福と幸せをよぶ【妖怪さんと柴犬さん】第1回 アマビエ

はじめに

時々、愛犬の様子を見ていてドキッとすることがあります。このコたち、「何か」見えている?

壁の天井に近いところをジーッと見つめる姿は、まるでお告げを聞いているかのように真剣。きちっとオスワリ、耳は前にビシッと集中しています。またある日の散歩では、まるでそこに「誰か」いるかのようにグルリと大回りして避けて歩く。もちろん私には何も見えません。

もしかしてそんな時、妖怪にでも話しかけられてるんじゃないか、なんて思います。きっとその妖怪は悪い奴ではなくて、助言をしてくれたり遊んでくれたり、たまにはからかわれたり。

そんな心優しいお茶目な妖怪のことを、もっと知りたくなりました。

第1回 アマビエ

江戸時代後期、肥後国(今の熊本県)に出たという妖怪。光り輝く姿で海中から姿を現して疫病の流行を予言し「その時は私の姿を描いた絵を人々に早々に見せよ」と告げて、再び海へ消えていったそうな。

アマビエが描かれたかわら版は、京都大学附属図書館に収蔵されています。私がふと気になったのが、疫病の予言はしてもご利益があるとまでは書かれていないこと。でもかわら版に描かれたちょっとひょうきんなアマビエの絵を見ていたら、これを描き写して誰かに見せたくなりますよね。自分の大事な人にアマビエを見せて病気から守りたい。その思いこそが人々の心を救うのかも。

ちなみに予言した上でご利益があるとされている妖怪には、アマビコや人面牛身のくたべ(くだん)などがいます。彼らの姿を見れば疫病を逃れられるとされています。

【参考】
「決定版 日本妖怪大全」水木しげる 講談社文庫
ふーぽコラム

絵と文/影山直美

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