人にとっては美容や健康に良いと言われることも多い果物。でも、糖分や繊維、アレルギーのことなどを考えると、犬に与える場合は少しためらうことも。今回は、そんな果物について理解を深め、犬にあげてもいいのか、あげるとしたら何をどのくらい、どうあげればよいのかについて考えます。
果物は犬に良い?
野菜は犬にあげても良いイメージがあるのに、なぜ果物はためらうのか考えたことがありますか? そもそも野菜と果物の違いは何でしょう?
広辞苑には「野菜とは生食または調理して、主に副食用とする草本作物の総称。食べる部位により、葉菜あるいは葉茎菜・果菜・根菜・花菜に大別。芋類・豆類はふつう含めない」「果物とは、草木の果実で食用となるもの」とあります。
ところが、トマトは草木の果実なのに野菜であり、バナナなどの果物も国や地域によっては肉と炒めて副菜的に使用したりします。日本人は「野菜はおかず、果物はデザート」のように考えていることが多いため、飼い主さんの中では果物を犬に与えることを、野菜よりも躊躇するのかもしれません。
しかし、栄養学的には、果物も野菜も「糖質と繊維質で構成される食品で炭水化物源の食品」です。同じ炭水化物源でもゴハンや芋類と異なるのは、糖質の含有量です。
例えば、サツマイモは30%近くがでんぷんであるのに対して、リンゴは14%程度です。でんぷんは1gで4kcalのエネルギーになるので、果物は芋類と同量あたりの比較ではカロリーが低くなる一方で、余剰エネルギーは脂肪として蓄積されることに変わりはありません。果物も食べ過ぎは肥満の原因となるのです。
また、果物には食物繊維と水分が多く含まれ、このことが生理的に体に有益となります。しかし、食物繊維は腸の蠕動運動や排便状態に関係するので、食べ過ぎは下痢の原因に。さらに、果物に含まれる糖質は食物繊維を発酵させやすい性質があるため、ガスが発生してお腹がゴロゴロすることもあります。
その他にも、果物はビタミンやミネラルが豊富です。サプリメントとして単独の栄養素を取り入れるよりも、食品として総合的に栄養素を取り入れたほうが体内でも利用効率は良いと言われています。
しかし、果物を食べるとビタミンやミネラル以外にも食物繊維、糖質、水分なども同時に得ることになり、これらの栄養素には前述したような働きがあるため、たくさん与えれば良いというものではありません。
つまり、果物は食物繊維、ビタミン、ミネラル、水分の補給源となる食品で、犬に与えても良い食品ですが、愛犬の体に有効利用されるような与え方が大切だということになるでしょう。
果物について知ろう!
イチゴ〇
旬……5~6月(露地)
主な栄養素(食物繊維以外)
……カリウム、ビタミンC
食物繊維(g/100g)……1.4
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.5:0.9
ワンポイント……
生食でも良い。水分補給や減量中のオヤツに
ブルーベリー〇
旬……7~8月
主な栄養素(食物繊維以外)
……カリウム
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.5:2.8
ワンポイント……
皮ごと食べるので食物繊維が多い。与える量に注意。
メロン〇
旬……5~8月(露地)
主な栄養素(食物繊維以外)
……カリウム、ビタミンC、β-カロテン(赤肉)
食物繊維(g/100g)……0.5
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.2:0.3
ワンポイント……
吸収の良い水分補給源としてオヤツなどに利用
アボカド△
葉、果肉、種、樹皮に含まれるペルシンという成分により、嘔吐や下痢の可能性あり。
マンゴー△
カリウム、ビタミンC、β-カロテン、葉酸などが豊富だが、マンゴーアレルギーがある場合や、たくさん食べると全身にかゆみや発疹が出ることがある
サクランボ△
茎、葉、種に含まれるシアン化物に毒性がある。果肉は食べられるが農薬が多いものもあるため、与えない方が良い。
ミカン△
外皮、葉、茎は毒性が報告されている。袋は消化に悪いため、取り除いて果肉だけを少量で。
モモ△
茎、葉、種に含まれるシアン化物に毒性がある。皮をむいた果肉は食べられるがごく少量で。
リンゴ〇
旬……9~11月
主な栄養素(食物繊維以外)
……カリウム
食物繊維(g/100g)……1.4
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.4:1.0
ワンポイント……
食物繊維ペクチンは整腸作用がある
日本梨〇
旬……9~10月下旬
主な栄養素(食物繊維以外)
……カリウム
食物繊維(g/100g)……0.9
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.2:0.7
ワンポイント……スイカより繊維量が多いので量に注意して水分補給に。
スイカ〇
旬……7~8月
主な栄養素(食物繊維以外)
……カリウム、β-カロテン
食物繊維(g/100g)……0.3
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.1:0.2
ワンポイント……利尿作用がある。夏の水分補給に
キウイ〇
旬……11月(国産)
主な栄養素(食物繊維以外)
……カリウム、ビタミンC
食物繊維(g/100g)……2.5
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.7:1.8
ワンポイント……
たんぱく質分解酵素を含むので肉の消化をサポート。
ブドウ×
毒性成分は不明だが腎不全を引き起こすことが報告されている
イチジク×
イチジクに含まれるフィシンやソラレンが原因の嘔吐、下痢、皮膚炎などが報告されている
レモン、グレープフルーツ×
エッセシャルオイルやソラレンで嘔吐、下痢、皮膚炎を起こすこともある。
調理や与える時の注意点
果物の中にはアレルゲンに交差性(花粉やゴム、金属、その他の食材にアレルギーがある場合、ある果物や野菜に含まれるアレルゲンと交差反応し、食物アレルギー症状が出ること)のあるものがあります。
そのため、草や花粉、食物などにアレルギー反応がある、または、あるかもしれない場合は、与える前にかかりつけの獣医師と相談するのが良いでしょう。
旬の果物は生のまま与えたほうがその栄養特性を生かすことができます。季節外れの時やアレルゲンを低減したい時は加熱調理をすると良いでしょう。
ただし、バナナやモモは加熱調理してもアレルゲン性が低減しないので注意が必要です。
出展:環境再生保全機構 ERCA(エルカ)「ぜん息予防のためのよくわかる食物アレルギー対応ガイドブック2014」(https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/archives_24514.html)をもとに加工して作成
良い新鮮な旬の果物を選び、楽しい食生活を
果物を与える時は、次のポイントを目安にしてみましょう。
(1)犬に注意が必要、または与えてはいけない果物ではないこと。(2)新鮮で旬な果物であること。(3)便がゆるくならない程度の分量で与えること。
旬を迎えた果物は、その季節の体調をサポートするビタミンやミネラルが豊富です。最近は輸入果物が多く季節感がなくなりましたが、愛犬と一緒に季節の恵みをいただきながら体調管理に利用しましょう。
缶詰の果物は、保存が目的なのでシロップ漬けになっています。犬は甘味を好むことから、むしろ新鮮な果物よりも好んで食べるかもしれませんが、これは果物ではなく甘いから食べているわけで、犬の健康上は利点がありません。
そしてドライフルーツは乾燥している分、栄養素は濃縮していますが、同量当たりの比較では食物繊維量も新鮮な果物よりかなり多くなります。そのため、飲み込む食性の犬には消化に悪く、嘔吐、下痢を起こすことがあります。
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Shi‐Ba vol.108『なんでもクソ真面目&マニアックに大研究シリーズ あま~い誘惑にはご注意! 果物の便利手帖』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。