犬びより

日本犬は野生動物のような犬!? 個性にあったコミュニケーションの基本

2019/08/20

日本犬はしつけが難しい、と言われるのはなぜ?かつて日本には日本犬しかいなかったはず。しつけが合っていないと考えるべきかもしれない。彼らの個性に合ったつき合い方を見直そう。
 

 

特殊な犬というイメージの理由

日本犬のしつけ

日本犬はしつけが難しい、気性が荒い、飼うのが大変な犬。柴犬をはじめ日本犬は、このようなマイナスのイメージを持たれることがあるのはなぜだろうか。

日本犬は自立性と防衛本能が強い傾向がある。これらは野生動物が持っているもので、洋犬に比べて家畜化の程度が低い日本犬にもよく見られる。

自立心が強めの犬は、飼い主さんへの依存が低くなり、自分がやりたいことを優先しがち。また、防衛本能は自分の身を守る性質であり、危険を感じた時に強く警戒し、対象を排除しようとするもの。

日本犬のしつけが難しいといわれる理由は、主にこの2つの特徴のためだろう。

しかし、問題は日本犬の性質や能力ではない。『犬は人に従うもの』という考えで、一方的に命令を出すしつけが向いていないのだ。

日本犬は人に馴れる野生動物』と思おう。個性に合った方法で教えれば、素晴らしいパートナーになってくれるはず。

かつて日本には日本犬しかいなかったはずなのに、いつの間にか扱いが難しい特殊な犬種扱い。この現状には、日本人と犬の関わりの変化も関係している。下で詳しく紹介しよう。

 

日本人と犬の関わりの変化

日本犬のしつけ

■犬種
猟犬や番犬だった頃は日本犬や日本犬系雑種が大半。近代の洋犬ブームによって日本犬が減少したが、保存活動によって頭数が増加した。ハチ公などの影響で忠犬の象徴になるが、室内暮らしが増えるにつれ、洋犬のイメージで飼育する人が増えた。

 
■ブリーディング
犬の交配は、放し飼いの自然交配や、飼い主による個人的な繁殖が長らく主流。不合理に見えるが、健康や気質に問題がある犬は自然淘汰され、飼いやすい犬の遺伝子が残されたと推測できる。現在は気質よりも犬種標準に沿った容姿が重視される傾向がある。

 
■動機
狩猟採集の縄文時代の頃は、狩猟の際の猟犬として重宝された。また、集落に危険を知らせる守護の役割もあった。狩猟から農耕が中心になった弥生時代から近代までは、家の番犬として飼育された。現在は癒し役も兼ねて、かぞくの一員に変わってきている。

 
■環境
近代まで犬は外飼いが大半で、人と一定の距離感がある暮らしをしていた。自立性がある犬に向いた生活環境。現在は室内飼いが増え、人と密着した暮らしに変わった。常に人の目にさらされた環境は、犬のプライバシーが守れないこともある。

 
■しつけ
昔の猟犬は飼い主の経験や口伝で訓練を行い、町で暮らしていた犬は、放任されていた状態。その後、人の幼児に対するしつけと同じような方法や、チョークチェーンを用いた服従訓練に。現在は犬のモチベーションを高める動機づけのトレーニングが人気。

 

日本犬の特徴を見直す

日本犬のしつけ

日本人との共生によって育まれた日本犬の自立心と防衛本能。人と犬は、互いに自立して尊敬している関係が理想

自主的に考えられる犬は、指示をしなくても良い行動をするので、手がかからずに楽なところもある。『犬は黙って従え』という人に自立心は無用かもしれないが、あった方が豊かなコミュニケーションができる。

防衛本能は番犬として役立つ。日本犬は目的を持って吠えるので、吠え続ける問題は少ないはずだ。

柴犬は幅広い個性が見られ、系統によって変わるため、子犬を迎える時には両親犬を見るといいだろう

甲斐犬は気性が荒いといわれるが、実は慎重派。

紀州犬は穏やかなタイプであっても、所有欲が強い傾向が見られる。

四国犬は系統が狭いので、個性の幅が少なく、犬種の性質が定まっている印象。

北海道犬は所有欲が強めのタイプもいれば、フレンドリーなタイプもいる。かつては系統の違いがあったが、混ざって個性の幅が広がったのだろう。

秋田犬はおっとりしているように見えるが、警戒心は備えている。

 

日本犬の成長過程の特徴

日本犬のしつけ

■子犬期出生~4ヶ月
人なら小学校卒業くらいまで。母犬や親代わりの人に頼って育つ時期なので、世話をしてくれる存在に意識を向けている。何でも受け入れる時期なので、ほめ言葉・許可・禁止などコミュニケーションの基本を教える。

 
■思春期4ヶ月~10ヶ月
人なら中学生~高校生くらい。性別による体型や行動の違いが明確に。洋犬は子犬と変わらない犬もいるが、多くの日本犬は心理的に自立し始め、素直な犬でも不服従が目立つようになるが、正常に成長している証拠。

 
■若犬期10ヶ月~3歳
人なら高校卒業から20代前半くらい。体は一人前だがまだおとなの落ち着きはなく、エネルギッシュな時期。あふれるエネルギーの導き方によって、遊び好きで活発な犬にも、破壊行動や脱走を繰り返す犬にもなる。

 
■壮年期3歳~8歳
人なら20代後半から50歳くらい。おとなとしての落ち着きが出て、気力・体力も充実している働き盛りの時期。おとな同士として一定の敬意を持って接していれば、忠実さと自立性を兼ね備えた日本犬になる。

 
■熟年期9歳~11歳
人なら50歳から60歳すぎくらい。体力は次第に低下するもののまだ風格は十分。血気盛んなことによる問題は少なくなる反面、頑固さは増す。トレーニングで性格を変えるのは難しい時期なので、生活を工夫する。

 
■初老期12歳~14歳
人なら60代半ばから70歳すぎくらい。若い頃にできたことができなくなることも。車の荷台へのジャンプなどを失敗すると急に自信をなくして落ち込むことがあるので、失敗させないように先回りする気づかいを。

 
■老年期15歳~
人なら70代半ば以降。体力や運動能力はさらに低下し、視覚・聴覚もかなり衰える。犬によって衰える部分は全く異なるので、それぞれに合った補助方法を工夫する。我慢する機会は極力減らしてあげること。

 

日本犬と上手につき合う工夫

日本犬のしつけ

■ほめる

1.ほめ言葉を決める

・「ピンポーン!」というわかりやすい合図にする
・正解のほめ言葉は1種類に決める

正解を伝えるためのほめ言葉は、クイズ番組の「ピンポーン!」という合図と同じ役割。ほめ言葉は家族で相談して1種類に決めておく。ほめ言葉は「いいこ」「よしよし」「GOODなど、短い単語であれば何でもOK。「正解と「愛情を伝えるための言葉が混同しているケースが多いので、分けて考えよう。

 
2.口調を意識する

・テンションを上げなくてもいいが明るいトーン
・ほめ言葉を言うシチュエーションに合った口調

犬をほめる時の口調と叱る時の口調が似ている人もいる。無理にテンションを上げなくてもいいが、犬がほめられていることを理解できるように、やや明るめのトーンを意識。また、犬がマテをしている時やくつろいでいる時など、止まっていることをほめる時は落ち着いた口調で。動いている時にほめる場合は勢いがある口調を心がける。

 
3.ほめるタイミング

・人が困ることをやめた
・引っ張らずに歩いている
・寄り添ってくつろぐ
・犬から遊びを誘ってきた
・号令に従ってオスワリをした
・散歩の時に飼い主を見る

犬が良い行動(正解の行動)をしている時は、人が困らないので言葉をかける機会が減りがち。犬が自主的に良い行動をした時は、すべてがほめるチャンス。日常生活のふとした瞬間を見逃さないようにほめてあげたい。ほめ言葉と口調を意識して「正解!」を伝えよう。

 
▼ほめ言葉の目的は犬に正解を伝えること

犬をほめる目的は、「その行動が正解!」と犬に伝えること。そして、正解の行動が犬が繰り返したくなるように、うれしいことを提供する。犬のほめ方は、頭を撫でて「いいこ、いいこ」と言うイメージが広まっているが、これは人とのスキンシップを好む洋犬向け。日本犬は急に触れられるのが苦手なタイプが多いため、ほめ言葉とごほうびを活用するほうが好まれる。

 
 
4.与えるごほうび

ほめ言葉をうれしいことがある合図にするためにごほうびを活用する。日本犬は急に触られることを好まない犬が多いので、ごほうびは撫でるよりもうれしいことを提供する方が適している。シチュエーションに合ったごほうびを与えよう。

・動いている時のごほうび
散歩や遊びの誘いなどの動いている時のごほうびは、犬のテンションが上がるうれしいことにする。例えば、オモチャで引っ張りっこ遊び、じゃれ合い、好きな場所のにおい嗅ぎ、思いきり走る、など。

・止まっている時のごほうび
犬が止まっている時のごほうびは、犬のテンションが上がりすぎないうれしいことにする。例えば、犬が好きなオヤツを与える、ほめ言葉を落ち着いた口調で言う、など。

 
■許可する

1.許可の言葉を決める

・ほめ言葉などの合図と似ている言葉は避ける
・マテから動かない犬もいるのでうながす口調にする

許可の言葉は、ほめ言葉などの合図と異なるものにする。ほめ言葉が「いいこ」なら似ている「いいよ」は避けて「OK」に、ほめ言葉が「よしよし」なら、似ている「よし」は避けて「いいよ」や「OK」にする。日本犬は腰が重いタイプが多く、許可の言葉で動かない犬もいるので、勢いよくうながす口調と身ぶりを心がける。

 
2.犬に許可を伝える

・オスワリやマテの号令
・言葉と手の合図で許可

オスワリやマテの号令で犬の動きを止める。犬が楽に待てる時間は決まっているので、無理に長くする必要はない。号令に集中している間に、「OK」などの許可の言葉を言う。腰が重いタイプの犬は、手の合図も加えて身ぶりでうながす。それでも動かないタイプは、背中などを軽くポンポンと叩いてもうながす。

 
▼合図があるまで動かないことを教える

犬に許可を教える主な目的は、「動いていい」と伝えること。例えば、オスワリをしている犬に「立って自由にしていい」と伝える、など。多くのご家庭で見られるケースは、犬にオスワリをさせた後、犬が勝手に立ち上がる、もしくは、人がオヤツなどのごほうびを与えるタイミングで立ち上がる、というもの。これは、「指示されたことを勝手に中断していいと教えているような状態。「許可の合図があるまで動いてはいけないと教えるために、許可を活用しよう。

 
■叱る

1.禁止の言葉を決める

・「ブッブー!」というわかりやすい合図にする
・禁止と警告の言葉を分けて2種類決めておくと便利

禁止を伝えるための言葉は、クイズ番組の「ブッブー!」という合図と同じ役割。ほめ言葉と同じように、「ダメ」「NO」「コラ」などのいずれか1種類に家族で統一する。犬が意図せずに(悪気が全くなく)困った行動をしそうになった時のために、「それ以上はいけない」という意味の警告の言葉も決めておくと便利。犬が区別できるように、禁止の言葉とは異なる「あれ?」「もしもし」などにしよう。

 
2.禁止のタイミング

・より悪い行動を禁止してやや良い行動をほめる

犬が困った行動をする時には、より悪い行動を禁止して、やや良い行動をほめることが基本。加えて、犬が困った行動ができないように、生活環境を整えておくことも大切だ。

 
▼言葉で禁止事項を伝える

犬を叱る目的は、「その行動は禁止!」という意味を理解させること。ほめ言葉や許可の言葉と同じように、禁止の言葉をしっかり教えることが重要になる。犬を叱っても困った行動を繰り返す場合は、禁止が伝わっていない。大声で感情的に叱っている状態は、犬にその場しのぎの処世術を教えているようなものなのでただちにやめる。また、犬が禁止の言葉で困った行動をやめた時は、ほめるタイミングでもある。叱るばかりではなく、ほめることも忘れずに意識しよう。

 

まとめ

日本犬のしつけ

日本犬の飼い主さんのベテランの中には、『日本犬にしつけはいらない』『号令なんか教えるとかえって犬がバカになる』という方もいる。これは本人が意識していないだけで、ごく自然に良いコミュニケーションができている状態。あるいは、犬と距離があって接する時間も短く、困った問題が起きようがない状態。

しかし、日本犬を身近な室内で飼育する方や、初心者の飼い主さんがしつけやトレーニングをしなければ、困った問題が山積みになってしまうかもしれない。それ以上に、コミュニケーションが図れない状態はもったいないこと。

日本犬は人に馴れる野生動物のようではあるが、ずっと日本人と共生してきた犬だ。互いにより良いパートナーになれるように、つき合い方を見直しましょう。

 
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Shi‐Ba vol.77『日本犬ならではのしつけ法、はじめました。vol.1 日本犬は野生動物のような犬!?』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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