愛犬が頻繁にくしゃみをしていたり、鼻水が出ているなど、もしかしたらこれって風邪?と思うことはないだろうか。「犬の風邪」に関する詳しい症状を知っておこう。
1.犬の風邪 Q&A
2.風邪の原因
3.風邪の症状
4.風邪の治療
5.風邪にかかりやすい犬
6.風邪にかかると危険な犬
7.風邪と勘違いしやすい犬の病気
8.運動し体を鍛え、ワクチン接種も忘れずに
9.風邪のときは暖かくして散歩も控えること
犬の風邪 Q&A
Q.犬も人間と同じような風邪を引くの?
犬の場合は伝染性疾患として気管支炎や鼻炎などを引き起こす原因菌により、それぞれの病気が違ってくる。
人間の風邪に相当する犬の病気には、ケンネコルフ(伝染性咽頭気管支炎)という咳の症状を主とする呼吸器症候群がある。広義にはジステンバーもこれに含まれる。
人間の風邪と似たような症状は出すものの、犬の風邪と人間の風邪とは全く別のもの。
Q.冬に風邪を引きやすくなるのはどうして?
ウイルスの多くは低温・低湿度時に活動が活発になる。そのため、秋から冬にかけてウイルスを原因とする伝染病は流行する。
ウイルスにも種類があり、感染しても免疫によって二度と同じ病気にかからないものや、一度感染すると一生生体の中で生き続け、体にストレスがかかると、免疫力が崩れ、ウイルスが一気に増殖し、症状を出すものがある。
Q.犬も人間のインフルエンザにかかったりするの?
今現在では人間で流行している季節性のインフルエンザや新型インフルエンザが明らかに犬にかかって、発症したというのか確認されていない。
ただウイルスというのは変異をしていくものなので、変異すれば犬にかかる可能性がないとも限らない。
風邪の原因
■免疫力が低下することで風邪を引き起こしてしまう
風邪をひく原因としては、免疫力の低下が考えられる。本来、体はバリア機能を持っているもの。そのバリア機能よりも強い病原菌がはいってしまうと感染を起こし発症する。
また、気温や生活環境などさまざまなストレスによっても体の免疫力は低下し、体に入ってきたウイルスや細菌の増殖が始まってしまう。
風邪の症状
■犬と人の症状は似て異なるもの
人間の風邪は、発熱、くしゃみ、鼻水、涙目、咳、悪寒、発汗、節々の痛み、頭痛などいろいろな症状を伴うことが多い。
しかし犬の場合、くしゃみと咳が同時に見られることはなく、発熱だけということもない。くしゃみ、咳、涙目が単発で起こるか、これらに発熱が伴うことが多い。
風邪の治療
■免疫力を高める対処療法や症状に合わせた治療を行う
原因菌が分かるならば、それに対して治療していく。場合によっては原因をつきとめるため抗体検査やPCR検査などをすることも。できる限り、もとになっている病気を探し出し、適した治療を行う。
免疫力を高める対処療法の他、抗生剤や消炎鎮静剤、気管支拡張剤など症状に応じた薬を使う。
人間の総合感冒薬を犬に与えてしまう人がいるが、人間と犬の風邪は違う。また、犬が少量の摂取でも中毒を起こすアセトアミノフェンという成分が含まれているため絶対与えないこと。
風邪にかかりやすい犬
■免疫力の弱い子犬や病気の犬は注意
生後2~3ヶ月でワクチン接種を済ませていない子犬は免疫力が弱いため特に気をつけていないといけない。何らかの病気を起こしている犬も抵抗力が落ちているため、かかりやすい。
風邪にかかると危険な犬
■2次的に悪化させてしまう病気の場合は気をつけたい
クッシング(副腎皮質機能更新症)の犬の場合は免疫力が低下しているため、風邪をひくとすぐ肺炎に移行するなど重度な状況になりやすい。
ガンをもっている犬も免疫力が落ちているため注意が必要だ。
心臓病をもっている犬は循環機能が落ちているため、それだけでも肺へ送られる血液量が減っている。そこに呼吸器系の病気を患うと心臓に負担をかけてしまう。肺自体の機能も落ちているため、肺炎を起こしやすくなる。
他にも内臓障害、免疫介在性疾患など投薬できる薬を制限されている病気にかかっている犬も風邪にかかると治療が難しくなってしまう。
風邪と勘違いしやすい犬の病気
風邪かなと思っても、実は風邪ではなく別の病気だった、という可能性もあるもの。くしゃみ、鼻水、咳など風邪とよく似た症状を出す病気は色々ある。ウイルスなどが原因ではなく。症状だけから風邪と勘違いしやすい病気について紹介していこう。
■くしゃみ・鼻水で勘違い
歯周病や鼻の腫瘍、異物の混入を疑ってみる
くしゃみや鼻水がよく出るようになったという時、歯槽のう漏などの歯周病が原因であることは意外に多い。
歯の並びと鼻の穴の並びは垂直であり、犬の歯根部分と鼻腔はとても近い。歯槽のう漏だと歯根部分に炎症を起こすことでその骨に穴が開いてしまい、だ液が鼻に回って、それが刺激となってくしゃみや鼻水が出るのである。
大抵の場合、鼻水が片側から出ることが多いが、両側に穴が開いていれば、両方から鼻水が出ることもある。そのままにしておくと穴はどんどん大きくなり、ひどくなるとくしゃみとともに口の中に入った食べ物が飛んでくることもある。
元気はあるのに頻繁にくしゃみをする、しかも歳をとっていて歯石もあるようなら、まず歯周病を疑ったほうがいいだろう。歯周病の治療は麻酔をして、歯と歯茎の間にたまっている歯石や歯垢を除去していく。炎症がある場合には、抗生物質を投与する。
また、くしゃみと鼻水でも、濃性の鼻汁が出る場合には鼻の腫瘍が考えられる。特に鼻血を伴ったくしゃみは、腫瘍の可能性が高い。ひどい鼻炎だという場合もあるが、慢性的に出るようなら鼻の腫瘍の可能性が高い。早期の診断で腫瘍の種類の識別をして、治療が可能なのかそうではないのかによって抗ガン剤や放射性療法を行ったりすることになる。
草やホコリなどの異物を吸い込んだ場合もくしゃみや鼻水が出る。この場合は麻酔をかけて、異物を取り出し、炎症が起こっている場合は炎症を抑える治療をする。
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■咳で勘違い
命の危険もある病気もあるので早期発見・治療を
咳の症状を出す場合にはまず器官虚脱があげられる。なんらかの原因で。本来は円筒状の器官がつぶれてしまい、十分に空気を吸い込めないため、咳が出るようになってしまう。治りにくい病気のひとつであり、治療には器官拡張剤や咳止めなどを使って症状を抑えたり、場所によっては手術をする場合もある。
僧帽弁閉鎖不全症など心臓病がある場合も心臓肥大や肺うっ血によって咳が出る。治療としては、まずは超音波検査などで適切な治療を行い、状態に合わせた心臓の薬を使っていく。
フィラリア症も発症すると咳が出る。予防薬を使うことで予め予防できる病気なので、フィラリアの薬をきちんと投与しておくことが大切だ。
肺に腫瘍ができた場合も、咳が出たり呼吸が早くなる。肺の中に腫瘍がみられた時には、まずは原発性か転移性か、良性か悪性かなどの区別をつけられたらつけておいた方がいい。腫瘍が原因で咳が出ている場合はガン性網膜炎が起こっていることが考えられる。肺の腫瘍は初期のうちは咳は出ない。肺の容積の70%をガン細胞が占めた末期状態に咳が出てくるようになる。
また、肺炎の中にもいろいろあり、誤嚥性肺炎などは、水や食べ物が肺に入ったことで起こる病気であり、危険度が高い。他にもアレルギー性肺炎などもある。肺炎の場合は咳の症状はあまり見られず、発熱や息づかいが荒くなるなどの症状が見られる。
いずれの病気にしても早期発見・早期治療がなによりも大切だ。
運動し体を鍛え、ワクチン接種も忘れずに
犬の風邪を引き起こさないためはウイルスなど病原菌に負けない免疫力をつけておくことが大切だ。
そのためには普段からよく運動をして体を鍛えておくこと。暑さ寒さに関係なく散歩に行って、温度変化に体を慣らせておくことが重要。
そして犬の風邪に該当するケンネコルフやジステンパー、パラインフルエンザなどはワクチン接種することで予防できるもの。ケンネコルフやジステンパーが含まれた混合ワクチンを接種しておこう。
中でもジステンパーは、かかってしまうと治りにくく、死亡率が高い病気のひとつ。たとえ命が助かったとしても後遺症が残ることが多いという。ジステンパーはワクチン接種しておけば予防効果があるので、ぜひともワクチン接種しておきたい。
混合ワクチンにも4種から9種くらいまでとさまざまな種類がある。メーカーによって含まれているワクチンの種類にも違いがあるそうだ。獣医師と相談しながら選ぶようにしよう。
予防接種を受ける際には、できるだけ動物病院が混雑していない時間帯に行くか、事前に電話しておくと安心。
逆に風邪らしき症状が出ている場合に診察を受ける際も、あらかじめ電話をして「こんな症状が出ていますがいつ連れて行けばいいですか」と相談してから連れて行くようにしよう。
ワクチン接種を受けに来た犬と咳をしている犬が動物病院の待合室で隣同士にいればうつしてしまう可能性があるので、くれぐれも配慮したい。
風邪のときは暖かくして散歩も控えること
もし愛犬が風邪をひいてしまった時には、温度変化に気をつけ、体を冷やさないように少し暖かくしてあげよう。
そして散歩は控えること。
食事は食欲があるようならいつもの内容でかまわない。少しでも体力をつけてもらうためにと、おいしいものを与えがちだが、おいしいものを一度食べてしまうと、元に戻すことはなかなか難しくなってしまう。食欲がないようなら動物病院で相談してみよう。
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Shi‐Ba vol.51『咳・くしゃみ・鼻水・鼻づまり 犬の風邪に注意!!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。