日本人の主食に、愛犬の手作り食の炭水化物源に必ず登場するのが“米”。白米と玄米の違いくらいはわかるけどいったい名称の違いは何なのか!? 今回は知っているようで知らないお米について探り、愛犬に適した使い方を考えよう!
1.お米のデンプン・たんぱく質は豊富!
2.でんぷんの消化の早さが味と健康を左右
3.“米”は含まれるデンプン質で大きく変わる
4.ブランド米比較
5.年々改良を重ねるブランド米
6.犬と米
7.雑穀米とは?
8.犬の手作り食に米を使ってみよう!
9.体調による米の選び方の目安
お米のデンプン・たんぱく質は豊富!
胚芽・・・種として吸水、成長すると目や根が出る部分。ビタミン類、ミネラル、食物繊維などを多く含む
胚乳・・・でんぷん(炭水化物)とたんぱく質などを含む。
ぬか層・・・胚乳の外側を覆う3層。脂質、たんぱく質、ビタミン類、ミネラル、食物繊維などが豊富
米の70%は炭水化物であるでんぷんですが、たんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミンやミネラルも含まれています。
でんぷんとたんぱく質以外の栄養素は胚芽やぬか層に多く含まれるため、精白米より玄米の方が米全体の栄養価値は高くなります。
つまり、米の栄養価は米の種類ではなく精製度により異なります。
でんぷんの消化の早さが味と健康を左右
でんぷんの消化は、でんぷんの消化酵素アミラーゼにより行われます。ヒトは唾液中と膵液にアミラーゼが存在します。米をかんでいると甘く感じるのは、グルコースの結合がアミラーゼにより切断されるからです。
この時、アミロペクチンの結合の方がほどけやすく消化が早いため、アミロペクチンの割合の高い米の方が消化が早く甘く感じます。しかし、消化が早いことは裏返せば血糖値が上昇しやすいという特徴になります。そのため、糖尿病など高血糖になりやすい病気がある場合には消化に良い米は逆効果。
アミロースが高い米の方が血糖値のコントロールには適しています。しかし、アミロースの多い米は甘味を感じにくく、パサパサとしているためおいしさにおいては評価が下がります。そのため、ヒトの嗜好性を追求し低アミロース米や、味の決め手であるたんぱく質を少なくした低アミロース・低たんぱく米などなど新たな米が開発されています。
“米”は含まれるデンプン質で大きく変わる
米は「ジャポニカ米」「インディカ米」「ジャパニカ米」の3種類に大別されます。
ジャポニカ米は、短く円形に近く、炊くと艶と粘り気がでます。「コシヒカリ」や「ササニシキ」といったブランド名の米もここに入ります。
インディカ米は、細長く炊いてもパサパサとした米でタイ米などがこれに当たります。
ジャパニカ米はその中間です。
この違いは、米の主成分であるでんぷんを構成するアミロースとアミロペクチンの割合により決まります。グルコース分子の結合の仕方によりその性質が異なるからです。
アミロースが多い米はパラパラとした食感になるのに対し、アミロースがほぼない米は、もちもちとして冷めても硬くなりにくいのが特徴です。アミロースがほぼ含まれていない米を「もち米」と呼び、アミロースが15~35%、アミノペクチンが65~85%の米を「うるち米」と呼びます。
赤米や黒米は、栽培が古代から行われているため「古代米」とも呼ばれ、それぞれに「もち米」と「うるち米」があります。
そして、もみ殻を取り除き、糠や胚芽が残っている米を「玄米」、精製したものが「精白米」です。
普段一般的に食している米は、「ジャポニカ米のうるち米の精白米」ということになり、さらに米に銘柄や産地の違いなどにより「ササニシキ」「あきたこまち」「コシヒカリ」といった名称をつけ、これを「ブランド米」と呼んでいます。
ブランド米比較
今や数十種類に増えたブランド米。その特徴を比較してみた。
■コシヒカリ
食味のバランスがよく、粘りが強く味が濃い。
■ミルキークイーン
低アミロース米。もちもち感が強く、冷めても硬くならない。
■ゆめぴりか
粘りや甘みが強く、冷めてももちもちしている。
■ななつぼし
粘りは少ないが、適度な甘みがありさめてもおいしい。
■つや姫
適度な粘りと、程よい甘みがある。
■あきたこまち
軟らかくなり過ぎず、粘りは弱めで味もさっぱりしている。
年々改良を重ねるブランド米
“ブランド米”には、明確な定義がなく、銘柄や産地、人気の度合いがブランド米となっているのです。
人気米選びの決め手は、色、味、食感、香りです。
しかし、これらは実際には産地やその年の気候など多様な要素により異なります。
犬の食事にも応用する場合には、「粘りが高い米ほどアミロースが少なく、ヒトの評価が高い」そして「消化に良いけれども血糖値が上昇しやすくべたつく食感である」というように覚えておくと良いでしょう
犬と米
犬は雑食性がありますが、肉食動物です。そのため、唾液中にアミラーゼは存在しません。つまりでんぷんの必要量はヒトよりも低く、でんぷんの消化は膵液中のアミラーゼに頼る形になります。
また、本来の食性は必要とする栄養素を多く含む食品に対して嗜好性が高いため、肉食動物である犬が最も好むのは肉、魚、卵、乳製品などのたんぱく質を多く含む食品のにおいです。そのため、でんぷんのにおいを強く感じる食品には嗜好性があまり高くないように感じます。
米においては、もっちり系の米(アミロースが多い米)や、温かいとでんぷんのにおいが強くなります。一方で、米のにおいは生産状況や炊飯時間などによっても影響を受けるため一概にアミロースの含有量だけでは判断ができません。
しかし、犬の食性から考えるとヒトがおいしそうと感じる「炊き立てのもっちりごはん」は犬にとってのおいしいにおいではないようです。
ただし、米が消化に良い炭水化物源であることに代わりはなく、手作り食の場合でも米アレルギーや糖尿病がなければ一般的に米を炭水化物源として使用します。
また、ペットフードでも消化器系の療法食には米が原材料として使用されています。
犬は基本的にべたつく食感の食品を嫌うため、ヒトの好みの米を犬用に使用する場合は、(1)十分冷ます、(2)水分を混ぜる、(3)炊いたご飯をさっと水洗いするなどの一工夫で、べたつき感やでんぷん臭を減らすと良いでしょう。
ヒトのように口の中で米を味わうことのない犬にとっては、米の味、食感、香りよりも米に含まれる栄養素やその栄養素が体内で利用できるようにして与えることが重要です。
雑穀米とは?
イネ科作物のうち、小さい穎果をつけるヒエ、アワ、キビなどを総称して「雑穀」(millet)と呼びます。
販売されている雑穀米には、白米に玄米とこれらの雑穀をまぜたものが一般的です。ビタミン、ミネラルや食物繊維の豊富な外殻を含み、栄養的に白米よりも向上しますが、口の中でよく噛んで食べないと胃がもたれます。
そのため、唾液中にアミラーゼがなく、飲み込む食性の犬にとっては「消化に良い」炭水化物源ではないようです。
犬の手作り食に米を使ってみよう!
手作り食で一般に使用するのは、先にも述べたように「うるち米の精白米」です。消化によく、純粋なエネルギー源として配合が可能だからです。
栄養価では玄米の方が高いのですが、食物繊維を多く含むため消化に時間がかかりますのでおすすめしません。
使用する場合は、柔らかめに炊いたご飯や粥状にしたものであれば消化上の問題はありません。ヒトが食べるよりも柔らかめに調理したいので、もともと硬めのご飯であれば、おじやなどのように少し煮込むのが調理のポイントです。
また、米は加熱調理により消化しやすくなりますが、冷めると「でんぷんの老化」が生じ、消化吸収率が低下します。そのため、健康な犬では、温かいご飯をさっと水洗いしてその他の食材と混ぜるなどして与えますが、減量させたい場合には冷ゴハンをあえて使用するという方法もあります。
体調による米の選び方の目安
糖尿病、腎臓病、アレルギーなど病気がある場合は、動物病院の指示を優先してください。病態に即した栄養バランスのとれた手作り食を作ることができる場合には、下記のような米の選択が可能です。
また、米アレルギーに関しては、低たんぱく米でもアレルギー反応を生じることがあるので、最初は少しだけ与えてみるのがポイントです
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Shi‐Ba vol.102『なんでもクソ真面目&マニアックに大研究シリーズ お米の便利手帳』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。