その姿の理由は様々。犬のオスワリについて真面目に考える!

食事をあげる前に、お散歩させる間に、初めての犬とのコミュニケーションに……。犬の典型的な芸としておなじみ「オスワリ」について、医学的、しつけ的な観点からあれこれ調べてみた!

 

犬にオスワリをさせる理由

犬のオスワリ

人間社会において犬の安全を守るために適切な姿勢であること、また人間が犬の行動管理をしやすいことがオスワリをさせる理由

交通や他の犬とのアクシデントから犬を守るためには、そばで待たせておくことが必須だ。立ったままよりも、座らせてその場にいさせることで、犬を危険から一歩遠ざけることができる。

同じように犬を待たせておく動作に「フセ」もあるが、より次の行動に移りやすいオスワリのほうが一時的に待たせるのに都合がいい。

こういった点でオスワリの重要性が増したのだろう。

なお、人間がオスワリをさせたがる背景には、座った犬の姿を見て自身がリラックスしたいといった感覚的な欲求も、少なからずあるかもしれない。

これについては、大自然の中の水場のシーンを想像するとわかりやすい。

草食動物は、鳥がゆっくり水を飲んでいるのを見て周囲の安全を確認し、安心して水を飲んだりエサを探すことができる。が、鳥が飛び去ると危険が近づいているとわかり、草食動物もいっせいにその場を離れる。

このように生き物には、安心している別の生き物がそばにいると、自分も安心できるという刷り込みができている。

 

犬にとっての「オスワリ」の役割とは?

犬のオスワリ

オスワリといえば、すっかり犬の芸の代名詞のようになっているが、教えなくても犬はオスワリの姿勢をとることがある。

人が教えた芸としてのオスワリ以外で、犬がオスワリする理由は2つある。

2つはカーミングシグナルとして、出すもの。これは他の犬や人に会ったり、慣れない場所に入った時など、なんらかのストレスを受けた際に、自分をリラックスさせたり、相手を落ち着かせたりする時に使われる。

もう1つの理由はリラックスと警戒の間の動作として座る場合。オスワリはフセや寝転がるなどのくだけた格好と、警戒して立ったり動いているときの、ちょうど中間の姿勢といえる。

このためオスワリしていると、すぐリラックスの姿勢にも入りやすいし、逆に立ち上がって動くこともしやすいのだ。

長時間動いたり立ち続けてちょっと休みたい時、逆に休んでいたひとときを追えてこれから動きだそうって時に、犬は自然にオスワリをするということ。

ちなみに、自然界において立場の弱い動物は、犬のようにオスワリしない。例えば鹿や馬などの草食動物。彼らは起きている間は常に立っていて、いつでも逃げられるように警戒している。

犬の場合は、肉食獣としての野生における立場がこれらの動物よりも強いがために、オスワリの習慣があるともいえるだろう。

次に、しつけとしてのオスワリについて。

食いしん坊の犬はオスワリを覚えやすいというウワサがあるがこれは本当。

たいていの人が、食事の前のオスワリを教える。座れば食事をもらえることに喜びを見出す食いしん坊な犬は、意欲的にその姿勢を繰り返す。

繰り返すことで、犬は学習するので、必然的にオスワリを教えやすいわけだ。

しかし、食欲以外のことに意欲を見せる犬なら、例えばオモチャで遊ぶこと、撫でてもらうことなどをフードに代わるごほうびとして使えば、同様に練習はできる。

犬が食いしん坊でなければ、何に対してなら意欲が持てるのか、飼い主が見つけてあげよう。

なお、このようにモチベーションを持たせ、できたら犬にとっての報酬を与えるという基本を繰り返すことで、犬がいきいきし、いろいろな面で意欲的になってくる。

人も犬も、自分のやったことを否定されるより、評価されたいもの。このようなトレーニング方法でオスワリを覚えた犬は、飼い主のことがもっと好きになり、生きる楽しみがだんだんわいてくるのだ。

いわば、オスワリの正しいしつけが犬の生きる意欲を増すということ。

 

オスワリの姿勢で病気発見は可能?

犬のオスワリ

おねえ座りなどユニークなオスワリをする犬はとても多い。

見た目は面白いが、普通にオスワリできないってことはもしや病気なのでは?とすれば、もしかしてオスワリの姿勢から健康状態のチェックをできたりするのだろうか。

まず、ノーマルなオスワリの条件について。後ろ足で体重を支えて座っているものがオスワリの基本。体重が適性で、筋力が適度にあり、関節の神経が正常な犬はこのオスワリができる。

でもそれ以外の、お尻をついていたり、足を横に流しているようなオスワリの状態が異常というわけではない。

人間にも足がしびれやすいから正座ができないという人がいるように、座り方は犬のクセが出やすいもの。

そのため、オスワリの様子から病気がわかったりということはない

ひざや股関節の問題がある場合は、跛行していたり、長く歩くと脚をかばうように歩くなど、歩き方もおかしくなっているはず。おねえ座りだからといって、病気と決めつけることはできない。

ただし、急に座り方が変わったという場合は、何かトラブルがあったと考えられる

また、座っている姿勢ではなく、座るまでの様子もチェックポイントになることがある。静かに座らずにボテッと重そうに座るなら、腰のトラブルがある場合が考えられる。

加えて歩き方もおかしくなったようなら、診断を受けたほうがいいかもしれない。

ちなみに、おねえ座りなどがクセになっている場合はやめさせたほうがいいのだろうか?

変形した座り方は、体重が重かったりなどして脚だけでは体を支えられない犬が、関節などの状態を悪化させないためにしているケースが多いもの。

これを無理にやめさせると、逆に体に負担がかかってしまうかもしれないので、急に座り方が変わったということでなければそのままにしておいていいだろう

ということで、ひとまずはおねえ座りなど面白いオスワリについては神経質にならず、「かわいい!」と安心して笑っていても良さそうである。

ただし、太りすぎなどの問題が明らかにある犬の場合は、それをクリアにすることはもちろん必要。

それからくれぐれも急激なオスワリ姿の変化には、歩き方の変化とともに注意を怠りなく!

 

愛犬にオスワリを楽しんでもらうためには?

犬のオスワリ

犬のしつけの中でも重要な位置にあるオスワリ。

オスワリを教える基本は、まず鼻先に出したフードのニオイで集中をとり、それを少し上にあげて犬の顔をあげさせ、自然に座ったところでほめてフードを与える、というやり方なのだが……。

むりやりお尻を押して座らせて覚えさせようとする人もいるが、そうすると犬は逆にふんばって座りにくくなる。

すると飼い主さんも「なんでできないの?」と無理に押すことになり双方のストレスに。

こんなやり方では、たとえオスワリができたとしても決して犬は楽しんでやっているわけではなく、仕方なく座っているような感じになる。

競技などを目標にしてビシッとしつけたいなら、それでもいいかもしれないが、家庭犬として癒しを求めるのならばおすすめしない。

犬が自ら座ったことをほめるやり方なら、犬はオスワリに良いイメージを持ち、進んで座るようになる

そんな犬を見れれば、飼い主さんも楽しくなり双方がハッピーになれるはず。

幸せそうなオスワリをする犬は、飼い主さんも幸せそうにするけれど、そんな犬を育てるのはまた飼い主さんのこころがけ次第、ということ。

すでにオスワリを習得した犬の飼い主さんも、このしつけの基本は初心として忘れるべからず、だ!

愛犬のリラックスポーズが辛そう! 心から脱力できる本当に『楽な姿勢』って?
惜しいオテ、オスワリ……愛犬の『まぁいいか』を完璧にする!

人気のキーワード:
#しつけ #ごはん #シニア犬 #健康管理
#性格 #散歩 #気持ち #病気 #おでかけ
#ケア #子犬 #性別

Shi‐Ba vol.29『その姿、理由は様々 柴犬のオスワリについて真面目に考える』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

-柴犬
-