「飼う」から「暮らす」へ!愛犬との豊かな暮らしのために日本犬を知ろう

日本犬と暮らす環境

昔から番犬や猟犬の役割を担ってきたので、長らく外飼いが主流だった。飼い主の自宅が「母屋」とすれば犬の小屋は「離れ」という住環境。しかし2000年前後から室内で飼う小型犬が流行し、日本犬も都市部を中心に室内飼いが増えた。

昔ながらの日本犬の暮らしを支持する人は「室内飼いはかわいそう」と言い、犬は家族の一員と考える人は「外飼いはかわいそう」と言う。どちらが正しいとも言えない。室内飼いは犬に人の生活様式を強いる一面や互いの距離が近くなることもあり、暮らしの中で問題が起きやすくなる。

家族が柴犬の特性や愛犬の個性を理解して付き合うことが重要になる。一方、昔ながらの外飼いも、近年は夏の猛暑日や高温多湿の気候の対策が必須であり、必ずしも昔ながらの暮らしがよいとは限らない。犬の住む場所は「住環境(地域)」「家族の対応」「犬の個性」によって決めることが望ましく、理想は「半外半内」ではないだろうか。

室内飼いで起きる問題を防ぐには、犬に合う生活環境を整えることが重要だ。

まずはリビングの端にサークルやフェンスを置いて犬がひとりで安心して過ごせる場所をつくり、家族と遊ぶ時だけリビングに出す。ただし問題がなければ生活スペースを共有してもよい。キッチンは誤飲やけがの危険がないように管理する、もしくはペットゲートで犬を入らせない。

階段や玄関の段差を降りる時に怖がる犬もいるが、降りられないと思い込まないこと。特にドアの開け閉めには注意する。寝室に犬を入れる時は、一緒に寝ることを無理強いしない。ベッドを守って攻撃的になったり、人が寝返りを打った時に怒ったりする犬もいる。

バスルームは犬を洗う場所なので苦手になりやすい。できれば子犬の頃からバスルームで食事を与え、楽しい印象を持つよう計画的に工夫する。ベランダには可能であればトイレを設置。室内での排泄を嫌う日本犬でも、自宅でのトイレの習慣を残せる。

 

日本犬と一緒に暮らす

犬は本来、野外で暮らしてきた動物なので、靴を脱いで家に入る日本の生活様式での室内飼いは不自然。特に日本犬は触られるのが苦手で、散歩後の足拭きに苦痛を感じやすい。

家庭で暮らす習慣を教える社会化トレーニングを子犬の頃から生涯にわたって続ける。一定以上の年齢になって環境が変わると慣れるまで他犬種より時間がかかるので、決めた生活スペースを変えない方がよい。

例えば外飼いにするなら、子犬の頃からテラスや庭で過ごさせる。もし引っ越しなどで自宅が変わる場合は、使っているハウス(クレートや犬小屋)を持っていき、犬の住まいがなるべく変わらないように配慮を。

ただし老犬になると寒暖の差が体に堪えるようになるので、外飼いの場合は室内飼いに変える。将来の介護もしやすくなる利点も。普段の居場所はそれほど広くなくていいので、屋外に近い環境の玄関や土間につないだり、サークルやフェンスで囲ったりして安全管理を心がける。

人間社会では人が犬を管理して、犬は人に保護される存在。しかし犬には保護されているという感覚はなく、与えられた住まいで暮らしていても、特に日本犬は自立して暮らしていると思っているはず。

犬と人は動物種が違うだけの大人同士と考え、成長した日本犬に対しては敬意を持って接することを心がける。例えば人にはイタズラに見える行動でも、犬にとっては知的好奇心を満たすために試したり、生きるために役立つことを探したりした結果である。

とはいえ人間の家で飼育する以上は犬の行動を制約せざるを得ない。家で自由にした状態でたくさんの禁止事項を教えるよりも、入ってよい場所・いけない場所を教える方が犬は理解しやすい。まずは犬に必要な3つのエリアを決める。

①何をしてもよい、むやみに人が入ってこない安息場所のエリア

②人間と犬が共同で使うエリア(広いがいくつか禁止事項がある)

③進入禁止エリア

これらを教えることで、互いに暮らしやすくなる

 

監修:山下國廣先生

日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)卒、獣医師。犬のトレーニング、問題行動治療を行う「軽井沢ドッグビヘイビア」主宰。家庭犬のしつけ指導から作業犬の訓練まで、幅広く活動している。災害救助犬としても活躍した甲斐犬のすぐり(オス)と、15年7 ヶ月を共に過ごした。

日本犬との暮らしに重要な年齢・成長の特徴と付き合い方

軽井沢ドッグビヘイビア
https://www.karuizawa-dogbehavior.com

Text:Shio Kaneko

※Shi-Ba vol.125「犬と家」より

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