日本犬ならではのしつけ。子犬期から老年期まで成長に合わせた散歩

柴犬の散歩

犬の散歩は、野生の肉食獣が生きるために行っていた獲物の探索や生活圏の確保などの代替行為でもある。祖先の本能を受け継ぐ日本犬の散歩をより充実させて、飼い主との良好な関係作りにも役立てよう。
 

 

散歩は犬にとって生きる喜び

日本犬との散歩を日課にしている飼い主は多い。その理由は、自分の運動のため、犬が外に行きたがるから、毎日の習慣として、など。

散歩は当たり前と思われているが、そもそも犬にとってどのような意味があるのだろうか。

野生の肉食獣は、住まいのまわりでのんびりしているだけでは生きていけない。獲物を探して歩き回ったり、テリトリーをパトロールしたり、新たな生活圏を確保したり、交配相手を探したり、毎日活発に活動している。必要に迫られて行うことだが、目的を果たした時の達成感や、そこに至る過程のわくわく感こそが生きる喜びなのだろう。

親や仲間の庇護下にある幼獣は、まだこれらの活動をする必要はないが、いずれ成獣になった時には自分で生きていけるように、遊びや探検を通じて将来のためのトレーニングをしている。

現在の家庭犬も、祖先が持っていた意欲と能力を受け継いでいる。獲物を探したり生活圏を守ったりする必要はなくなったが、それに代わる毎日の活動が飼い主との散歩なのだ。犬にとって生きる喜びである散歩。単なる運動と軽視しないように、愛犬との散歩を見直したい。
 
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犬の散歩の歴史を振り返ってみよう

日本人と犬の関わりの変化とともに、散歩に関する様々なことも変わっている。まずは現在までの散歩の歴史を振り返ってみよう。

時間
柴犬の散歩

朝夕2回の散歩は近代に根付いた習慣
散歩の正確な歴史は不明だが、毎日朝夕2回散歩に行く習慣は、近代に根づいたと考えられる。多くの人は日中仕事なので、その前後に散歩に行くことが一般的になったようだ。オオカミやクマなどの野生動物は、黎明・薄暮が最も活発に行動する時間なので、朝夕の散歩はイヌ本来の生活ペースにもちょうど合っているのだろう。

道具
柴犬の散歩

犬を管理するためにリードが普及した
昔の日本にいた犬は、猟師が経験や口伝で訓練をした犬、町で放任されていた犬や野犬など。昭和25年に狂犬病予防法が施行され、飼い主に犬の管理が義務づけられた。その頃から犬を係留して飼育するようになり、散歩の時にはリードでつなぐようになった。飼い主が犬と手をつなぐように、リードをつないで散歩する姿が定着していった。

歩き方
柴犬の散歩

散歩スタイルは多様化している
昭和40年代頃まで、一般家庭では「犬をこうやって歩かせよう」と意識することはほぼなかったものと考えられる。その後、「飼い主より前を歩かせてはいけない」という考えが急速に普及。人は犬を前に行かせまいとひたすらリードを短く持ってそり返って歩き、意図を教えられていない犬は前のめりに踏ん張って歩く、というスタイルが急増した時期もあった。今は散歩スタイルが多様化して、さまざまな歩き方が見られる。例えば、昔ながらに引っ張られるまま、前に行かせまいとして犬と引っ張りっこ、ずっと脚側行進させる(横について歩かせる)、リードを引っ張らない範囲で自由にさせる、など。ご家庭によるオリジナルの散歩スタイルがあるかもしれない。

 

成長過程に合わせた散歩の工夫

柴犬の散歩

日本犬のおおよその変化に合わせて適切な散歩スタイルを考えよう。さらに有意義な時間を過ごせるようになるはずだ。

【子犬期】出生~4ヶ月
本格的な散歩は初年度のワクチンが完了してから。野生であれば、親から生きるために役立つ行動を学ぶ頃。「やりたがることを我慢させていい子にする」という発想ではなく、「こういう行動が役に立つ」と親のように教えること。

 
【思春期】4~10ヶ月
今後の散歩スタイルが確立する大切な時期。野生であれば、親から生きるために役立つ行動を学ぶ頃。「やりたがることを我慢させていい子にする」という発想ではなく、「こういう行動が役に立つ」と親のように教えること。

 
【若犬期】10ヶ月~3歳
良い習慣ができていればよいが、問題行動がすっかり定着するのもこの頃。解決は十分に可能なので専門家に相談すること。最も体力がある年齢なので、週に一度は遠出して運動欲求や知的好奇心を満足させてあげたい。

 
【壮年期】3歳~8歳
飼い主と犬の個性によって、それぞれのご家庭の散歩スタイルが確立する頃。良い関係ができていれば、飼い主が保護者で犬は従うだけの存在、という関係を卒業し、犬が飼い主を気づかってくれることも増える。

 
【熟年期】9歳~11歳
習慣を変えることが難しくなる。不都合があれば管理の工夫で問題を回避すること。それまで楽に跳べていた溝などを跳び損ねると、急に自信をなくして老け込んでしまうことも。体力の低下に合わせてルートを工夫する。

 
【初老期】12歳~14歳
年齢のせいで散歩に行きたい気持ちが薄くなる犬もいるが、病気やケガなどの不調がない限りは毎日一定の運動はさせた方がよい。無理は禁物なので、犬の様子をよく見て判断することが大切だ。

 
【老年期】15歳~
常に目を離さないよう気を配り、健康維持のケアやリハビリのつもりで歩かせる。著しく体力が低下した場合は歩行がかわいそうに感じるかもしれないが、犬が散歩を楽しみにしているなら介助して少しでも外に出よう。

 

犬と飼い主に合った散歩を工夫する

柴犬の散歩

散歩は野生動物が生きるために行う活動の代わり。達成感やわくわく感を得られるように年齢ごとに工夫したい。加えて、現在の市街地は自然な環境が少ないため、安全に配慮した散歩コースや適切な時間を選ぶことが大切だ。

散歩コースは舗装されていない変化のある場所が理想だが、そういう条件に恵まれたご家庭はごく一部だろう。市街地でもできるだけ変化をつけるために、いつもの散歩コースを逆に回ったり、違う角を曲がってみよう

ただし、犬が高齢ですでにずっと同じコースを歩くことが習慣になっている場合は、そのまま続けた方がよい。暑い時期は極力日中を避け、アスファルトなどの地面が冷えた涼しい時間帯に行こう

家庭犬は野生動物と同じ運動量を得ることは難しいが、存分に体を動かす時間は作ってあげたいもの。散歩は昔から『最低朝夕30分ずつ』といわれているが、特に根拠はなく、そのくらい歩けば落ち着くという経験に基づいているよう。だらだら歩きと早足や駆け足では、同じ30分でも運動量は違う。犬は早足で人はジョギングという時間も作ると、運動量が得られて変化もつけられる。

犬の様子や飼い主の体力に応じて、ご家庭で散歩コースやメニューを考えてみよう。
 
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監修:山下國廣先生
 
Shi‐Ba vol.79『日本犬ならではのしつけ法、はじめました。 散歩の時に犬と同じ世界を見よう』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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