「つっぱり」と聞いて相撲と不良を思い出した方、大不正解です。本特集では前足ピーン、後ろ足ググッ、全身カッチーンとつっぱる柴犬を愛でながら、気持ちを解き明かしたい。
つっぱりの種類
なんとつっぱりとして使われるシチュエーションは19種類。なぜこんなに多いかというとつっぱりはボディランゲージとして使われるからだ。人がシチュエーションによって言いたいことが変わるように、犬も全く同じ。一見同じようなつっぱりでも、意味を正しく理解して読み取ろう。
圧力でアピール
食事中の家族のひざに前足やあごをのせて、ググッと力を入れるアピール方法。
体を支える
体をかく時や不安定な体勢になった時に、倒れないように力を入れて支える。足が目立つものの、実は全身がグッとなっている。
仁王立ち
相性が悪い犬に出会った時などに、全身に力を入れて仁王立ち。顔、耳、尾などすべてが前傾。すぐに対応するための臨戦体勢。
遊びの誘い
遊びを誘う時、上半身を低くして前足を前方へ伸ばした体勢になる。プレイバウと呼ばれるボディランゲージだ。
寝相
睡眠中に足がピーンと伸びることがある。寝返りや寝相の一環。まるで夢と連動しているような動きに見えることも!
緊張した歩き方
緊張した時にはギクシャクと歩く。足の関節が曲がらず、つっぱったまま歩いているような状態になる。緊張した人と同じ。
足もとの確認
慣れない足場を歩く時、触感を確認するために前足だけ伸ばしておそるおそる踏む。後ろ足は「退路を確保」した状態になる。
ストレッチ
体を動かす前の準備運動。寝起き、散歩や運動の前に全身を伸ばす。緊張の表れでストレッチをすることもある。
ものを引き寄せる
離れたところにあるオモチャなどを引き寄せる。時に人の手を引き寄せ、「撫でて」と要求するアピールにも見られる。
撫でられている時
撫でられて気持ちいい時に、足をグーッと伸ばし、その後ゆるめてリラックス。つっぱりというより、伸びている状態。
抱っこした時
抱っこした時に足がピーン、全身がカチン。柴犬に多いこのケースは抵抗の表れ。実は高頻度で見られるつっぱり。
抱っこから下ろす時
抱っこから下ろす時、着地する前から足を伸ばしてジタバタ。早く解放されたいorジタバタで下ろしてもらえると学習。
散歩中の抵抗
散歩の時に行きたい方向へ、あるいは行きたくない方向と反対へ引っ張ったりする。頑固な主張に見えるが、アピールの場合も。
退路を確保
恐怖や不安を感じるものに遭遇した時、後ろ足を後方にピーンと伸ばして退路を確保する。いつでもバッと逃げられる体勢。
壁ドン
相手を足で抱え込んだり、押さえつけたりするような体勢になる。相手が嫌がってもやめない、長時間続けるといったケースは注意。
ギリギリセーフの演出
犬が入ってはいけないキッチンなどへ、前足やあごだけ侵入。後ろ足は残して「入ってません」感をアピールする。
リラックス
足や体が自然に伸びている状態はリラックス。つっぱっているように見えても、足先の力が抜けていれば緊張状態ではない。
芸として披露
最初は別の理由でつっぱったとしても、周囲がほめたりしていれば一芸として定着。飼い主の反応を引き出すためにつっぱる犬も。
見慣れないものの確認
見慣れないものに遭遇した時に前足をグーッと伸ばし、触ったり犬パンチしたり。後ろ足は「退路を確保」状態になる。
犬のつっぱりの理由
1.抵抗
そこから逃れたい気持ちの表れ。柴犬に多いのは抱っこ。足を思い切り伸ばしたり、体をこわばらせたり。散歩中に「行きたくない」と後方へひっぱることが多い。
2.緊張
不安や恐怖を感じて体がこわばった状態。人も緊張するときには、手足に力が入ってギクシャクと不自然な動きになるもの。犬も同じように、関節が曲がらないロボットのような動きになってしまう。
3.調査
前足を使い、気になるものをつついて調べる動作。犬は優れた嗅覚で調べるために鼻を前方に出すが、中には猫のように前足を使うことも。
4.要求
オヤツ、マッサージ、散歩をねだって、つっぱりでアピール。散歩のときに「あっちへ行きたい」とひっぱる動作も要求の一種だ。
5.リラックス
伸びていても力は入っていない状態。落ち着いている。
6.遊びの誘い
相手を遊びに誘うポーズ。前足を前方へ伸ばし、尻を高くあげた姿勢。プレイバウのこと。
プラスのつっぱり
緊張に当てはまる場合のつっぱりは注意しよう。緊張は犬にとってデメリットだが、飼い主が犬の気持ちに気づいてあげられれば、メリットに変えられる。
犬が緊張していることがわかったら、まずそのシチュエーションに慣れるように、適切な練習をしよう。
程度の差はあっても不安な気持ちになっている状態なので、それを犬が乗り越えられるように手助けしてあげること。緊張をリラックスに近いところまで変えられれば理想。
いろいろなものに慣れる『社会化』が大切なので、専門家に相談してみよう。
要求のつっぱりも気をつけて。犬の要求に100%応えられるならいいが、ダメな時もある。oKな時とNGな時があると、犬はかえって混乱してしまう。飼い主との関係にもひびが入り、悪影響が心配。
要求は基本的に無視。時に聞いてあげたい要求であれば、アイコンタクトやオスワリなど、指示に従った後ごほうびとして提供しよう。ごほうびはオヤツだけではない。ベランダに行かせる、散歩に出かける、オモチャで遊ぶ、といった犬が好きなことも含む。いろいろなごほうびを活用しよう。
つっぱりや犬パンチが一芸として定着している場合、続けても問題ない。最初は緊張や抵抗だったのかもしれないが、飼い主にウケれば一芸として定着する。互いに楽しんでいるなら続けてもOK。
ただし、特定の行動が儀式のようになっている場合は要注意。それをやらずにはいられないほどの執着は、互いにとってマイナス。何事もほどほどを心がけよう。
散歩のときに見られるつっぱり
散歩の時のつっぱりに困っているという飼い主は多い。
散歩の時に引っ張る場合、まずは『力の反作用』を理解することが先決。押した力と同じ力で押し返される法則。人も肩を押されれば、体勢を戻そうとして押し返す。
散歩時の引っ張りに悩む方は、犬と飼い主が直列になっていると思われる。その並び方だと、飼い主の引っ張る力が犬にかかり、犬は逆方向に力をかける。フセやオスワリをさせようとして背中を押すと、押し返す。これも力の反作用だ。
犬が止まったら人は背中を向けたままリードが張らないところまで戻り、犬がどうするか待つ。チラ見はごほうびになるのでNG。犬がさらに動こうとしたら、リードを引っ張り返さず、固定して持とう。しばらく待ってリードがゆるんだらごほうび、さらに声をかけて歩き出したらごほうびを与えるのが良い。
苦手を減らし互いにプラスにしよう
飼い主は、犬がつっぱっている時の気持ちを正しく読み取ってあげてほしい。遊びと思っていたら、実は緊張や抵抗というケースがあるかもしれない。
イヤよイヤよも好きのうち。抵抗しているように見えて実はうれしい。そんなパターンもある。確かに抵抗や緊張に見えても、遊びになっていることもある。
しかし、犬には裏表の気持ちがなく、冗談も通じない。残念ながら、イヤよイヤよも嫌いのうち、というケースがほとんどのような気がする。
互いにとってプラスのつっぱりを増やしていくために、飼い主はどうするべきだろうか。
柴犬は抵抗や緊張のつっぱりが多い傾向にあるが、いろいろなものに慣れる社会化をしっかり進めている柴犬は、つっぱることが少ない。苦手を減らして、お互いにプラスのつっぱりを楽しめるようにしたい。上手につっぱり合えば、愛の力の反作用が起きるかも!
ピーン、ググッ、カッチーンと、今日も押し合いへし合い、つっぱり稽古に励もうではないか!
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Shi‐Ba vol.91『力学的な愛情の押し合いへし合い つっぱり 張り手・犬パンチ 残った残った後ろ足』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。