3年で50万人の来館者を達成・秋田犬の魅力が起こした快挙│秋田犬の里

秋田犬の里
秋田県大館市御成町1丁目13−1
営業時間 9:00〜17:00
秋田犬展示室 9:30〜16:45
管理室☎ 0186-59-4649 お土産コーナー☎ 0186-57-8120(大館市観光協会)
休館日12/31、1/1

大館市観光交流施設「秋田犬の里」は、大館市生まれの忠犬ハチ公が飼い主を待ち続けた大正時代の渋谷駅をモデルとして建てられた。写真は大館市が飼育している誉(メス・3歳)。

 

秋田犬を中心に生まれる、コミュニティーの輪

秋田県北域の窓口である、大館能代空港から車で30分。大館市の「秋田犬の里」は、秋田犬と触れ合えるだけではなく、歴史を知ることができる秋田犬ミュージアムのある複合施設だ。また、お土産ショップや、観光案内所もある。

「秋田犬の里」にいる20頭もの協力犬は、近所で飼われている犬やブリーダーさんの犬だ。午前と午後で1~3頭ずつ、交代で展示室に滞在し、飼い主さんと遊んでいる姿などを見ることができる。

当日の午前中に展示室にいたのは、美奈子、洋子、愛子。3頭は特に素直で明るい性格なのだという。

とはいえ、秋田犬は繊細な犬。自宅とは違う環境なので、それだけでストレスを感じてしまうこともある。展示の練習は最初は10分から開始して、徐々に慣らすようにしているそう。

展示犬のプロフィールには、犬の名前や特徴が書かれているが、その内容が面白い。洋子はバブリー系女子と書かれてある。荻野目洋子にかけた、キャッチコピーとのこと。来館者を楽しませる工夫が至る所にある。

「2019年に開館以来、3年で50万人の来館者がありました。驚くべきことは、全国47都道府県から来館者があったということです。このことからも、秋田犬が愛されていることがよくわかります」というのは館長の佐藤さん。

今はコロナ感染を防ぐため、窓越しでの見学になるが、次々と観光客が集まり感嘆の声が漏れている。はじめて会った見学者さん同士で「あの犬の耳、かわいいですよね」などと、交流が生まれているのが印象的だった。

「地元の方の常連さんもいらっしゃいます。秋田犬を自分で飼えない方は、頻繁に来館してくれます。病院のバス待ちなどの暇つぶしに来る人もいますよ」と説明してくれたのは、スタッフの藤川さん。

取材当日、地域の小学生たちが課外授業で外の広場に来ていた。秋田犬を中心にしたコミュニティーの誕生の息吹を感じられた。

秋田犬タワー。観光客の撮影スポットだ。スケート選手ザギトワに贈られた「マサル」をモデルにしたぬいぐるみ約160体によるタワー。

協力犬一覧。 ハロウィーンのための飾りつけも。

「青ガエル」という愛称で呼ばれ、東京で運用していた電車車両も展示されている。渋谷駅のハチ公像の近くにモニュメントとして置かれていたが、再開発の影響で、当施設の芝生広場に移設された。

 

秋田犬は個性が豊かなことを展示を通じてわかってほしい

撮影当日、途中で展示室にやってきた秋田犬。“日本男児”という渋い名前!

藤川さんは、秋田犬の里の看板犬の誉の飼育担当だ。地域おこし協力隊として県外から大館市に移住し、働いている。

「秋田犬のことが好きで、いつか飼いたかったんです。そんな時に、大館市で、犬を飼いながら暮らせる仕事があると聞いて応募しました」

名前も公募で選ばれた。「誉れ高き秋田犬らしい強さと美しさを兼ね備え、活躍してほしい」という願いが込められている。秋田犬の里でのお出迎えの他に、時には大館駅の3代目観光駅長として、電車のホームに観光客を出迎えに行く。

広場には、秋田犬をモチーフにした遊具があった。これは、大館市のゆるキャラ「はちくん」。「大館のおいしいもの」が大好きで、少しメタボ。永遠の8歳の秋田犬の男の子という設定なのだそう。

電車を降りると秋田犬が待っていてくれる。まるで、ハチと出会ったような気分に浸ることができるだろう。想像するだけで、胸が高鳴るシチュエーションだ。

誉は市民に愛される存在として、また大館市の魅力の発信役として、活躍しているのだ。

藤川さんの休日には一緒に出かけ、大館市の自然を楽しんでいる。紅葉や新緑の季節に美しい岩神ふれあいの森や、貯水池。石田ローズガーデンなど、大館市には美しい場所がたくさん。

少し車で走り、十和田湖まで行くことも。人も犬も楽しめる環境が、この地域にある。大館市を起点に、旅をするプランもよさそうだ。そういったアドバイスも、秋田犬の里でしてくれる。藤川さんは、この施設での体験を通じて、秋田犬には様々な個性を持つ犬がいることを知ってほしいという。

「誉はフレンドリーですが、そっけない犬もいます。でも、どれも秋田犬の本当の姿ですので、そういうところも楽しんでいただきたいです」

秋田犬に対する固定されたイメージはとても強い。

しかし今回の取材でも感じたが、実際はそのイメージから外れた性格の犬も多い。

個性の多様さに驚かされ、ますます魅力的な犬だと思うようになった。ぜひ秋田県を訪れ、たくさんの秋田犬に会ってみてほしい。癒されるだけではなく、先入観を取り除いてくれる学び多き旅になるはずだ。

秋田犬の特徴でもある長い脚で体を掻く。ゆっくりとした動作がかわいい。本物に触れ合うことで、より深く独特の魅力を感じられる。

海外も含めて秋田犬ブームになったが、秋田犬は昔からいるこの地域の犬。 「みなさんが秋田犬と触れ合い、喜んでいただく姿を見られると、私たちも嬉 しいです」と藤川さん。

秋田犬に会いに来て秋田県の自然や文化を楽しんでほしい

Shi-Ba vol.126「秋田県と秋田犬」より

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