年中、お出かけへの意欲満点なコーギー飼い主さん。
安心安全な犬連れ旅行を楽しむために、まずは犬の性格や行動を見直し、持ち物の準備や注意点をチェックしておこう。
犬連れならではの事前確認と準備が必須!
犬連れ旅行のために、まずは興奮しやすいというコーギーの犬種特性について把握しておくことが大切、と堀井先生。
「コーギーは動くものや音、人や犬などに対して興奮しやすく、それが激しく吠えたり突然飛びつくなどの行動に現れやすいという特徴があります。愛犬が興奮しやすい刺激はどんなものかをあらかじめ把握し、興奮のコントロールができるようにトレーニングしておくといいでしょう」
旅行中の移動や宿など環境の変化に対応できるよう、子犬ならさまざまな刺激に慣らす社会化を行い、1歳以上の犬であれば遭遇した他犬や他人をスルーできるようにするトレーニングをすることで、トラブルを防ぐことができる。
「また攻撃的な犬も旅行については慎重に考えるべきです。いつもと違う環境では興奮しやすく、よその人や犬に咬みつくなどのトラブルになることも。行くなら山奥でのキャンプなど、誰とも接触させない計画を立てる必要があります」
旅先では、いつも以上にマナーを意識すべき場面も増える。トイレトレーニングをしておくことはもちろん、マーキングへの対処も必須。避妊手術していない犬は、他の犬に影響を与えてしまうことも多いので、ヒート中は旅行に連れて行かないか、ドッグランなど他犬との接触がある場所を避けるといいだろう。
「コーギーは吠え声も大きいので宿などで迷惑をかける可能性も大きいです。日頃から吠えやすい犬は旅行自体をやめるか、宿泊する場所を検討したほうがいいでしょう。鑑札登録や混合ワクチンも済ませておき、持病など健康面で心配があれば獣医師に相談してください。
また移動中の配慮も必要。車なら乗り慣れていること、電車ならクレートやキャリーバッグに入れることが必須条件となります」
CHECK!
旅先ではいつもと違う刺激が多く、マナーを意識すべき場面も増える。愛犬が旅行に行ける状態なのかチェックし、多く当てはまるならまず対応する必要がある。
□ 環境の変化に敏感
□ 他人や他犬に興奮しやすい
□ 攻撃的な面がある
□ 乗り物酔いしやすい
□ 吠え癖がある
□ マーキングが多い
□ ワクチンが済んでいない
□ コマンドがきかない
旅前に身につけたい4つのコト
楽しい犬連れ旅行にするためには、移動中や宿などで、犬が落ち着いて行動し、マナーを守ることが大事。次の4つのトレーニングを行っておこう!
①クレートトレーニング
旅をする、ということは普段と異なる環境に身を置くことになる。そんな時、ひとつでも犬が安心できる場所があれば、旅はよい印象として記憶されていくはずである。ベッドやキャリーなどでも構わないが、移動時にも便利なクレートを“安心できる場所”と認識してもらえれば、災害時にも愛犬のストレスを和らげることができるのでおすすめだ。
教える際に大切なのは、クレートへ飼い主が誘導するのではなく、犬が自発的に入ることを選択するように設定すること。まずはクレートの中に毛布などを入れて居心地のいい環境を作りつつ、小さくした食べ物を中に入れることで犬に興味を持たせることから始める。
徐々に中に入っている時間が増えたら、次に扉を閉める練習へ(ハウツーは『コーギーSTYLE』Vol.46でも詳しく紹介しています)。「この中、なんだか好きかも」「扉が閉まっても、いつかは出られるし、オヤツがもらえたり得することの方が多いな」と、どんどんよい印象を与えていこう。
そうすればいずれ「クレート=安全地帯」という認識になり、「入って落ち着こう」という思考になる。決していたずらなどのお仕置きとしてクレートに閉じ込める、さらには叱るなど、嫌な思いを与えてはいけない。
②スルー力トレーニング
コーギーの場合、自分の興奮のコントロールがうまくいかない犬が多い。
「物音や動くものなど、その犬の興奮しやすいスイッチが入ると、急激に興奮度が上がる犬が多いです。興奮度が上がった時、自分で落ち着けるよう日頃からトレーニングしておきましょう」
具体的には、好きな人など犬が興奮しやすい刺激を把握し、それに興奮している間は近づけず、落ち着いたらその人と遊ばせてあげるなどごほうびを与える。
「これを繰り返すことで犬の脳のうち理性を司る部分を鍛えることができます。『興奮しても欲しいものは得られない。落ち着いたらごほうびがもらえる』という学習ができ、旅先でもそれを思い出すことで興奮しにくくなっていきます。飼い主さんも根気のいるトレーニングですが、お互いに旅を楽しむために、ぜひ取り組んでみてください」
ちなみに犬が興奮した時に、『スワッテ』『マーテ』などのコマンドでコントロールしようとしても、犬の耳に入りにくいので効果は薄いそう。あくまでも犬自身に「興奮してもうまくいかない。早く落ち着かないと」と理解してもらうための積み重ねが大切となる。
③トイレトレーニング
いわゆる生理的排尿・排便については、事前にトイレトレーニングをしておくことで対応できるが、そもそもコーギーは室内に入るとトイレを我慢する傾向が強く、問題になりにくいと言える。
一方でマーキングとしての排尿が多い犬の場合は、環境が変わることによって不安を感じ、さらにマーキングが増え、それが宿や観光地などでは問題となることも。毎日の散歩時に、愛犬が頻繁にマーキングしていると感じる場合は、マーキングをさせないためのトレーニングをしていくのがもっとも適切な対処法。
「しかしそれができたとしても、環境が変わると興奮が強くなる犬の場合は、旅先においては飼い主がマーキングをコントロールしきれないこともあります。不安があるなら、旅先ではマナ―ベルトやマナーパンツを着用するのがおすすめ。
あらかじめ着用することに慣らしておくといいでしょう。ただしマナーパンツをつけられるからといって、トイレトレーニングをしなくていいわけではありません。旅先で、マナーを守るための応急処置として考えておいてください」
④基礎トレーニング
乗り物に乗って移動したり、人の多い観光地を歩いたり、他の人や犬も泊まる宿に宿泊したりする旅行においては、日常生活以
上に飼い主が犬の行動を抑制すべき場面は多くなる。
「そこで日頃から、犬の基礎的な行動をコントロールするトレーニングをしておくことも必要です。中でも『呼び戻し』と『引っ張り防止』は特に重要。旅先で万が一脱走した場合、呼んでも来なかったり、興奮して飼い主を引きずって走ったりするようではトラブルの原因となるからです」
呼び戻しと引っ張り防止の背景に必要なのは、犬が自分の名前を呼ばれて反応することと、飼い主とのアイコンタクトができていること。それができれば呼んだら注目してもらえ、飼い主を引きずって走るようなこともないはず。
また飼い主の行動に合わせて待っていられるように“マッテ”を教えておくことも大切だ。他にも横について歩く、“スワッテ”、“フーセ”などができるようにしっかりトレーニングしておくと、より旅行先で過ごしやすくなり、日常生活においてもおおいに役に立つはずだ。
基本的なトレーニングを身につけておくか否かで旅の快適度は大きく変わる
監修:堀井隆行先生
ヤマザキ動物看護大学動物看護学部動物人間関係学科講師。愛玩動物看護師。動物のストレス管理や行動修正を研究し、講演活動や動物病院での行動カウンセリングも行う。共著に『知りたい! 考えてみたい! どうぶつとの暮らし』(駿河台出版社)。
Text:Makiko Nonaka
Photos:Minako Okuyama
Models:Rion、Riru、Sora
コーギーstyle Vol.47『行きたい!と思った今日からコツコツ 旅、事始め』より抜粋