「呼ばれたら戻ってくる」というシンプルなしつけなのに、犬に教えるのが難しいのはなぜなのだろう。今回は日本犬にとって最難関に近い呼び戻しのトレーニングに真っ向から挑戦!
なぜ、日本犬は戻ってこない?
■日本犬はオヤツよりも自由が好き?
トレーニングの基本は「ある行動をしたらいいことがあった」と犬に学習させていくこと。
しかし、日本犬を呼び戻す場合は呼ばれていったらオヤツをもらった=いいことがあったと認識しない犬もいる。
オヤツをもらったけれど本当は遊んでいたかったと自由への未練が残る犬のほうが多い。
食いしん坊な犬でも外に出るとオヤツのランクが下がることもある。
■脱走などの緊急時に呼ぶのは難しい
脱走したときなど、パニックを起こしている犬を呼び戻すのは非常に難しい。呼ぶよりもオスワリやマテで動きを止める号令の方が成功率は高いが、日常的にトレーニングしている犬に限られる。
号令以外では、逃げる犬と反対方向に飼い主が走りながら呼ぶ方法があるが、日本犬は平然と散策を続けることもあるので、万能の切り札にはならない。厳禁なのは犬を追いかけながら呼ぶこと。まずは緊急事態が起きないように管理に注意しよう。
■呼びの号令と名前は区別して教えよう
名前と呼ぶ号令は分けて教えたほうがいい。名前を呼び戻しの号令にすると、犬がノーリードで車道の向かい側にいた場合、名前を呼んだ拍子に飛び出してしまう可能性がある。
万が一に備えて、名前は飼い主に注目する合図、これから号令を言う前触れとして教えよう。
生後間もない子犬のうちは、名前を呼べば来るという状態でかまわないが、半年を過ぎた頃から分けて教えたい。
■やってはいけない誤った方法がある
呼び戻しを教えるために、トレーニング時だけでなく、日常生活においても次の7点は厳禁。
1.飼い主にとって必要なときだけ呼ぶ。
2.呼んで犬が応えた時に十分なごほうびを与えない。
3.来た時に叱る。
4.来ないときに叱ったり、「ダメ」などネガティブな言葉を言う。
5.来ないときにオヤツを見せて呼ぶ。
6.来ないときにリードを引っ張ったり、強制したりする。
7.来ないときに「仕方ない」とそのまま放置する。
■声より笛の方が犬は注目しやすい
犬は聞き慣れない音に反応しやすいので、上手に使えば効果的な呼び戻しグッズになる。
犬にとって1日でいちばんいいことがある時(食事や散歩の直前)に笛を吹いて、犬が振り向いたときに号令をかけて近くに来させる。
教える前に知っておきたい犬へのごほうび
愛犬の個性や日本犬の性質により、何気ない行動がごほうびに変身することを知っておこう。
・ダッシュ
走るのが好きな犬なら、よいことをしたあとにほめて思いっきりダッシュしてもOK!
・オヤツ
ごほうびの定番といえばオヤツ。トレーニングの難易度に合わせて、オヤツもグレードアップすると効果的。
・探索
日本犬は探索が好きな犬が多い。マーキングやニオイ嗅ぎを許可してもらうことも、犬にとっては嬉しいこと。
・オモチャ
オヤツの代わりにお気に入りのオモチャで遊んであげるのも立派なごほうびになる。
▼日本犬の場合、オヤツが最高のごほうびとは限らない
トレーニングのごほうびと聞いて思い浮かべるのは、なんといってもオヤツだろう。
食べ物があればあるだけ食べる犬なら、オヤツが最高の強化子になる。
しかし、日本犬の場合、食事を1~2食抜いた空腹の状態であっても、オヤツよりもニオイ嗅ぎや初めての場所を探索するほうが強化子になる犬もいる。
愛犬にとっての最高のごほうびは何か、状況に応じてしっかり把握して、効果的に使えるようにしておこう。
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呼び戻しの手順
ここで紹介するのは基本の手順。犬に合わせてアレンジが必要になる。
1.ごほうびの管理
愛犬が好きなもの、興味を向けるもの、好きな行動を飼い主が認識して管理することからはじめる。好きな行動は頻繁にする動作も含まれる。愛犬の様子を観察し、ごほうびとして活用しよう。
2.トレーニング開始前の注意
自立性の高い犬には強制力が必要な場合もある。リードを引かれることに嫌悪感を持たないように、日頃から「リードを少し引いてごほうび」というトレーニングをしておく。呼び戻しができない犬は、ドッグランなどでも安易にノーリードにしない、また犬が反応しない状況では呼ばないこと。
3.散歩中に声をかける
飼い主が犬を呼ぶ必要があるときは、犬の意識が別のものに向いている状況であることが多い。犬は呼ばれたくない時ばかり呼ばれていると反応が悪くなっていくので、飼い主の都合で声をかけるのはやめる。
まず、犬が飼い主に意識を向けていないが、名前を呼んだら振り向くと思われるときに1回だけ呼ぶ。振り向いたら褒めて、ごほうびを与える。振り向かなければ立ち止まってリードを短めに持ち、振り向くまで数秒ごとに名前を呼ぶ。この時にリードは引かないこと。どんなに時間がかかっても振り向いた時は大げさにほめてごほうびを与える。
4.リードを使って呼ぶ
次のA~Cの3つの方法を順番に行い、できるようになったら環境を変えながらランダムに組み合わせて行う。
A.「犬の意識をあおって呼ぶ」は1人が短くリードを持ち、犬の前で飼い主がオヤツなど興味のひくものを見せ、犬が行きたいのに行けない状況を作る、飼い主の号令とともに、リードをゆるめて行かせる。
B.「リードで誘導する」は犬が集中していないときに号令を言い、直後に素早く、嫌なショックを与えないようにリードをひいて誘導する。
c.「リードを使わずに呼ぶ」は号令だけで来させる練習。来ないときは数秒経ってから再チャレンジ。犬が来るまであきらめずに繰り返すこと。
5.ロングリードを使って呼ぶ
4の散歩用リードをロングリードに変えて行う。距離が伸びる分、犬が近寄る途中で他に気を取られないように注意すること。
6.犬を放して呼ぶ
貸し切りドッグランなどに犬を放し、来るまで呼ぶ。また笛などを使って犬の気を引き、直後に「オイデ」など声をかけ、犬が来たら最高のごほうびを与える。
犬の立場になり考えれば呼び戻しは簡単!?
呼び戻しは絶対に必要というしつけではないが、生活自体がトレーニングになるので、愛犬との接し方を見直す有意義な機会になる。
トレーニングと聞くと身構えて、ついマニュアルやテクニックに頼ってしまいがち。
それ以前にまず、愛犬の個性を見出してあげる、自分の行動が愛犬にどのような影響を与えるか予測する。
犬の立場になって素朴に考えることが何よりも大切だ。
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Shi‐Ba vol.51『日本犬のしつけ最難関!?呼び戻しに挑む!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。