすい状態になるケースが見られます」

先天性の異常というのは、骨や筋肉が正常な状態でないこと。成長期に脱臼しやすい傾向がある。

そしてもうひとつは後天性のもの。事故や激しい運動で膝に強い衝撃を受け、膝蓋骨が外れてしまう、あるいは外れやすい状態になってしまうことだ。活発な子や膝に負担がかかりやすい生活環境にある場合は要注意。

いずれの場合でも、外れやすくなってしまったら、定期的なチェックをして症状の進行状況を常に把握しておきたい。

「脱臼すると犬は何かしらの違和感を脚に感じていると思います。はじめは様子見でもいいですが、脚を触ると痛がるようになったり、立ち上がりたくないという仕草を見せるようになったら、治療が必要になってきます」

金子先生は「違和感から痛み」へ変わった時が膝蓋骨脱臼治療の分かれ目だと言う。


片方の後脚を上げ続けているということがあれば、これも脱臼の症状のひとつ。またスキップするような歩き方も脱臼が疑われる。

 


今までのように歩かない、歩きたがらなくなったり、跛行が現れたりしていたら、脱臼している可能性がある。

 

症状の変化を知っておこう!

〔グレード1〕手で押すと外れて脱臼する
普段はきちんと滑車溝に膝蓋骨がはまっているが、手で押したり強い刺激があると脱臼する状態。症状はほとんどないことが多いが、時折後ろ足を上げたり、スキップしたり、あるいは「キャン」と鳴くことがある。

〔グレード2〕外れる頻度が多くなる
この段階でも膝蓋骨は基本的にははまっているが、脱臼する頻度は高くなった状態。ちょっとした外的刺激や脚の曲げ伸ばし時に脱臼してしまう。症状はグレード1とほぼ同じだが、跛行が現れることもある。

〔グレード3〕いつも脱臼している状態
膝蓋骨がいつも脱臼している状態。手で押せば滑車溝にはまる。脚を曲げた姿勢を維持している感じで、歩行異常が現れていることがわかる。犬自身もそれまでの違和感から、痛みに変わっていることが多い。

〔グレード4〕脱臼が元に戻らなくなる
常に脱臼状態にあり、手で押しても滑車溝に戻らない。ずっと筋肉が引っ張られている状態なので、痛みを伴ってうずくまるかのような歩き方をする。稀にその状態に慣れてしまって、気にせず走る子もいる。

 

症状に気づくには

外れていても平気な子もいる

痛みがなければ、脱臼していても平気で過ごしてしまう犬も多い。そのため、脱臼していることに飼い主が気づかないというケースもよくあることなのだ。

しかし、時折後脚を上げていたり、スキップするような歩き方を目にすれば、何かおかしいと思うはずだ。

また、抱き上げた時に「キャン」と鳴いたり、段差を上らなくなったなど、脱臼を疑うに十分な日常行動が現れたら、まずは動物病院でチェックしてもらい、獣医師の支持を受けたほうがいい。


あきらかに犬の座り方としては普通ではない。関節が外れやすくなってしまっているから、ハの字型に後脚が開いてしまう。


後脚を伸ばすような仕草を見せたり、背中を丸めたり腰を曲げて歩くようであれば、足に違和感や痛みを感じている可能性がある。

 

診察の流れは

愛犬の症状に合った治療を選択するためには

膝蓋骨脱臼と思われる症状が出てから検査、治療に至るまでの流れが左の表である。一般的には図のような診察や検査を行って、適切な治療法を検討、選択していく。

だが、例外も多いのが膝蓋骨脱臼の特徴。個々の症状や状態に合わせて、外科的治療の有無も含めて、適切な治療法を求めていくことになる。その点も頭に入れて、獣医師と十分に話し合ってほしい。

症状
●スキップするように歩く
● 散歩をしたがらなくなる
● 歩行時や抱っこ時に痛みから声を挙げる
● 足を引きずったり、足を上げたりする
● 触ると痛がる
● 段差を上がらなくなる  など

〔グレード1〕
普段は脱臼していないが、手で押すと外れることがある。外れた時に声を挙げることもある。

内科的治療・管理

※若齢または大型犬の場合はG1でも手術を検討

〔グレード2〕
普段は脱臼していないが、足を曲げた時などに脱臼する。スキップしたり跛行したりすることがある。

〔グレード3〕
常に脱臼した状態で、手で押せば元に戻る。後ろ足を曲げたり、腰を落とした状態を維持している。

〔グレード4〕
常に脱臼した状態で、手で押しても元に戻らない。うずくまるようにして歩くことが多い。

内科的治療・管理および[外科的治療(手術)]

●根治治療のためには手術が必要
●グレード4の場合は、完治が難しいことも

 

Text:Takahiro Kadono ※写真提供:金子泰広先生

監修:金子泰広先生
北里大学獣医学部卒業。東京大学動物医療センター外科学研修医。2009年、神奈川県海老名市にアニマルクリニックイストを開設。地域のホームドクターとしてだけでなく、職業講話、体験教室などで地元小中学生を中心に臨床獣医師の仕事を伝えている。

チワワstyle Vol.34『歩き方がおかしいと思ったら 膝蓋骨脱臼には要注意』より抜粋

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