外でしか排泄をしない犬が多い日本犬の場合、おしっこを見る機会は少なくなりがち。しかし専門家によると、尿を観察、検査することで病気の早期発見ができるという。尿のことを勉強しよう。
尿検査は血液検査より早く体内の異常がわかることも
日本犬の尿をいえば、室内で排泄をしない、やたらマーキングをするなど、悩みの種が浮かんでくる方が多いのでは?しかし、尿は体の不調をいち早く教えてくれる大切なもの。
健康診断で尿検査は基本中の基本。尿は膀胱炎や膀胱結石などの病気はもちろん、糖尿病や腎臓病、泌尿器系のガンなども早期発見できる。
特に腎臓病は血液よりも尿のほうに早く異常が出るので、病気の初期段階で血液検査が正常値であっても、尿検査で病気が発見できる。じつは非常に重要な検査。
また、尿の回数や量から分かる病気もある。これらは飼い主が日頃から、排泄の様子を何気なく見ているだけで発見できるのが利点。
愛犬と過ごす時間を利用して今すぐにはじめられる健康への一歩を、レッツ、尿!
愛犬の正常尿量&飲水量を知ろう
正常尿量の目安
31ml/kg/day以上
※計算式にすると、31ml×1kg×1日
体重10kgの犬の場合、1日に310mlになる
多尿
50ml/kg/day以上
正常飲水量
40~60ml/kg/day
多尿
100ml/kg/day以上
尿量は体調や食事で変わることもある
愛犬の尿や飲水量が正常が異常か判断するための基準を上にまとめた。個体差やその日の体調によっても変わるので、おおよその目安として考えてほしい。飲水量は食事の内容に左右されることもある。
意外かもしれないが、乾燥しているドライフードよりも、缶詰などの半生フードを食べている犬の方が水を多く飲んでいるというデータがある。
飲水量は食事の味付けや塩分、油分の量によっても変わると考えられている。尿量が一時的に変動したら、食事内容を見直そう。
健康な量の判断方法とは?
量、回数、色、ニオイの4点セットで判断を
尿の量や回数、色、ニオイの組み合わせで、ある程度病気の判断ができる。飼い主さんでも分かりやすい変化があるので、散歩のときなどに見てあげるといい。
量や回数は一日の正常尿量範囲、色は透き通る黄色、臭すぎないニオイがベスト尿。
外で排泄をする日本犬の場合、量と回数の組み合わせが分かりやすいだろう。例えば、量と回数が多い場合は腎不全、逆に少ないときは脱水症状、出ない場合は尿道閉塞など、危険な症状がいち早く発見できる。
また、色やニオイから膀胱ガンが発見できることもあるので、トイレシートなど尿の色が分かりやすい場所で排泄する習慣をつけたい。
性格に診断するには全身の様子を見る必要があるので、異常を感じたら動物病院へ行くことをおすすめしたい。
愛犬の尿の状態を観察してみよう
色濃い+色赤い
尿の色が赤い時は血が混じっている状態で、溶血尿、出血尿などがある。特に危険なのは溶血尿。タマネギなど犬が中毒を引き起こすものを口にしたり、急性フィラリア症を発症したりすると、赤血球が破壊されて尿に溶け出してしまう。出血尿は泌尿器系や生殖器の血管が破れて出血している状態。濃いオレンジ色の時は黄疸の症状が考えられる。膀胱炎、膀胱ガン、バべシア(免疫介在性溶血性貧血)の可能性もあるので、動物病院で診断を仰ごう。
量多い+回数多い+色薄い
尿の量が多い=作られる尿の量が多いということ。膀胱の尿をためる機能は働いているため、他の器官の異常が疑われる。まずは飲んでいる水の量を確認し、多い場合は多飲になる(喉が渇く)糖尿病や腎不全、腎炎などの病気の可能性がある。その他、尿崩症、高カルシウム症、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進賞症)であることも。一般的な場合は、病気ではなく食事の塩分が多すぎたことが考えられるので内容を見直そう。
量多い+回数少ない+色濃い
単純に犬が排泄を我慢している状態。散歩のときでないと排泄しない犬に見られる。我慢をさせすぎると泌尿器系に負担がかかるので、まめに排泄をさせてあげよう。
量少ない+回数多い+色濃い
この場合は、排泄を我慢できない状態、つまり尿をためる膀胱に問題がある。膀胱炎や結石を起こしている場合は、尿が濃いオレンジや濁った黄色である場合が多い。
量少ない+回数少ない+色濃い
まず考えられるのは脱水症状を起こしていること。脱水の原因は、飲ませる水が足りない、嘔吐や下痢が続いて体外に水分が出てしまっている状態が考えられる。
量普通+回数普通+色悪い
避妊をしていないメスの場合、子宮蓄膿症や膣炎のために、膿が尿に混ざって濁った色になっている可能性が。排泄後に陰部から膿が垂れていることもある。
量なし~少ない+回数少ない
排泄の格好をしても尿が出ない様子が続くなら、尿道閉塞が疑われる。原因となるのは膀胱結石、膀胱ガン、オスなら前立腺肥大である。他に急性腎不全の可能性もある。
愛犬の尿を詳しく調べてみよう
飼い主が調べられること
上で紹介した尿の状態からわかることを病気の発見で役立てるためにも、体調がいいときの愛犬の尿について知っておきたい。しっかり観察する必要はない。何気なく見るだけでも犬の様子がある程度分かるはず。外でしか排泄しない犬も、散歩の時に発見できることはたくさんある。加えてふだんの食事や水の飲み方、何よりも犬自身が元気そうにしているかを見てあげよう。
動物病院の検査を利用する
尿には多くの情報が含まれており、病気の早期発見のために重要。膀胱や腎臓など泌尿器系の病気は外見から分かりづらく、症状が現れた場合は病気がかなり進行している可能性が高い。血液検査やレントゲン検査、外見で症状がわかる前に異常を発見できるのが尿検査。
尿検査には尿スティック検査、尿比重検査、尿沈渣の3種類があり、これらすべて行うことで尿のpH、膀胱炎や腎臓病、ガンの早期発見、結石の有無などさまざまなことが分かる。
尿検査は費用が比較的安く済み、短時間で結果が分かる。それでいて多くの情報が得られる検査。血液検査と違って犬が痛い思いをするわけではないので、特に異常がなくても半年から1年に1回程度、動物病院で検査をしてもらうのが理想。
愛犬の尿を上手に動物病院へ運ぶ方法
その1.採取はペットシートの裏を利用
検査用の尿を採取する方法はいくつかある。オススメはトイレシートの裏面を利用すること。表面は尿を吸収してしまうので使えないが、裏面のビニールの上に排泄をさせればスポイトで採取したり、別の陽気に移し変えられる。採取できたら尿が新鮮なうちに、できれば1時間以内に動物病院に持ち込もう。一時的に保管する場合は冷蔵庫がおすすめだが、はやめに持参した方が正確な審査結果がでる。暑い時期は保冷剤で冷やしながら行くとよい。
その2.フタつきのびんを利用
動物病院に尿を持参するための容器は新品の紙コップが無難だが、ニオイやこぼれた時のことを考えると蓋つきのびんを利用してもよい。ただし、ジャムのびんを使う時はびんと蓋をしっかり洗わないと糖尿病の審査が下されてしまうことも。弁当に入っている小さい醤油入れをよく洗って利用する方法もある。検査用には10cc以上必要だが、搾取に失敗しても0.5ccあればかなりの情報が得られる。
まとめ
本特集では様々な尿に関する病気を紹介したが、日本犬は泌尿器系の病気が少ない犬種らしい。
それでも犬全般に多い病気に気をつけたい。尿を調べることで見つけられる病気はおおいからだ。オス、メス共通のものでは、腎臓障害、膀胱炎、膀胱結石、膀胱ガン、また未去勢のオスでは前立腺肥大や会陰ヘルニア、未避妊のメスでは尿から子宮蓄膿症が見つかることもある。
まれではあるが、犬は尿失禁をする場合もある。後天的な病気として神経性、筋肉性、ホルモン性などがあり、これらは薬で改善することができる。先天的な病気では異所性尿管があり、手術で治療する。
泌尿器系の病気が少ない犬種であっても、愛犬が発症しないとは限らない。病気の早期発見のために尿検査を受けること、普段から愛犬の様子を見てあげることをおすすめする。
尿検査がきっかけで判明する愛犬の病気もある。このことを忘れずに今回の特集内容をしっかし復習しておこう。
関連記事:
【膀胱爆裂】たかがおしっこ、されどおしっこ。マーキングの底力を調査せよ!
人気のキーワード:
#しつけ #ごはん #シニア犬 #健康管理
#性格 #散歩 #気持ち #病気 #おでかけ
#ケア #子犬 #性別
Shi‐Ba vol.46『愛犬の体調はすべてアイツが知っている!?教えて尿先生!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。