狂犬病は致死率ほぼ100%の恐ろしい病気だ。できるならばかかわり合いたくない。本特集では、狂犬病について深く考えてみよう。
犬が噛む4つの理由
不測の事態を避けるためにも、犬が噛む理由を知っておこう。もちろん国内の犬の場合も同じなので覚えておくとよいだろう。
・追い詰められる
犬は逃げられない状況に追い込んでしまうと噛むことがある。例えば、犬のいる方向に突進するなど、逃げ道がない場所に追い込んでしまうと危険。特に、繋がれている犬の場合は気をつけた方がよい。
・目を合わせる
ケンカしたくない時は目を合わさないというのが犬の世界でのルール。知らない犬の場合は特にだが、人間に目を合わされた場合でも、ケンカを売られていると思い、噛んでくる犬もいる。
・寝ている時に触られる
人間の場合寝ている時に身体を触られると、びっくりしてしまうだろう。それは、犬も同じである。寝ている時、急に手で触られると、びっくりしてしまい、反射的に噛んでしまうことがあるから注意を。
・おおいかぶされる
小さい犬だと特にだが、例えば頭をなでようとして犬の頭上へと手を下ろした場合でも、びっくりして噛んでしまうことがある。自分の頭上から手がおりてくると、圧迫感も感じる。それらが恐怖に繋がり噛んでしまうのだ。
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海外旅行保険が大事なワケ
海外旅行保険は、空港の保険加入カウンターで手続きができる。主に物を盗難された時、ケガなどで病院に行った時にかかった費用を負担してくれるというもの。5000円程加入料がかかるが、帰国後の手続きで旅行先と日本での治療費と病院までの交通費がまるごと返金される。ただし、領収書はもらっておかなければいけないので注意を。かなり役に立つのでもしもの場合のためにはいっておこう。
狂犬病は身近な感染症
厚生労働省によると、1950年以前は日本でも多くの発症事例が見られ、たくさんの人が死亡していた。わりと最近まで国内でもあった病気なのだ。冒頭でも話したが、致死率ほぼ100%という恐ろしい病気。
ウイルスは患部から体内に侵入し、ゆっくり全身の血液に混ざり、やがて神経細胞に侵入していく。発症すると高熱がでて、水が怖くなったり、幻聴、精神の錯乱を起こしながら死亡に至る。
ちなみに犬が発症した場合も同じような症状が起こる。だが、発症するまでは見分けるのが難しい。
周辺国は狂犬病でいっぱい
実は、海外で犬、ないしは他の動物に噛まれたという検疫所への相談は、結構多いらしい。2010年に関西空港検疫所の相談室で受けた狂犬病についての相談は1年で295件だった。
犬の他にも、こうもりやリス、猫に噛まれた場合も感染することがある。また、引っ掻かれて血がでた場合も可能性は低いが、もし爪に唾液がついていたら感染してしまうこともある。
現在、狂犬病のない国は、日本、イギリス、オーストラリア。世界何百国もあるなかで、3カ国だけ。狂犬病がないということが、どれだけ奇跡的なことだと分かるだろう。日本の周辺国も、狂犬病がたくさん存在する。
現代は、人間も動物もグローバルに世界を飛び回る時代だ。以上のことからも、狂犬病がいつ日本に侵入して、発症事例がでてもおかしくないと言えるのである。では、何故日本で狂犬病が見られなくなったのだろうか?
現在、日本に狂犬病がない理由。それは、飼い犬への狂犬病ワクチン接種の徹底した義務化にある。狂犬病は、他の動物も発症する病気。だけど犬だけにワクチン接種を徹底している理由は、潜伏期間が長いということがあげられる。
猫などは、感染後すぐに発症して死んでしまうケースが多いが、犬の場合は潜伏期間が2週間から6ヶ月程度と幅広い。その間は症状もなく、一見すると普通の犬なので感染源になりやすいのだ。だが最近、狂犬病ワクチンの接種率が下がってきているらしい。 狂犬病がいつ日本にはいってきても大丈夫なように、愛犬への狂犬病ワクチンの接種は必ず行おう。
他にも恐ろしい病気が!
犬に噛まれたことで感染する病気として、狂犬病以外にカプノサイトファーガというものがある。これは日本でも発症事例があるので紹介しておく。厚生労働省のサイトによるとこの病気は、犬や猫に咬まれたり、ひっ掻かれたりすることで感染・発症する。発症するのは稀だが、免疫機能の低下した子供やお年寄りの方などにおいて重症化することもある。症状は発熱、腹痛、吐き気、頭痛など。重症例では、髄膜炎を起こし死に至る事もあるので怖い病気だ。もともと犬の口内にいて、犬には害のないウイルス。もし、犬の歯が深くはいるような噛まれ方をしたら、病院へ行って消毒してもらおう。
噛まれた相談室
Q.知らない犬に噛まれた時大声をだすのはまずい?
噛まれた場合は、できるだけ落ち着いて。声をだしたり、暴れたりしてはいけない。動くものを追いかけるのが犬の習性。そして自分の身に危険が及べば攻撃してくるのも本能。噛まれたあと、暴れたり、犬を痛めつけようとすると更に噛まれる可能性がある。
Q.噛まれて病院に行くべき判断方法は?
海外の場合は出血があったら必ず病院にいこう。日本の場合は歯が患部にくいこんだ時は必ず行こう。自分で患部を洗っても、奥に入った唾液を洗い流す事はできない。病院で処置をしてもらおう。
Q.犬に威嚇をされている場合はどうすればいい?
まず、こちらから対応せずにじっとしておき、犬と視線をあわさないようにしよう。犬が噛んでくる理由の多くは、恐怖を感じているから。刺激しないようにつとめていると、においを嗅いで去っていく犬がほとんど。犬が恐怖を感じているときのボディランゲージは耳やシッポが下がり、瞳孔が開いているなどがあげられる。
Q.海外旅行の前にやっておくことは?
渡航前に現地の医療事情や、病院の情報を外務省医務官情報やFORTHのホームページを見たり、問い合わせて集めておこう。24時間以内に行ける距離に病院がなさそうな田舎町に行く時は、狂犬病や他に必要なワクチン接種してから渡航することをお勧めする。そうしておいても、噛まれた後2回ワクチンを打たなければいけないが、打つまでの時間は24時間以内でなくても構わない。
Q.海外旅行前に他に相談できる機関はある?
トラベルクリニックという旅行する人を対象にした病院がある。そこは現地の病院と提携していることもあるので、旅行先の病院を紹介してくれるかもしれない。
Q.狂犬病と破傷風の英名は?
狂犬病はrabies(レイビーズ)、破傷風はtetanus(テタヌス)。発音が難しいので、もしものときは医者に紙に書いて渡すといい。
愛犬と自分を狂犬病から守るためのルール
1.海外では知らない犬を絶対触らない!
2.愛犬への狂犬病ワクチン接種は必ず!
もし、海外で犬に噛まれたら、面倒この上ないし、恐ろしい。そして、何かの間違いで日本の犬が狂犬病に感染したら……。
実は、1年間に日本で起きる咬傷事故は意外に多い。環境省が統計をとっているが、毎年4600件くらいある。これは事件になった件数。実際はもっと多い。
多くの犬や人に狂犬病は感染する可能性なきにしもあらずなのだ。だから、愛犬にワクチンを打って狂犬病が国内に入ってきても大丈夫なようにしておこう。
Shi‐Ba vol.66『海外と日本の狂犬病事情を知ろう。犬に噛まれた!』より抜粋。
※掲載されている写真はすべてイメージです。