犬びより

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【本当に悪いの?】3つのテーマから日本犬への鉄拳制裁を考える

2019/01/08

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「犬を殴るなんてかわいそう」と思う方も、デコピンや声で怒ったりしていないだろうか? 実は飼い主あるあるの「体罰」について考察しよう。
 

反省するふりだけなら犬にもできる

子供の頃からずっと犬と暮らしている飼い主さんの中には、ここぞという時には拳で語り合っていた方もいるだろう。それで問題なかったかもしれない。しかし、熱血少年漫画レベルで互いをわかり合っていた可能性は極めて低い。

実は体罰のしつけはほとんど効果がない。強い痛みや刺激を与えればその場ではやめるが、繰り返すことが圧倒的に多い。特に昔は屋外飼育が大半。叩けばその場ではいけないことをやめ、犬小屋に入ってシュンとしていたはず。その『ごめんなさいポーズ』が反省しているように見え、飼い主さんはしつけられたと手応えを感じ、体罰が習慣になりやすかったのだろう。

でも反省のポーズは、相手をなだめている行動にすぎない。本当に反省し、しつけができているなら、叱られたことは繰り返さない。体罰が効果を示す場合には、少なくとも二、三度受ければ、その後はやらなくなるはずだろう。

犬と拳で延々と語り合っていた方、残念だが一方通行の可能性大。犬には愛の鞭が通じていなかったようだ。

やはり体罰は絶対にダメ、かと思いきや、実はそうとも限らない。実は奥が深い!? 体罰について考えていこう。

 

体罰の歴史

50年前
犬も子供の叱り方と同じく拳骨やビンタが主流。その一方で擬人化したような説教や、言い聞かせるようなしつけは少なかったようだ。

20~25年前
犬やオオカミの習性を誤って解釈した一見科学的なしつけ方法(実は体罰)が流行。特に家族に順位をつけるという俗説は現在も根強い。

10年前~現在
動物行動学や学習理論に基づいた科学的な方法が始まり、現在は主流になってきた。一昔前の非科学的なしつけ方法も混在している。

 
テーマ1

体罰で成功

愛を込めても犬には一切通じないが、体罰のしつけで成功しているケースもある。体罰は誤り、とは言えないようだ。

なぜなら、痛い目に遭う『罰』は行動を変える要素になるから。動物の学習理論で、特定の行動のたびに嫌な体験をすれば、その行動をしなくなっていくことがわかっている。

学習理論上は体罰OK、と。しかし、いざ実践する場合はどうか。野生動物を例に挙げて考えてみよう。幼獣は親の庇護のもと、ヤンチャに動き回る。時には崖から落ちたり親に教育的指導を受けたりして、痛い思いをしながら生きるための術を学んでいく。これがある意味、体罰に当たるわけだ。

飼い主さんが野生動物の真似をして叱るのは難しいが、取り入れられそうなことはあるのだろうか?

それは、1.好ましくない行動をする直前のタイミングで、2.犬に予測されず、3.飼い主さんの印象を悪くしないように、4.体罰(適切な強さの痛みや驚き)を与えること。いずれも難しい条件だが、特に4は注意が必要。人にとって好ましくない行動は、犬にとってやりたい行動である場合が多いもの。そのモチベーションを上回り、悪影響を残さない体罰を与えなければ効果はない。

この条件を完璧に満たせば体罰はOK! 我こそはという人はやってみてほしい。ただし一つでも条件が欠ければ、「飼い主を嫌いにさせるしつけ」に変わる。ミラクルが起きない限り、成功しないと思った方がよさそうだ。

なた、下準備も重要。普段から犬が好ましい行動をした時に、必ずほめる習慣をつけておくこと。よく叱る人ほど、犬が好ましい行動をしている時に意識を向けていない。はっきり言って、それが一番の問題。しっかりほめてその行動を増やしていこう。

また、好ましくない行動が不安や恐怖に基づいている場合、体罰は絶対ダメ。専門家に相談すること

鉄拳の一撃で魔法のようにしつけが完了することはない、奇跡が起きない限りは。でもその幸運は、体罰より宝くじの当選とかに使った方がずっといいような……。

 
テーマ2

体罰で失敗?

犬を体罰でしつけるには、神と仏とアスリートの能力が必要だ。奇跡が起きない限り成功しないと思った方がよさそう。

上述で話したように、効果的な体罰を与えれば一度、多くても三度で改善する。繰り返す場合、犬は飼い主さんの言っていることを理解していない。このような犬は、その場で一時停止や反省したふりをすることが多いもの。それを見た飼い主さんはわかってもらえたと思う。それなのに繰り返すため、困ってしまう。叱り方がやさしくて、じゃれ合いの一環になっている場合もある。犬にとっては楽しい遊びなので問題には発展しないが、飼い主さんの意図は伝えられないだろう。

また、体罰を与えたら逆ギレされたというケースも……。適切な体罰はとても難しい。大半のケースでは犬に『飼い主さんに痛みを与えられた』という記憶が残り、良いことはない。過剰に萎縮させてしまったり、飼い主さんに反感を持たせたりするだけ。人の手に恐怖を覚えるので、手を近づけただけで噛むようになることもある。

では、体罰の方法によって効果に違いはあるのだろうか。マズルを握ったり、仰向けにひっくり返したりする方法が有名で、このような力づくの抑圧が、『犬の親子間のしつけ方法』『人が優位に立つ方法』として推奨された時代もあった。しかしこれらは理論的な根拠がなく、現在の行動学では完全に否定されている。

相手が人だと考えてみよう。口をふさいで土下座させれば服従してもらえるだろうか? 答えはNO。犬だってそんなに単純じゃない。親のような気持ちでしつけるのは大切だが、人は犬になれない。親犬の真似はやめておこう。

抑えつける拘束は体罰ではないともいわれるが、これは誤り。特に日本犬の場合、一瞬の痛みで終わる殴打より、苦痛や嫌悪を与え続けられる拘束のほうが心理的反発を招きやすい。このような体罰で攻撃性を引き出してしまった事例は多いので、飼い主さんは避けるべきだ。

 
テーマ3

体罰はしない

我が家は体罰をしないから関係ない、と思っている方、実は意外なことが体罰になっているかも。ちょっと見直してみよう。

手は出さなくても怒鳴りつけているならば、威圧的な態度や声は犬にとって体罰以上のストレスになる場合も。例えば『NO』などの禁止の号令を怒った声で言うのは不適切。おすすめはできない。

とはいえ「コラ」や「ダメ」という禁止の号令は強い口調になりがち。禁止の号令は、立入禁止の看板をイメージしてみよう。工事現場などにある看板から威圧感ややさしさは感じない。事務的な淡々とした口調がベストだ。

好ましくない行動を大きい音で驚かせて止める方法もある。これも一歩間違えたら体罰。「テーマ1」で紹介したことに注意しよう。

逆に無言で無視というしつけ方法もあるが、これも消極的な罰になる。犬が要求吠えや甘え噛みをして、飼い主さんにコンタクトをとろうとしている時には有効な方法。

ただし、場所を守ってうなっているようなケースで無視は逆効果。犬は飼い主さんを遠ざけたいわけだから、部屋から立ち去ろうものなら大喜び。とはいえ、うなっている犬に体罰はなかなか勇気がいる。流血沙汰になりそうで怖い。この状況で体罰は、飼い主さんと犬が対立関係になってしまう危険が高いのでやめた方がいい。場所を守り始めたばかりなら、知らんぷりして座る方がいい。相手にしないのが一番。ただし噛まれるかもしれないので、念のため完全防備を整えてから座ろう。覚悟を決めかねる場合や守る行動が長期に渡っている場合、絶対にNG。すぐに専門家に相談しよう。

また、犬が家族の中で順位を決めるというのは根拠のない俗説。約20年ほど前にこの説が流行してから、犬が言うことを聞かないと『下位に見られている』と腹を立てる飼い主さんが増えてしまった。この俗説の最大の害悪は、体罰を助長していること。

犬は人をバカにすることはないが、威厳を感じることもない。地道にしつけをするのが一番の早道だ。

 

もっと知りたい鉄拳制裁Q&A

Q.犬が悪いことをしたら叱るべきでは?
犬は悪いことをしたつもりがないので、叱るという発想を変えよう。飼い主さんがやめさせたい犬の行動の大半は、習性に基づく自然なもの。とはいえ人の社会で暮らす以上、犬の自由にさせるわけにはいかない。互いに5分5分くらい妥協し合うのが理想だが、現状は犬に7、8分を妥協してもらっている。せめて共同生活をするうえで必要なことを、適切な方法で教えてあげたいものだ。

 
Q.犬の性格によって体罰の影響は変わる?
変わる。おおらかタイプ、中間タイプ、神経質タイプに分けて説明しよう。ラブラドール・レトリーバーのように細かいことを気にしないタイプおおらかタイプ。ちょっとビンタされたくらいでは平気。ただし、「飼い主が何かやるな」ということは察知されるので、体罰を繰り出す手などを避けるのは上手くなる。中間タイプは飼い主さんが怒っていることは察知するので、反省したふりや「ごめんなさいポーズ」をするようになるかもしれない。最後に神経質タイプだが、「飼い主さんは怖い存在だ」と思って近寄らなくなります。日本犬は臆病でも攻撃性のあるタイプが多い。追い詰められて自分の身が危うくなると、攻撃に転じるので要注意。

 
Q.うっかりして犬の足を踏んだら体罰?
偶然であれば、「ごめん!」とあやまりながら犬が好むこと(食べ物や遊び)をしてあげよう。けがをしていなければ、大げさにせず別の楽しいことを始めるのが一番だ。

 
Q.困った時に相談する専門家は?
学習理論に基づいたしつけ方法を実践している専門家がおすすめ。飼い主さんも一緒に学べる方がよい。犬に苦痛を与えたり順位づけに基づいたりする指導をする専門家は避けた方が無難。

 

体罰は否定しないがデメリットだらけ

体罰はいけないと知っていても、ついやってしまうこともあるはず。「ここぞという時にはやはり一発」と拳に自信がある方もいそうだ。

体罰は多岐に渡る。悪気がなかったとしても、『1回もやったことない』と胸を張れる方は少ないかもしれない。学習理論から見れば100%否定するのもおかしいが、デメリットしかないと思っておこう

いい子になってほしいという思いを込めても残念だが犬にはわからない。日本犬との愛情は拳や怒声ではなく、日々の暮らしを積み重ねて深めよう!

 
 
Shi‐Ba vol.97『3つのテーマから日本犬への鉄拳制裁を考える』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。