まる子:2021年9月現在、14歳。ここ半年、体重は9.1キロをキープ。オヤツは茹でたマグロの赤身、蒸しカボチャ、白米。猫兄妹8歳をいじめるのも彼女の生きる糧!?
ドーパミンが分泌されるドキドキワクワク感がある号令
「シニア犬へのトレーニングは、脳に良い影響を与えます。記憶に残るためには感情が大きく動くことがとても大事です。ほめられた、おいしかった、嬉しかった、といった楽しい時間を飼い主さんが提供することで、何歳になってもトレーニングをすることができます。また高齢になると、足拭きやブラシなどのお手入れを嫌がる犬も増えます。
今までやったことを忘れないためにも、トレーニングを毎日の生活に取り入れてみましょう。遊びが好きなコなら、一緒にオモチャで遊ぶのも良いでしょう。ただし、ボールなどを追いたい気持ちはあっても早く動けないこともあります。興味が湧くまでは犬の目鼻の先でオモチャを動かし、興奮してきたらゆっくり動かして遊ぶなどの配慮をしてあげてください」
トレーニングを行う際、新しい号令を教えるのも良いが、今までできたことをやり、ほめて安心させるのも大切。
「高齢の犬は体のどこかに痛みを抱えている可能性があります。痛みが強く出ないよう、ゆっくりした動作で、繰り返す動きは避け、一つの号令は3分以内に終えましょう。視覚か聴覚のどちらかが低下しても戸惑わずにできるように、ハンドサインと声かけのセットで教えておくのがオススメです。犬が集中できるように、テレビがついていない静かな時間帯を選び、快適な温度が保てる場所、滑らない柔らかい床の上で練習しましょう」
老化が進むと号令を出しても、混乱して指示通りに動けないこともある。
「こんな時は無理に何回も号令を出さず、確実にできそうな号令に戻って、できたらほめるようにします。マテやフセなど少し待つ時間がある号令は、“わぁ~、オヤツ、いつもらえるんだろう~?”といったドキドキワクワク感が増し、ドーパミンが出るので脳に刺激を与えてくれます。ただしオヤツのあげ過ぎには注意が必要です」
モグモグと食べられる量だと集中力が切れやすく食べ過ぎにもつながるので、口に入ったらすぐにゴクっと飲み込めるくらい、小さくカットしよう。
シニア犬がトレーニングを定期的に行うと、わがままが芽生えにくい、寝たきりになりにくい、認知症の進行が緩やかになった、という効果が実際にあったそう。ぜひ実践してみよう。
ただし、子犬の頃からトレーニングの経験がほとんどないシニア犬に新しく号令を教えることは難しい。
「トレーニングをほとんどしていない場合は飼い主さんが無理に行おうとせず、ドッグトレーナーなど専門の人に入ってもらうのが良いでしょう。シャンプーなどもプロに任せ、犬が飼い主以外の人と関わる機会を作ることで、脳に新しい刺激が加わります」
老化はあっという間に進む。このことは常に肝に銘じておきたい。帰宅の際に迎えに来なくなったら聴覚の低下が疑われる。耳が聞こえづらくなれば、今まで「ダメだよ」と言えばやめたことでも、行動の制御がきかなくなる。
また、嗅覚が低下すると他の動物への関心が薄れたり、食欲も落ちる。シニア犬は自分の体の変化に不安や葛藤を抱えていることも多い。なんだか様子がおかしいと感じたら獣医師に相談しながら、愛犬が安心できる関わり、生活環境の改善を行おう。
こんなこと、やってみよう
青いオモチャはよく見える!
犬が検知できるのは青、黄、灰色と言われている。少し視力が落ちたら、白っぽい滑らない床の上で青いオモチャを使い、それをゆっくり動かして遊んであげるのもオススメ。
ノーズワークはおいしく楽しい
視覚や聴覚が低下してきても、嗅覚を使ったノーズワークを取り入れて、脳に刺激を与えることができる。大好きなオヤツを隠して見つけさせる遊びなどを積極的にやってみよう。
こまめなスキンシップでオキシトシンが出る
触覚と味覚は最後まで残ると言われている。視覚や聴覚が低下しても、触ってあげることで飼い主の存在に気づけるので、優しく撫でてあげよう。スキンシップ自体は安心させるためのホルモンであるオキシトシンが出やすくなる。背骨の両脇にあるツボを毛の流れに沿って、首の付け根からシッポの付け根まで撫でるのもオススメ。1回の時間は3分以内に。1~2時間の間隔をあけながら回数を重ねて行おう。
鼻が乾いていたら湿らせてあげよう
鼻の中はにおいを受け止める受容体があり、その湿った粘液の部分ににおいの物質が溶け込んでにおいを感知する仕組みになっている。におい物質が鼻の中で溶けるためには、鼻が湿っていないといけない。老犬になると水分不足で鼻が乾きがち。自分の喉が渇いていることに気づけない犬も多いので、頻繁に水分を与えたり、鼻に柔らかいフードをつけて舐めさせるなど、関わる時に鼻を湿らせてあげるとよい。
最近のヒヤッとした出来事(8~9月)
いよいよ来たっ!挟まり&うんこのお漏らし
8月5日 挟まり事件発生!
8月27日 動物病院で1年ぶりにシャンプー
8月28日
室内でうんことおしっこを漏らす
動物病院で診察
痛み止めと整腸剤をもらう
8月29日 食欲皆無・腰が立たない
8月30日 夜からゴハンを食べ始める
8月31日 ほぼ回復するも夕方庭で下痢
9月2日 便も固くなり散歩も最後まで歩けるように♪
まずは「挟まり」事件。今までも夕食後に猫タワーの足元や、ソファとカーテンの間に頭を突っ込み自力で出たりしていたが、今回は違った。20cmしかないスペースに挟まり身動きが取れず悲鳴を上げたのだ。場所は収納棚と南側の窓の間。事件発生時は猛暑日。飼い主が在宅で本当に良かったと胸を撫で下ろす。
「こんな狭い所に入るはずがない」との過信は老犬暮らしには禁物。室内を点検しまる子の頭が入りそうな場所は全て塞いだ。
次が室内でのうんこのお漏らし。おしっこは4~5回経験済みだが、うんこは初体験。前日は動物病院にてシャンプー。数名のトリマーさんが短時間で仕上げる“老犬VIP待遇”だったが1年ぶりで精神的にも肉体的に負担をかけたことが原因か? 整腸剤と、背中と腰の痛み止めの薬を3日間服用。
この間、ぼんやりして無反応だったので「このままさらに症状が進むのか」と心配したが、1週間後には猫をいじめたり、ゴハンを催促する元の生活に戻った。意識がはっきりしている時と、そうでない時が交互に訪れる。人間と比べるのはどうかとも思うが、実家の認知症の父親の症状とよく似ていて興味深い。
まとめ
犬が得意な号令を出して、できたらたくさんほめて安心させてあげよう
※シニア犬トレーニングについては、ペットライフサポートFreeの服部まゆみさんのお話を参考にしています。
https://www.plsfree.com/about.html
監修:茂木千恵先生
東京大学大学院農学生命科学科獣医学博士課程卒。獣医師。専門は獣医行動学。ヤマザキ動物看護大学准教授。教育・研究活動のかたわら、東京都町田市内でペットの問題行動治療やパピークラスの開催も行う。「飼い主が幸せになれば犬も幸せになり、犬が幸せになれば飼い主も幸せになる」という考えをベースとし、飼い主の話をじっくり聞くことも大切にした指導は、多くの人や犬から好評を得ている。
Text&Photos:Mari Kusumoto
Shi-Ba Vol.121『おとボケまる子日記』より抜粋