動物病院が苦手な子もあきらめないで!愛犬の健康を守る別の手段② │ 往診のよる自宅での診療

動物病院嫌いな犬の飼い主にとって悩ましいのが、「少し気になる症状」で受診するか? 前半ではパソコンやスマートフォンを使ったオンライン診療の受診方法を紹介しました。

後半では往診による診断や治療補法を紹介していきます。

▶︎動物病院が苦手な子もあきらめないで!愛犬の健康を守る別の手段① │ オンライン診療

往診とは?

自宅で獣医師の治療を受けられる

獣医師や動物看護師が必要な医療機器などを持参して自宅を訪問し、診察や各種ケアを行う。病気・けがの治療や各種検査が可能だが、対応できる内容は動物病院によって異なる。移動の必要がなく、リラックスできる環境で受診できるため犬の心身への負担が少なく、ターミナルケアなどにも適している。

税別14,000円~
※往診専門動物病院わんにゃん保健室の場合(東京23区、往診料、初診料含む)

取材協力:往診専門動物病院わんにゃん保健室
東京都台東区松が谷3-12-4マスヤビル5F(本拠点)
☎03-4500-8701
https://asakusa12.com/

メリット
移動による体への負担がない
診察の待ち時間がない
住み慣れた場所で受診できる
獣医師とじっくり話せる

デメリット
精密検査ができない
緊急での訪問ができないことが多い
往診代がかかるため、通院に比べて治療費がやや高額

受診の流れ

用意しておくと◎

診察が苦手な犬の場合、お気に入りのもので気をひく方法が効果的なことも。犬が好きなオモチャやオヤツなどは、すぐに使えるところに用意しておくとよい。「欲しい!」と意識が集中しやすいので、「いつもよりちょっと良いもの」がベスト。

診察に必要なものを搬入しまずは手洗い

病院スタッフは清潔な室内履きを持参し、玄関で履きかえてから室内へ。荷物を運び入れたら、まずは洗面所などを借りて手を洗う。ハンドソープやアルコール消毒剤、手を拭くためのタオル類は持参している。

②使用する医療機器などを準備する

体温計などの小物から緊急時のための酸素ボンベまで、運び込まれるものはさまざま。床への汚れや傷防止のためのシートを敷き、必要なものをすぐ使えるように、丁寧に並べていく。

③診察の準備をしながら犬との距離を縮める

飼い主と相談して診察するスペースを決め、床に防水シートを敷く。獣医師と飼い主が診察前の問診や治療方針に関する相談を行う間、動物看護師は犬の様子をさりげなくチェック。犬の性格や体調などに応じて、初対面のご挨拶をする。

人懐こく落ち着いた性格のつゆ(メス・4歳)は自分から動物看護師に近づき、荷物を広げる様子を観察。優しく撫でてもらって、あっという間に仲良しに。さらに、飼い主の許可を得たうえで遊びながらオヤツを与えるなどして距離を縮めていく。

動物看護師に対する犬の警戒心を解くことができると保定がしやすくなり、この後の診察もスムーズになる。また、犬の普段の暮らしぶりがわかるため、環境づくりなどに関するアドバイスも可能。つゆの場合は、「食事のボウルは、もう少し高いところにおくと食べやすいかも」。


④ 診察前の問診に時間をかけて飼い主の話をじっくり聞く
「わんにゃん保健室」では、初診の診察時間2時間のうち、約半分を問診にあてている。過去の検査結果や使用した薬の種類が記載されている診療明細などのデータを踏まえて当日の診療内容を決め、診療開始前に同意書にサインする。

 


「次の人が待っているから……と焦らずに済むので話しやすいし、最初に診察内容や料金がわかるのも安心」と飼い主の木幡さん。食べているフードの袋を見ながら話せるのも、往診だからこそ。

獣医師が自宅を訪問する往診では、通院と変わらないレベルの治療や検査が可能。ワクチンの接種やノミダニ予防、マイクロチップ装着なども行うことができる。ただし、麻酔や外科手術、レントゲン検査など専用の機器を必要とすることには対応していない(診療内容の範囲は病院によって異なる)。

移動の必要がなく精神的なストレスも少ないため、体力が低下した高齢犬の利用が多い。また、たくさんの動物が順番を待っている動物病院とは異なり、時間と気持ちにゆとりを持って診察を受けることができる。病状や治療方針について獣医師とじっくり話し合うことができるのも、往診ならではのメリットだ。

動物病院が苦手な犬にとっても、往診はうれしいシステム。健康診断や予防のためのケア、病気の慢性期の治療を在宅で行いたい場合などには選択肢のひとつになるだろう。

健康診断を体験してみた


まずは抱っこで体重測定健康状態のチェックは、動物看護師に抱っこされて行うかわいい体重測定からスタート。結果は8.7kg。肥満の心配はなさそう。

オヤツで気をひけるタイプの場合、
頭を押さえるかわりにオヤツをあげながら処置することも。

獣医師+動物看護師2人のチームだから診察がスムーズに進む
診察が苦手な犬の場合、暴れたり攻撃的になったりすることがある。複数の動物看護師が同行することで、体に加えて頭も保定するなど、臨機応変に対応することが可能に。犬に負担をかける処置などを短時間で終えることができる。


・攻撃的になる犬の場合は、もうひとりの動物看護師が頭を押さえてスタッフの安全を確保。
・どのお宅のどんなお部屋でも、床に防水シートを敷いて汚れなどがつかないよう対策。


検温もスムーズに完了
診察に協力的なつゆは、検温もササッと終了。採血などが必要な場合は、検温後に行うことが多い。血液検査の結果は、次回の診察時に聞いたりメールで受け取ったりすることができる。


爪切りが苦手でも大丈夫
ひとりが犬を抱いて足を押さえ、もうひとりが頭を保定した状態で、獣医師が爪をパチン。嫌がる犬が多い爪切りも、ふたりで保定することで安全に素早く終えることができる。

お借りします

抱っこが苦手な犬を抱く場合、
安全確保のためにタオルでくるんで動きを封じることも。

抱っこが嫌いな犬はバスタオルでくるんで
バスタオルはエコー検査などの寝て行う処置の他、抱っこを嫌がって暴れてしまう犬の「おくるみ」や、興奮をしずめるために頭にかけて視界を遮る「目隠し」として使われることもある。

前足も後ろ足もくるむことで身動きは取れないが、犬が落ち着いてくれることも。

エコー検査は、横向きや仰向けで行う。しばらくじっとしている必要があるため、
動物看護師が後ろ足と前足~頭を保定し、優しく声をかけ続ける。

仰向けにする場合。下に敷いたバスタオル以外の2枚をそれぞれロール状に巻き、犬の体の両側へ。
体が左右に倒れにくい状態にし、足とタオルを押さえて保定する。

エコー検査は床にゴロンとさせて
エコー検査は、防水シートに飼い主が用意したバスタオルを重ね、その上に犬を寝かせて行う。調べる箇所にエコーゼリーを塗ってプローブを当て、モニターの画像を確認していく。

お借りします

点滴用の輸液剤はレンチンして使用
点滴を行う場合、輸液剤が冷たいままだと体温低下の原因に。犬の体への負担を軽くするためには、温めてから使うのが理想。電子レンジがあれば、使えるようにしておこう。

住診専門動物病院「わんにゃん保健室」では、獣医師1人+動物看護師2〜3人のチーム診療を行っている。複数の動物看護師が同行するのは、診察を安全に効率よく行うためだ。

飼い主が準備しておきたいのは、過去の検査データやかかりつけの診察内容がわかる明細、普段のフード、服用中の薬など。気になる動きや発作などは、動画を撮っておくとよい。下痢や嘔吐をした場合は、現物を少量とっておくと役に立つ。

さらに、バスタオルを3枚。犬を落ち着かせたり保定したりする時に使うものだ。この他、犬の気をひけるオヤツなども用意しておこう。

往診は、問診からスタート。検査データのチェックや犬の状態の聞き取りを行い、この日の診察・検査内容や治療方針を決めたうえで同意書にサインする。獣医師が問診を進めている間に動物看護師によって診察の準備が整えられ、同意書の内容に
沿って検査や治療を進めていく。

東京都在住の木幡さん&つゆは、簡単な健康診断と爪切りを体験。リラックスした様子のつゆは、皆にかわいがってもらいながら各種検査をすんなりクリア。片付けを終えて帰る病院スタッフをシッポを振って見送り、往診体験のミッションを完了した。

衣類に消毒剤をスプレー。スタッフの衣類が防水素材なのは、
汚れや毛も落ちやすく、消毒しやすいため。

シートも隅々まで拭いて消毒。消毒剤は動物が触れても安全で、
消臭効果も高いものを使用している。

シートや衣類は使用後にしっかり消毒
診察終了後、診察に使用した防水シートと動物看護師の衣類をアルコールで丁寧に消毒する。使用後、すぐに消毒をすませておくことで、次の往診先に安心して持ち込むことができる。

Text:Kumiko Noguchi Photos:Minako Okuyama

Shi-Ba Vol.131『動物病院が苦手な子もあきらめないで 健康を守る別の手段』より抜粋

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