人のあくびは他人にうつると昔からよく言われているけれど、あくびがうつるのは人間同士だけではない。飼い主のあくびが犬にもうつることが解明されている。犬のあくび……普通のことなだけに深くは考えたことなかったけど、あくびをする犬の真意、実は飼い主が想像するのとは違っていたりして。
犬のあくびの理由と効能
犬があくびする理由ってのは眠気だけではない。たとえば、犬の感情や状況を無視して、無理矢理かつ執拗に撫でまわす飼い主の傍若無人なスキンシップ。
それなりに社会性のある犬だと、牙を剥いて怒るわけにもいかずひたすら我慢。そんな我慢を強いられた時、犬もあくびすることがある。
また、散歩中にやたら吠えてケンカ売ってくるコワモテな犬に出会った時とかも、そっぽ向いてあくびしながら、災いが通り過ぎるのを待つ。ストレスサインってやつだ。嫌な気分や緊張をあくびすることで、解き解そうって感じか。
軽い苦痛を感じた時、犬はあくびをする。動物が2つの相反する衝動や誘因に強い意欲を持っている時に、それとはまったく関係のない行動を見せることがよくある。
これは転移行動と呼ばれるもので、あくびや毛繕いなどがそれ。どうやら犬は、大きな葛藤を抱えてホアーっとやることがあるらしい。
脳が発達した生き物ほど、一見単純な動作にもさまざまな要因が絡むもの。その理由のひとつとしてあるのが「転移行動」だが……ツライ現実から目を背けて、わけのわかんない行動を起こしてしまう。
また、ニホンザルをはじめとするマカクザルで、あくびや体を掻くなどのストレスサインに関する研究も行われている。それによれば、同じストレスを感じる状況にあっても、あくびする猿もいればしない猿もいる。何度も体を掻く猿もいれば、その頻度が少ない猿もいるという。
つまり、ストレスを感じた時に動物が起こす転移行動は、かなりの個体差があるということ。飼い主による過度のスキンシップに、あくび連発する犬もいれば、ぽや~んとしている犬もいるが、どれほどストレスを感じているかは犬のみぞ知る。
動物のストレス行動の研究は難易度が高いらしく、特に知能の発達した犬のあくびに関しては、まだまだ謎が多いってのが現状のようだ。
どうしようもないほど苛立ってストレスを感じてるんだけど、どうしようもなくて……まったく関係なく、問題の解決には決してならない行動に出てしまう。これを転移行動という。苛立ってる時の貧乏揺すりとかも、それだろうか。また、犬の場合だと、散歩中に急に嬉しくなり過ぎてくるくる回り出したり、「待って」を我慢できずに苛立って穴を掘る仕草をするとか。
伝染するあくび
デートの時にあくびされると「一緒にいるのが退屈?」と気に病んだり、また、犬のあくびもストレスサインって、飼い主の間でもけっこう知られていたりする。あくびを感情表現の一種とするならば、人でも犬でも、あまり前向きな感じではないかもしれない。昔から、人前であくびするのは失礼だってなマナーもあるし。
でも、あくびするのはネガティヴな要因ばかりではないってことが、研究により判明している。
あくびは伝染する。これは昔からよく言われたことだが、イタリアのピサ大学が男女109人の日常生活を観察したところ、見知らぬ人同士よりも、友人とか家族など親しい関係のほうが、より頻繁にあくびが伝染する結果が出たという。
考えみれば、犬を「大切な家族」と思ってる飼い主も多い。犬のほうもそう思ってるとしたら、人間の家族同士と同じ結果が得られるのではないか?
実際のとこ、その真意は犬にしか解らない。日頃、自分が愛犬にどのように接しているか。そこのとこをよーく考えながら、愛犬のあくびの理由を推察してみるしかない。
また、犬同士の間でもあくびが感染する可能性もある。親しい同居犬とかだとありそうだ。あくびが感染するかどうかで、同居犬同士の関係も判明するかも?
日本犬にもあくびは伝染する?
さて、柴犬の場合はどうだろう? 残念ながら、どこの研究グループも、犬種別の感染率までは実験していない。また、実験に使った犬に日本犬は含まれていなかったという。
日本犬は何事も自力本願の意識が強く、人間を頼らず自分で解決しようという傾向が強い。それだけに、洋犬のように飼い主をチラ見する頻度はどうしても少なくなる。
見てなきゃ、飼い主のあくびにも気がつかないし、そのぶん感染する確率は低くなるかも。
また、ツンデレで意固地なヤツが多いだけに、親愛の情の発露であるあくびを必死に我慢するとか、ないか?
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Shi‐Ba vol.80『眠いだけじゃないの?謎だらけのメカニズム 犬のあくび』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。