他犬種との違いがまるわかり!日本犬専用 撫で方の作法

お触りお断りの日本犬と暮らす飼い主さん、「しかたがない」とあきらめるのは早い。触れ合いに関する人と犬の文化や多様性を見直せば、もっと仲良くなれる。日本犬の触り方、撫で方を身につけよう。
 

 

接触が苦手な理由

飼い主さんにもなんだかそっけない日本犬。「撫でたい! 触りたい!」と思っても、唸られたり逃げられたりすることもある。

飼い主さんが感じているとおり、日本犬は撫でられるのが苦手なタイプが多い。

それは日本犬だからというわけではなく、そもそも人と犬のコミュニケーションの表現の違いが根底にある

人はサルと同じように手を使ってスキンシップを行う。犬は手の代わりに口を使ってグルーミングをするが、主に母犬が子犬に行う時だけ。猫のように、成長した仲間同士ではほとんどない。日本犬を抱きしめようとして逃げられる背景に、そんな違いがある。

日本犬はラブラドール・レトリーバーのような欧米犬種と違って改良の度合いが低く、「原始の犬」に近い。本来の犬の習性を強く受け継いでいるとも考えられるだろう。

日本犬に接触が苦手な犬が多い理由は、もともと繊細な性質で変化を受け入れにくく、多様性があるタイプではないことも影響している

また、犬の習性と日本犬の性質以上に大きく影響するのは、個体差。くすぐったがりや痛がりの人、パーソナルスペースが広い人がいるように、犬にも接触に敏感で距離を置きたいタイプがいる。愛犬の個性を見ていくことも大切。

お触りお断りの日本犬にも、このようにさまざまな事情があるのだ。では、撫でたり触ったりするのをあきらめるべきかというと答えはNO。家庭犬は人間社会で生きていく動物。人のコミュニケーションを受け入れてもらえるように教えよう。

近年の日本ではダイバーシティ(多様性)が注目されている。犬の飼い主は家庭内のダイバーシティも考える必要がある。

犬との接触はスキンシップに加えて、日常のケアでも必要。散歩後の足拭きや換毛期のブラッシングができないと、一緒に暮らす飼い主さんだって困るだろう。もし将来的に介護が必要になった時、十分な世話ができなくて後悔したくないはず。

本特集ではスキンシップとケア時の触り方や教え方の違いも紹介しよう。

 

スキンシップとケアの教え方

撫でたり触ったりする動作は、スキンシップとケアに分かれる。それぞれの特徴や教え方を確認しておきたい。

■スキンシップ

コミュニケーションのための触れ合い。触っている時間が長く、手のひらを当てたり動かしたりすることが多い。

【教え方】

飼い主の隣でリラックスできるように教える。例えばソファでスキンシップができるのがゴールとすれば、下記のような手順で教える。

(1)犬が隣に来ても嫌がる(手を伸ばしたりからかったりする)ことをしない

(2)犬が隣に来たらなにげなく手で軽くふれてみる

(3)優しく声をかけたり犬が受け入れやすい部位を撫でたりする。

 
■ケア

主に世話のための動作。指を使った細かい動作が中心。ギュッと握るなど力を入れることも多い。手だけでなくタオルなどのアイテムも使う。

【教え方】

接触を良い印象に変える。

(1)ごほうびを与えながら、犬が受け入れやすい部位を触る。

(2)(1)と同じ部位に手のひらをのせ、一呼吸置いてからごほうびを与える。

(3)(1)と同じ部位に手のひらをのせて5cm程度撫でたらごほうびを与える。

 

日本犬の撫で方 12のコツ

「日本犬をもっと撫でたい!」と思ったら、熱烈なスキンシップはむしろ禁物だ。おすすめしたい犬の撫で方の主なコツは12種類。愛犬のボディランゲージや反応を見ながら無理なく試していこう。

■正しい撫で方の例

犬を撫でる時のお手本を覚えておきたい。物足りなさを感じるかもしれないが、まずは接触に嫌悪感を持たれないようにしよう。

(1)ストロークは短めにする
ストローク(撫でる幅)は5~10cm程度の短さから始める。赤ちゃんを撫でるようなイメージで手をゆっくり動かす。速い動きは興奮させるので注意。

(2)手の甲で撫でる
手の甲は手のひらほど体に密着しないので、接触を受け入れる犬が多い。手の形は自然な丸みがある状態にし、犬の体高に近い位置から差し出そう。

(3)一言かけてから触る
犬が他のことに気を取られている時や人に背中を向けている時は、名前を呼ぶなど一声かけ、気を引いてから撫でる。突然触って犬を驚かせずに済む。

(4)お腹を撫でる時は急がない
お腹を撫でる時は背中や横腹のあたりを優しく撫でて、犬の姿勢が自然に崩れていくのを待とう。強引にひっくり返してはいけない。

(5)スッと置いた圧力で撫でる
手をスッと置いたくらいの軽い圧力で撫でるのがおすすめ。ギュウギュウと圧力をかけたり、逆にサワサワとくすぐったりすると嫌がられる可能性大。

(6)ゴミを取る時は撫でながら
犬の体についたゴミを取る時は、いつものように撫でながら素早く取る。指でつまむしぐさを警戒する犬もいるため、さりげなく払ったほうがスムーズだ。

 
■要注意の撫で方の例


日本犬を触る時は下記の撫で方を控えた方が無難。ただし子犬の頃から慣れていれば問題ないこともある。

(7)わしゃわしゃと撫でる
荒っぽい動作で接触されるのを好まない犬が多い。わしゃわしゃ、ぐしゃぐしゃと撫でられている時、大抵の日本犬は我慢しているものだ。

(8)上から手を伸ばす
犬の頭上から手を伸ばすと、たとえ飼い主でも嫌がられる。「もし自分の頭上から巨人の手が迫ってきたら?」と考えれば、犬の気持ちがわかるはず。

(9)異様な雰囲気で迫る
「思いっきり撫でるぞ!」などと異様な雰囲気で迫ってはいけない。犬は変な空気を感じ取る。犬とのスキンシップは自然な動作を心がけた方が成功する。

(10)寝ている時に触る
犬が寝ている時は邪魔をしないこと。実は寝ている犬を触って噛まれる事故が多い。無防備な状態で休んでいる時、異変が起きれば驚くのが当然だ。

(11)触り方がしつこい
いつまでもしつこくベタベタと撫で回すのはNG。犬の反応を見て切り上げよう。時間も撫で方もあっさりを心がけることが重要だ。

 
■番外編

犬とのファーストコンタクトの基本を知っておこう。他人に愛犬を触ってもらう時や、自分が他犬を触る時に役立つ。

(12)手を軽く握って見せる
卵を包むように手を軽く握って犬に見せると、犬は興味を持って近づいてくる。接近しなくても拒絶の様子がなければ、首の横から胸あたりを手の甲でスッと撫でる。

 

触る技術 まとめ

愛犬の繊細な性質を理解して、何が平気で何が苦手か把握しておくことがスムーズにふれ合うコツ

部位、シチュエーション、触り方などをチェックして、苦手なものに慣らしていこう。上で紹介している正しい例と要注意の例のどちらも、練習で慣れさせるのが理想。犬が嫌だと思うことをしないようにしながら、少しずつ受け入れられることを増やしていくこと。

触り方のバリエーションを増やしておけば、介護の時にも役立つ。物事を柔軟に受け入れやすい子犬の時期を逃さず、怖がらせないように慣れさせるのが一番。最適な時期は生後4ヶ月未満までの社会化期だが、それを過ぎた成犬や老犬でも現状より慣れさせることは可能。スキンシップやケアに対して良い経験を積めば、少しずつでも好きになってくれる。

日本犬の場合、「触ったら突然噛まれた」というケースを聞くこともあるが、実は犬が突然噛むケースはほとんどない。その前段階の緊張や嫌な気持ちを『ボディランゲージ』で伝えている。例えば、目を細める、耳をやや後ろに倒す、口元に力を入れる、動かず固まる、といったしぐさをする。柴犬のボディランゲージは特に微小なので、見逃しているケースが多いのだろう。

喜怒哀楽の感情の変化には気づけても、小さなサインはわからないことも。日本犬のボディランゲージを見分けるコツがあるようだ。まずは愛犬の平常時の表情や体の状態を知っておくこと。そこから変化を見分けることができれば、喜怒哀楽のボディランゲージを読み取れるようになる。

接触に関する練習では、犬が心地よく受け入れている状態で行うことが大切。緊張やイヤな気持ちのボディランゲージが出る前に終わりにしよう。時には『触らない』という選択も大切。犬の気持ちを尊重することで、もっと良い関係を築ける。

触るために最も重要なのは、ボディランゲージを読み取る技術! 日本犬と気持ちを通わせながら、スキンシップもケアも楽しみたい。

 
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Shi‐Ba vol.106『他の犬種に比べると、ちとコツがいるんです 日本犬特化! 触る技術』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。
 

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