みんな知っている「免疫」という言葉。これが弱るとまずい、というくらいは分かるが、では一体どういうものなのか。免疫に関する知識を増やしたいという方、難しすぎない範囲で勉強してみよう。
犬に襲い掛かる外敵
■ウイルス
ウイルスと細菌を混同している方もいるかもしれないが、これは全くの別物。ウイルスは抗生物質が効かず、他の生物の細胞を利用して増殖する性質を持つ。
これが原因となる代表的な犬の病気は、狂犬病、ジステンパー、パルボウイルスやコロナウイルスに由来する疾患など。
■細菌類
細菌はその栄養源があれば生存増殖ができるが、病原性のある細菌が動物の体内に侵入しても動物の免疫力が強いと生存できない。
しかし、免疫力が低下していると病原性のある細菌は感染、増殖し動物を衰弱させる。
治療は、その細菌に適した抗生物質を使用することであるが、同時に動物の免疫力を高めるための対処療法も必要である。
一時的な免疫力低下で起こる代表例は食中毒があり、持続的な免疫力低下の代表例は、難治性膿皮症や慢性膀胱炎である。
■菌類
細菌と混同しがちだが、菌(真菌)は大まかに言えばカビの仲間であり、アトピーやアレルギー体質の犬は大きな影響を受ける。毛や皮膚から栄養を補給して増える。
皮膚糸状菌症やカンジダ、マラセチアなどは発症例が多く、なかなか治りにくいことが多い。
■ガン細胞
ガン細胞も動物にとっては恐ろしい敵。健康な状態では免疫系が抑えているが、加齢や病気などによって免疫力が低下すると増殖してガンを発症しがち。
しかし、免疫が強いから必ずガンに勝てるかというと、そう言い切ることはできないので、難しいところだ。
■寄生虫
皮膚に寄生しているニキビダニは免疫力がかなり低下すると増える。
また、感染することで免疫力を低下させるのがカイセン、ノミ、マダニである。
腸内には回虫やコクシジウム、ジアルジアなどが寄生し、血液中にもフィラリアやバベシアなどが感染する。
いずれも免疫の影響を受けて寄生しているが、特にニキビダニの増殖は免疫力低下の大きな指標となる。
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免疫力を高めるには?
「免疫力を高めて病気に負けない体を作ろう。」
そんなセリフはよく聞くし、間違ってもいない。免疫というものに対しての意識は誰でも持っている。しかし、その仕組みがよくわからない、どうすれば免疫力を高められるのか具体的な方法がわからない、という方も少なくないだろう。
確かに未解明の部分が多いメカニズムだが、その仕事内容を把握しておくことは愛犬と生活する上では大いに有益だ。少し難しい部分もあるし、すべてきちんと説明するには相当の時間とスペースが必要となる。それを読むのはちょっとうんざり。だからここでは、大きく噛み砕いてざっくりと免疫のことを勉強したいと思う。
まず、免疫とは何か、という設問。生物が病気の原因になる外敵に抵抗する力が免疫。つまり、生物に襲いかかる外敵と戦い、駆除してくれるのが免疫。「疫を免れる」力なのである。
ではその外敵とは何か。代表的なものが上の一覧である。これらが生物の体内に入り込むと、多くの病気を引き起こし、命さえ奪ってしまうこともある。これらの外敵を複雑な隊形を整えて立ち向かっていくのが免疫なのだ。いわば身体防衛軍のようなもの。
逆に言えば、免疫がなければほとんどの生物は生きていくことができないのである。生命を守るために働く免疫は、生物にとって重要な役割を担っているのだ。
免疫のしくみ
免疫はどのような耐性を整えて外敵と対峙しているのか、複雑なのだがシンプルにまとめてみよう。
まず、皮膚などによって外敵を防ぐ物理的防御。次に、分泌物などが皮膚を突破してきた外敵を待ち受ける化学的防御。そして、体内に入り込んだ外敵を、それと戦う細胞が捕食する食作用。この三種類の免疫機能を自然免疫という。
その先は綿密に制御された機能である、獲得免疫(細胞性免疫と体液性免疫)が控える。侵入した外敵に取り付き、それに強い「武器」を持った細胞を呼び寄せ、駆除する。
また、一度入り込んだ外敵は記録として残しておき、再び同じものが入ってきた時に照会し、素早く対応する「武器」を用意する。無駄なく機能する防御システムは圧巻だ。それだけにこのシステムが崩壊すると厄介だ。
自然免疫について
1.物理的防御
体に害を与えるものが体内に入らなければ、病気を発症することがない。したがってまず体の外側でこれを防ぐことに努める最前線のバリアである。
皮膚を覆う角質層などがその役割を与えられているのだが、皮脂が付きすぎたり、掻き壊しなどによる外傷によりこのバリア機能は低下してしまう。
2.科学的防御
物理的に防御できなかった場合、それをカバーするのが科学的防御。いわゆる涙や汗、鼻水などの分泌物に含まれるリゾチームや胃液などが異物に対して反応し、体内に入り込むことを防ごうとする。
涙があふれたり、鼻水が止まらなくなるのは異物に対してフル稼働しているためである。
3.食作用
物理的、科学的に防御できず、体内に入ってしまった異物と闘うのが白血球の好中球やマクロファージ、好酸球といった細胞である。
彼らは体内に入り込んできた異物・病原体を取り込んで排除する。その姿が生物の捕食に似ているので、この行為を「食作用」と呼んでいる。
細胞性免疫・体液性免疫について
細胞性免疫は、細胞の中にウイルスが侵入すると、樹状細胞が病原体を捕食。その一部(抗原)をキラーT細胞に提示して細胞もろとも破壊させる。
その時ヘルパーT細胞はマクロファージを活性化し、破壊された細胞を掃除する。体液性免疫は、B細胞が増殖し、抗体という分子を大量に生産して病原体を固め、マクロファージが抗体と病原体を捕食し排除するシステム。
ちなみに、再度同じ病原体が体内に入ると、素早く抗体を生産できるようになる。これを免疫記録といい、1度かかった病気に2度目はかかりにくくなる。
【免疫元気で犬がいい!】柴犬に多い免疫系の病気・健康を維持するための心得
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Shi‐Ba vol.93『外敵から健康を守るデリケートな仕組み 免疫元気で犬がいい!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。