日本犬の代表である柴犬の祖先は肉よりも魚を食べていたはず!だから魚は柴犬に良いはず!とも言えますが、魚には科学的に証明された健康に役立つ栄養素が含まれます。それならば、愛犬の健康管理に魚を使用しない手はありません。魚についての知識を深め、健康管理に役立つ方法で魚を食生活に取り入れてみましょう。
魚は体に良い?
科学的に証明され健康に有益な栄養素として人にも犬にも注目されているのが魚に含まれる脂質です。
肉には「飽和脂肪酸」が多く、常温で白く固まり体内で溶けにくい脂が多く含まれますが、魚には常温で液体である「不飽和脂肪酸」が多く、植物油のような性質を持ちます。不飽和脂肪酸は、食事から摂取が必要な「必須脂肪酸」であり、オメガ-6脂肪酸とオメガ-3脂肪酸があります。
このうち魚に多く含まれるEPAやDHAをオメガ-3脂肪酸と呼び、抗炎症作用、抗酸化作用や抗がん作用など多用な生理作用があることがわかっています。
また血液をサラサラにする働きもあるため、栄養素や酸素を全身へ送るためには日常的に摂取したい栄養素です。
熱や酸素によって酸化しやすい性質があるため、ビタミンEを多く含む食品と一緒に摂取することで脂質の酸化から細胞がダメージを受けるのを防ぎます。
その他に魚特有の栄養素として「ビタミンD」があります。ビタミンDはカルシウムの吸収を促進する働きがあります。ビタミンDはキノコ類を除くその他の食品にはほとんど含まれません。
ペットフードが主食の場合には不足することはほとんどありませんが、手作り食の場合は不足しやすい栄養素であるため魚も肉と併用したいものです。
さらに注目したいのは魚には肉と異なり、「季節性」がある点です。旬の食品はその季節の体調をサポートするのに必要な成分を多く含むため、季節の変わり目に生じる体調不良にも役立ちます。
このようなことから、魚は肉と同様に良質なたんぱく質源であるとともに、魚特有の栄養素がある「健康に良い食品」と言えるでしょう。
あげても良い分量
アジ・・・40~45
サケ・・・35~40
タラ・・・60~70
犬に魚を与える時は、加熱調理が基本です。新鮮な魚を食べ慣れている場合は生でも大丈夫ですが、一般的には慣れないものを与えると消化不良を生じるので、加熱調理で与えたほうが安心です。
与えても良い量は、ベースとなる食事により異なりますが、食事全体の栄養バランスの一部としてとらえることが大切です。
ドライフードが主食の場合は、1日に摂取しているエネルギー量の10%以内にあたる量を目安とします。
この時に注意したいのが「生の重さ」を必ず量ること。加熱料理後は、魚の水分が減るため同じ重さあたりの栄養濃度が高まるからです。
そのため、加熱調理後の重さで計算し、その分量で与えると、たんぱく質や脂質、カロリーなどが多くなり、食事全体の栄養バランスを崩してしまうことがあります。
このような状態に気づかずに継続して与えることで、肥満や健康障害の引き金になります。
オススメ お魚レシピ
■サケとキノコのミルクリゾット
【材料】
米・・・・・・・35g
ブロッコリー・・20g
サケ・・・・・・50g
スキムミルク・・10g
マイタケ・・・・15g
無塩バター・・・2g
【作り方】
1.サーモスープポット(0.27リットル使用)に熱湯を保温しておく。
2.(1)の熱湯を捨てたら水洗いした白米35gを加え、熱湯を250cc注ぎ、フタを閉め、そのまま40分放置する。
3.ブロッコリーはサッとゆでてから、マイタケ、サケはそれぞれみじん切りにする。
4.中火で温めた小鍋に無塩バターを溶かし、(3)を加えて炒め、水50ccを加えて水分がなくなる程度まで煮る。
5.与える時は(1)にスキムミルクを混ぜ、(4)を加え、全体に混ぜて人肌に冷ましてから与える。
【ワンポイント】
保温ポットを使用したおかゆは、スープポット以外でも作ることができます。鍋で煮たおかゆよりもクリーム状になり、米粒が口の中でばらけることなく食べられるので、シニア犬にも向いています。消化が良いので、週に一度胃腸を休める時にも利用できます。
■タラの卵雑炊
【材料】
ごはん・・・・40g
木綿豆腐・・・30g
サツマイモ・・40g
卵・・・・・・1個
タラ(生)・・・40g
春菊・・・・・15g
【作り方】
1.サツマイモは皮をむき、薄く切り分けたらさらに細かく刻んで鍋に入れ一度水でさっとゆすぐ。
2.(1)に水100ccを加え、中火で5分ほどサツマイモを煮る。
3.(2)にごはん、サイの目切りにした豆腐、刻んだ春菊を加えてさらに煮る。
4.全体に水分がなじんできたら、溶き卵1個を回しかけフタをする。卵が少し固まってきたら火を止め、予熱で卵全体に火を通す。
5.器に盛り、よく冷まして与える。
【ワンポイント】
一つの鍋に入れるだけの簡単な手作りごはんです。サツマイモ、タラ、春菊といった旬の食材と、いつでも栄養満点の卵で栄養補給。できたては熱いので、浅く広めのお皿に広げて少しずつあげてください。
■アジのひと口寿司
【材料】
ごはん・・・・・・・70g
納豆・・・・・・・・10g
アジ(皮なし、生)・・30g
キュウリ・・・・・・10g
酢・・・・・・・・・小さじ1/2
スキムミルク・・・・10g
ハチミツ・・・・・・小さじ1/2
焼き海苔・・・・・・少々
カボチャ・・・・・・25g
【作り方】
1.6枚にスライスしたカボチャを鍋に入れ、その上にアジをのせ、蒸しゆでにする。
2.納豆はスプーンでしっかり粒をつぶし、キュウリは斜めの薄切りにして6枚に切り分ける。
3.焼き海苔は5mm×8cmくらいの帯を6本作っておく。
4.温かいごはん70gに、酢、ハチミツ、スキムミルクを入れて混ぜ、6等分に分けて食べやすく成型する。
5.(1)のアジは6等分に削ぎ切りにしておく。
6.カボチャ、ごはん、キュウリ、アジ、納豆の順で重ね、(3)の焼き海苔で巻く。
【ワンポイント】
見た目も楽しくするために、写真ではこのような仕上がりにしましたが、カボチャ、キュウリ、納豆もごはんのほうに混ぜて、アジだけ上に乗せると、簡単なひと口寿司になります。お醤油を付ければ飼い主さんも一緒に楽しめる一品に。
白身魚VS赤身魚
白身魚・・・カレイ、タイ、タラ、フグ、ヒラメ、アナゴ
赤身魚・・・アジ、イワシ、カツオ、サンマ、サバ、ブリ、マグロ
青魚・・・アジ、イワシ、サバ、サンマ、ニシン
筋肉が赤色をしており、血合筋の多い魚を「赤身魚」、筋肉が白色で血合筋の少ないものは「白身魚」に分類されます。
赤身魚はたんぱく質や脂質が多く、肉質は硬めで味が濃いのが特徴。
いっぽう、白身魚は水分が多く淡白で、肉質が軟らかく消化に良いのが特徴です。
マスやサケの赤さは血合筋の色ではなく、エサとなるオキアミに含まれるアスタキサンチンという色素によるもので、サケは白身魚です。
また、魚の筋肉の色ではなく背の色により分類したものを「青魚」と呼びます。青魚はDHAやEPAを豊富に含みます。
もっと詳しく魚のことを知ろう!
ひとくちに魚と言っても、同量あたりに含まれる栄養バランスが異なります。肴には体に良い脂質が含まれますが、いっぽうで脂質は消化に時間がかかるため、胃腸の調子が悪い時には控えたい栄養素です。消化を促すなら、低脂肪でたんぱく質を適度に含む魚にするなど、それぞれの魚の栄養特性を理解すると、その時の体調に合わせて魚を使い分けることができます。
アジ
季節:夏
特徴:赤身魚&青魚。うまみ成分が多い。
栄養:DHA、EPAが豊富。カルシウム、カリウム、ナトリウムが比較的多い。
カツオ
季節:夏、秋
特徴:赤身魚。水分が少ない。たんぱく質は春獲りに多く、脂質は秋獲りに多い。
栄養:たんぱく質が豊富。血合いにはタウリンが豊富。
タイ
季節:夏、冬
特徴:白身魚。肉質が軟らかく、消化吸収が良い。
栄養:たんぱく質が多く脂質が少ない。
ブリ
季節:冬
特徴:赤身魚。15cm→ワカシ、40cm→イナダ、60cm→ワラサ、1m→ブリ
栄養素:高脂肪、ビタミンD、タウリンが豊富。ビタミンB群やEも含む。
イワシ
季節:秋、冬
特徴:赤身魚&青魚。栄養面に優れている。
栄養:DHA、EPA、カルシウム、ビタミンD、ビタミンB2が豊富。
サケ
季節:秋
特徴:白身魚。脂質が多いが消化吸収が良い。一般的にサケは、白サケが銀サケのこと。
栄養:EPA、DHA、ビタミンDが豊富。
タラ
季節:冬
特徴:白身魚。うまみは少ない。
栄養:水分が多く、脂質がきわめて少ない。低カロリー。
マグロ
季節:冬
特徴:赤身魚。キハダマグロは、脂質が他のマグロに比べて少ないため淡白。
栄養:高たんぱく、高脂肪、EPA、DHAが豊富
魚や調理法に関する素朴な疑問
骨や皮、内蔵はどうする?ゆで汁はあげてもいいの?など実際に調理して与える際にでてくる疑問を解決しよう!
Q.ゆでるのはレンジでもOK?
高温、長時間調理が最も栄養損失が大きいため、高温ですが短時間であれば電子レンジの使用も可能です。
ただし、そのままだと魚独特の臭みが気になるかもしれません。人の場合は塩をすることで臭み成分を取り除きますが、犬の食事では塩はしないため、あらかじめ熱湯でさっと湯引きしてからレンジで加熱するといいかもしれません。
Q.昔は骨をあげてたけど今はどうなの?
かつて人の残飯が犬の食事だった時には、カルシウムが不足していたので魚の骨を与えるのも李にかなっていたでしょう。
しかし、カルシウムの吸収はたんぱく質、乳糖やビタミンDがないと促進されないため、丸ごと食べていたのであればその吸収率も良かったと思いますが、骨だけでは便中に排泄された部分が多消化器官へ刺さるなどのリスクの方が多かったかもしれません。
またペットフードを主食とする現代では、必要十分量のカルシウムの添加があるので与える必要はありません。
Q.ゆで汁はあげてもいいの?
魚の臭みを取るために熱湯で湯がいたときのスープはNGですが、その後に蒸しゆでにしたり、ゆでたりした時のゆで汁には魚のうまみが出ているので、おいしいスープになります。
Q.魚や内臓は食べない方がいい?
内蔵は、栄養的に考えるとビタミンA、ビタミンB群、鉄分などが豊富です。
しかし、ペットフードが主食の場合、ビタミンAや鉄の過剰摂取は中毒を生じます。
また、肝臓は解毒を行う臓器でもあるため、毒素の蓄積もあります。
皮に関しては、コラーゲンと脂質でできているため、たんぱく質の吸収率が低くカロリーが高い部分です。
よって、せっかく与えるのであれば、内蔵や皮だけでなく良質なたんぱく質を含む消化性の高い部分をあげたいものです。
Q.魚ばかりたべていると体臭が臭くならない?
魚ばかりを食べても体臭は臭くはなりませんが、水銀の蓄積量が多いマグロのような魚だけを毎日食べるのは好ましくありません。
一方で、魚がたんぱく質源のペットフードを食べていたら体臭が臭くなったという場合は、原因は魚ではなく、フード中のたんぱく質量が過剰で、腸内環境が悪くなった結果、腐敗臭が血中へ移行し全身を巡っているため「臭い」という可能性は考えられます。
Q.栄養素が損なわれないための調理時間の目安は?
極端な高温ではない熱源で短時間に調理するのが栄養損失は最も少ないことから、一般的には「蒸しゆで」がオススメです。
犬に与える場合も量も少ないので、あらかじめ細かく刻んでから少量の水を加えて蒸しゆでにします。1分ほどで蒸しあがるので、栄養素の損失もほとんどないでしょう。
Q.魚の日持ちする調理方法や保存方法は?
丸ごとの魚は痛みやすいので、新鮮なうちに内蔵を取り出し三枚におろして、人が食べる場合は塩や醤油で下味をつけ、小分けにラップをして冷凍保存するのが基本です。
こうすることで雑菌の繁殖、冷凍時の細胞の崩壊や解凍時のドリップでうまみや水分が流れ出すのを防ぐことができます。
しかし、犬に与える場合下味はつけられないので、一度ゆでてから小分けに包装し、冷凍保存すると良いでしょう。
赤身魚は冷凍に向いていますが、白身魚は冷凍や解凍で風味を損ないやすいため、ミンチにしてかまぼこのように保存します。
青魚は脂質が酸化しやすく風味も変わりやすいので、調理してから冷凍保存した場合も早めに使い切りましょう。
関連記事:
高価な部位は飼い主が食べたい!? 牛肉と他の肉&部位別の違いを大研究!
イモ、クリ、カボチャの便利手帳。犬に与えても良い量や調理方法は?
人気のキーワード:
#しつけ #ごはん #シニア犬 #健康管理
#性格 #散歩 #気持ち #病気 #おでかけ
#ケア #子犬 #性別
Shi‐Ba vol.104『なんでもクソ真面目&マニアックに大研究シリーズ 日本犬なら、やっぱ魚っしょ! お魚便利手帖』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。