虫の予防は春から秋まで、と思っていたそこのアナタ! 実は年中、元気な虫がちゃ~んと存在するんです。気をつけたい虫を大特集!
1年中生息する『ダニ』
ダニは春夏だけでなく、一年を通じて活動をしている。ダニはとても種類が多く、世界に2万種類以上もいると言われているが、犬に害をもたらすダニの多くはマダニ科であるという。
しかしながら、マダニは野外にも家の中にも潜んでおり、いたるところに生息している。ノミや蚊は吸血した後に犬の体から離れるが、ダニは皮膚に長期間くっついているのが特徴だ。
ダニは吸血する場所を決めたら、接着剤のようなセメント物質を出して皮膚にがっちりと食いつき、血を吸い続ける。そのため、ダニが食いついた部分が肉芽のようなしこりになったり、脱毛することがある。一度毛が抜けると治りにくい。
もし、ダニを見つけたら、無理に引っ張って取ろうとするのは厳禁。セメント物質でしっかり皮膚にくっついているため、強く引っ張ると血を吸っていたアゴの部分が皮膚に残ってしまう。そこから感染を起こして、すごく腫れることも。
一度食いつくと、たっぷり吸血し終わるまで何日間もしぶとく離れないダニ。しかし、マダニ科にはほとんどアレルギーがないと言われている。では、ダニが体に寄生したとしても、しっかり駆虫すれば問題ないのだろうか?
実はダニの怖さは、いろんな病気を媒介するところにある。マダニはバベシア症、野兎病、ライム病、Q熱などを媒介する。少し前にはマダニが『殺人ダニ』と呼ばれるSFTSウイルスを媒介することも話題になった。
マダニが媒介する犬の病気で一番多いのはバベシア症。バベシア症は赤血球の中に寄生する寄生体で、バベシア症を持っているダニが吸血することで犬に感染する。バベシア症にかかると赤血球が破壊されて極度の貧血が起こり、発熱したり黄疸が出ることもある。治療には駆虫薬を用いるが、あまりに貧血がひどい時は輸血をしたり、対処療法を行うこともある。
犬や人に恐ろしい病気をもたらすダニ。体に寄生していたダニを徹底的に駆除しても、媒介する病気に感染してしまったらとても厄介である。シーズン問わず生息しているだけに、刺されないように徹底した対策を行いたい。ダニの寄生を防ぐなら、草むらに入らないこと。野山はもちろん、公園のちょっとした草の中にも生息しているので、毎日の散歩も気をつけたい。
とはいっても、散歩中に草を食べようとする犬も多く、絶対に草むらに近寄らせないようにするのは至難のワザである。一番心強いのは、やはり駆虫薬で予防しておくことだろう。蚊やノミの時期に合わせて3月~12月頃まで予防を行っている飼い主が多いと思うが、ダニが一年中生息していることを考えると、通年で予防しておいたほうが安心だ。
ダニの予防薬には体に垂らす滴下剤と飲み薬の錠剤タイプがある。他の虫も駆虫できるいろいろな複合薬が出ているので、かかりつけの獣医師と相談しながら、愛犬に合った予防を選ぶようにしよう。
※SFTSウイルスとは
マダニが媒介するSFTSウイルスとは重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome)の略称。その名の通り、血液中の血を固める役目である血小板が減少し、発熱や嘔吐、下痢、全身の倦怠感などを引き起こす。重度の血小板減少症を起こすと血が止まらなくなるため、腸から出血や血便が出ると出血多量で死に至ることもある。ちなみに、今のところ人のみの感染で犬への発症は確認されていない。
強い痒みや皮膚炎の原因『疥癬』
ダニの仲間である疥癬も犬に悪影響を及ぼす危険な虫だ。マダニは肉眼で見ることができるが、疥癬は顕微鏡を使わないと確認できないほどに小さい。
疥癬は基本的に犬の皮膚に穴を開けて生息しており、皮膚の上を自由に動き回っている。発症の原因は、疥癬にかかった犬との接触。
疥癬の成虫は犬の皮膚から落ちるとすぐに死んでしまうが、卵は何日か生き続けるため、疥癬の卵が他の犬に付着すると、孵化して皮膚に寄生する。そのため、疥癬を予防するには犬同士の接触を極力避けること。他の犬が使用したカートなどをレンタルするのも感染リスクに繋がる。
また、疥癬が寄生すると、ひどい皮膚炎を発症するのが特徴。疥癬は子犬と成犬で発症の仕方が異なる。
子犬の場合はまず耳周りから発症し、疥癬がどんどん増殖していくので、はじめは耳周りがゴワゴワしてきて、やがて全身へと広がっていく。
成犬は疥癬のアレルギーで発症するケースが多く、その場合は体に一匹でも疥癬がいれば、強いかゆみが起こり、皮膚炎が出てくる。アレルギーの特徴として、脚やお腹側からかゆくなることが多い。疥癬の治療には駆虫薬が用いられます。
皮膚上に生息しかゆみをもたらす『シラミ』
シラミも季節問わず、1年中生息している。犬に寄生するイヌジラミは、皮膚にずっと寄生して血を吸い続ける。シラミが吸血した場所は強いかゆみを伴う。強くかきむしって毛が脱毛することも。
皮膚上で吸血しながら生息し、たくさん卵も産むため、皮膚の上で増え続けていく。犬同士が接触すれば、他の犬へとうつる可能性も出てくる。
犬に寄生するシラミには他にも、イヌハジラミという種類が存在する。イヌハジラミは吸血せずに、皮膚の表面の古い角質などを食べて生きている。体に寄生するとシラミ同様に強いかゆみや脱毛などを引き起こす。また、イヌハジラミは瓜実条虫の中間宿主であるため、犬や人の口に入ると感染してしまうこともあるという。
数が増えるとトラブルの原因に!『ニキビダニ』
ニキビダニはもともと犬や人の身体に生息している虫。数が多くなければ特に問題は起こらない。ただし、条件がそろうと増殖して、人ではニキビのような症状が出るためニキビダニと呼ばれている。
犬の場合はあまりニキビはできず、犬の皮膚上でニキビダニが増殖すると赤くまたは黒くなったり、脱毛することが多い。通常は犬の免疫力でニキビダニの増殖が抑えられているが、免疫力が低下すると一気に増殖する。
そのため、ニキビダニが増えて皮膚に症状が表れてきたら、免疫力が下がっているサインだと考えられる。
強いストレスを感じていたり、バックグラウンドに癌やホルモン異常などの病気があることも考えられる。子犬のうちは単純に皮膚の免疫力ができあがっていないだけだが、もし4歳以降で発症していたら重度の病気が潜んでいる可能性があるので注意しよう。
オールシーズン対策を!
冬の時期も虫からの被害を受けないためには、春~秋だけでなく、通年で虫対策を行うのがベスト。ダニがいる草むらには近寄らない、虫が寄生している犬との接触を避ける、など。そして、最も効果的なのは、駆虫薬での予防である。
薬を一年中飲ませ続けることで副作用を心配する飼い主がいるかもしれないが、最近は滴下剤や飲み薬など副作用が少なく安全性の高い薬も多く存在する。
薬によって駆虫できる虫の種類も異なるため、かかりつけの獣医師とじっくり相談してみよう。
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Shi‐Ba vol.80『「寒いから大丈夫」が命取り 正月だってのにダニ・虫新聞緊急配布!!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。